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ディズニー&ルーカスフィルム、ついに『スター・ウォーズ』全権利を入手へ ― 幻の劇場公開版はリリースされるか?

スター・ウォーズ
©Twentieth Century-Fox Film Corporation Photographer: John Jay 写真:ゼータ イメージ

2017年12月14日、米ウォルト・ディズニー・カンパニーが20世紀フォックスの買収を正式に発表した。
これが何を意味するのかといえば、『スター・ウォーズ』のオリジナル3部作、プリクエル3部作の権利が、すべてディズニー傘下のルーカスフィルムのもとへ移動するということである。このことは、世界中の観客から愛される『スター・ウォーズ』の今後に何をもたらすのだろう? そして、未だ実現していなかった“ある可能性”に変化は起こるのだろうか……。

『スター・ウォーズ』権利のこれまで

20世紀フォックスは、『スター・ウォーズ』シリーズにおいて、オリジナル3部作の『エピソード4/新たなる希望』(1977)、『エピソード5/帝国の逆襲』(1980)、『エピソード6/ジェダイの帰還』(1983)で製作・配給を担当。プリクエル3部作である『エピソード1/ファントム・メナス』(1999)、『エピソード2/クローンの攻撃』(2002)、『エピソード3/シスの復讐』(2005)では配給を務めた(製作はルーカスフィルム)。その後、ルーカスフィルムが2012年にディズニーに買収されたことで、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)以降の作品には関わっていない。

しかしその結果、『スター・ウォーズ』は作品ごとに権利の事情が異なるという奇妙な事態となってしまった。オリジナル&プリクエル3部作の配給権と販売権は、2017年現在、20世紀フォックスがすべて保持している。一方で『フォースの覚醒』以降の作品は、ディズニー/ルーカスフィルムがその権利を有しているのだ。
しかもややこしいことに、『エピソード4』以外の5作品は、2020年5月にディズニー/ルーカスフィルムへと権利が移ることが決まっていた。そうでありながらも、『新たなる希望』だけは永久に20世紀フォックスが権利を保持する予定だったのである。これを「ねじれた大人の事情」と呼ばずにいられようか……。

しかしディズニーによる20世紀フォックスの買収が無事に成立すれば、こうした権利問題はすべて解消されるものとみられる。『スター・ウォーズ』の全権利はルーカスフィルムがすべて保持するわけで、権利が分散すれば困難になるとみられたDVD&ブルーレイセットのリリース、あるいは一挙上映企画もハードルが下げられるだろう。むしろファンが喜ぶと判断されれば、より積極的に実施されていくのではなかろうか……。

『新たなる希望』劇場公開版、そして4K版は?

『スター・ウォーズ』ファンが長年求めているもの、それは『エピソード4/新たなる希望』の劇場公開版だ。
現在一般に観ることができる同作は、1990年代後半以降にジョージ・ルーカスが自ら変更を加えたものであり、1977年に劇場で上映された作品とは内容が異なる。CGで描写が改変されたのみならず、ハン・ソロがエイリアンを射殺するくだりに至っては、そこで起こる出来事ごと修正されてしまったのだ。したがってオリジナル版の再リリースが実現すれば、涙を流して喜ぶファンも決して少なくはないのである。

『エピソード4』の劇場公開から40周年を迎えた2017年初頭、この記念すべきアニバーサリー・イヤーに劇場公開版のブルーレイがリリースされるという噂浮上した。ルーカスが『スター・ウォーズ』から手を離したこと、2016年に同作の35mmフィルムが発見されたことで、いよいよ商品化されるのだと予想されたわけである。しかしこの噂は、のちにルーカスフィルムのキャスリーン・ケネディ社長があっさり否定している

もっとも『エピソード4』劇場公開版のリリースには、前述の通り、20世紀フォックス側の同意がなければならなかった。ということは、ディズニーによるフォックスの買収が成立してしまえば、ルーカスフィルムの意向ひとつで劇場公開版のお披露目が現実となるわけである。そういえば2016年末には『エピソード4』の4Kエディションが存在することも明かされていたが、その続報も届かないままだ。

しかしながら買収が公式発表されたのち、あるルーカスフィルムのメンバーが劇場公開版の解禁を改めて否定している。Twitterにてコメントしたのは、ストーリー・グループのパブロ・ヒダルゴ氏だ。

「おはようございます! ホームビデオでオリジナルの劇場公開版を出さないのは、これまでそうしてきたように変わりませんよ。スタジオの問題ではないんです。」

そう、ルーカスフィルムはルーカスの意向を汲んで「劇場公開版は存在しない、特別編がオリジナル」というスタンスを貫いてきたのだ。したがって今後もそれは変わらない、というのである。こう言われてしまっては期待してもしかたがないように思えるが、諦めてはならない。なにせ、ルーカスフィルムは『フォースの覚醒』を製作する際に「ファンが観たいものを作る」という理由でルーカスのアイデアをすべてお蔵入りにするという所業を見せたのだ。ならば世界中のファンが劇場公開版を熱望すれば、いずれはファンが観たいものを見せてくれることもあるかもしれない。

なおディズニーによるフォックスの買収成立には、今後1年から1年半を要するとみられている。

Sources: http://comicbook.com/starwars/2017/12/14/disney-now-completely-owns-star-wars-fox-deal/
http://comicbook.com/starwars/2017/12/14/star-wars-disney-fox-original-films-special-edition-release/
©Twentieth Century-Fox Film Corporation Photographer: John Jay 写真:ゼータ イメージ

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。