Menu
(0)

Search

アンソニー・マッキー、サムとバッキーの「ブロマンス」をどう考える ─ 男性同士の友情・愛情を描く難しさ

ファルコン&ウィンター・ソルジャー
© 2021 Marvel

キャプテン・アメリカというキャラクターには、“相棒”の存在が欠かせない。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の場合、クリス・エヴァンス演じるスティーブ・ロジャースには、親友であるバッキー・バーンズがいた。「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」でスティーブの後継者となったサム・ウィルソンも、やはりバッキー・バーンズとの関係性が重要だ。

スティーブとバッキー、サムとバッキーの関係は、しばしばファンの間で“ブロマンス”としての解釈がなされてきた。時には同性愛的な解釈もある。では、サム役のアンソニー・マッキーは、こうした現象をどう受け止めているのだろうか。

Varietyのポッドキャストにて、アンソニーは「スーパーヒーローもので、男性同士の友情やプラトニックな愛情が描かれることは珍しいと思います。俳優として、そういう側面を演じてみていかがでしたか」との質問に応答。慎重に言葉を選びながら、自身の考えをこう語っている。

「今の時代、いろんなことがねじれ、複雑になっていると思います。自分を重要かつ理性的な存在にするため、人々がデバイスを使って、いろんなことにしがみついている。2021年には、“二人の男が友人として愛し合う”というアイデアが問題になります。同性愛の搾取という問題があるからです。かつては男友達同士なら遊んでいるので良かったけれど、今では、“いつものバーで友達と遊んでいる”ということができない。同性愛であれ、それと同じくらい純粋かつ美しい関係であれ、自分を正当化する人々によって搾取の対象とされかねません。」

ここでアンソニーが語っているのは、作品の表現がある局面では搾取を招きかねないということ、その前提を踏まえて男性同士の友情、あるいはプラトニックな愛情を描くことの難しさだ。アンソニーは、「だから僕は、繊細な男性像を描くことが非常に重要だと思う」とも述べた。

「空を飛んで人をぶっ飛ばすスーパーヒーロー以上に男性的なものはありません。けれど、自分が大切にする人、愛する人と心から話し合い、家族のような関係性を築くこと以上に繊細なこともありません。サムとスティーブには、お互いを称え合い、認め合い、愛し合う関係性があった。バッキーとサムも、互いを受け入れ、認め、愛する方法を学んだ。それはブロマンスとも呼ばれるけれど、実際には、二人がお互いを助け合っているということです。」

しかしアンソニーは、こうした関係性でさえ、その通りに受け止められない可能性があることも示唆している。「2021年には“兄弟同士の暗黙のルール”がない」と言うアンソニーは、「サムとバッキーの“兄弟のルール”は、どれだけ形が変わっても、壊れないし変わらない。だけど、そういう言い方は若い世代には通じないんじゃないか」とも口にしたのだ。世代論で割り切れる問題かどうかは別にせよ、時代の変化により、ひとつの表現から全員が同じ意味を読み取ることが難しいという事態は起きうるものだろう。

ちなみにアンソニーは、サムとバッキーの関係性に対するファンの解釈については、「ファンダムは危険のある場所だと思うので、ありのままにしておきたい」とコメントし、言及することを避けている。

こちらは2018年のセバスチャン・スタン

Source: Variety

Writer

アバター画像
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

Ranking

Daily

Weekly

Monthly