『ゴールド/金塊の行方』公開記念!マシュー・マコノヒーの黄金期6作を振り返る

「毎日、腕立て、懸垂○○回」「ランニングが大好き」…数年前まで某ワイドショーでその鍛え抜かれた肉体や”最もセクシーな男性”と言われたその容姿にばかり注目が集まっていた俳優がいる。マシュー・マコノヒーだ。
当時のマコノヒーという俳優は、実力で注目されていたというよりもイケメン俳優としての人気のみで飯を食っていた俳優と言っても過言ではない。正直そんなマコノヒーのことが筆者は苦手であった。
少しの出演作を観ただけで、ただのイケメン俳優として判断してしまったのは安易な気もするが、当時の彼の出演作を観てみても、その多くがラブコメ映画や人気のみでキャスティングされたと思わしき作品が多い。
そんなわけで最新作が公開されようとあまり興味が湧かない俳優の筆頭として彼のことを認知していたのだ。
ところが、その印象がガラリと変わる作品が2011年に公開となる。それが『リンカーン弁護士』である。
2011年『リンカーン弁護士』黄金期の始まり
やり手の弁護士ミックのオフィスは愛車のリンカーン。彼の元に稼げる仕事が舞い込むが…。
ただただ法廷ドラマが好みであるという理由から手に取った本作で、マコノヒーと言う俳優に対する印象がガラリと変わったのだ。恐らく、多くの映画ファンや評論家が筆者と同じ印象を受けたのだろう。本作はしばし、マコノヒーの黄金期の始まりとして語られている作品なのだ。
それまでのキャリアとは打って変わって、重厚なサスペンス・ドラマに出演するという大幅な方向転換をとったマコノヒー。
彼自身も自分のキャリアには不満を抱いていたのだろう。前年の2010年には一本も映画出演をせずに間を置いてのキャリア形成。彼のような俳優にとっては、危険極まりない冒険であったと思うが、結果的にその選択が功を奏したことになる。
確かに端正な顔立ちやセクシーな肉体美などに注目が集まりながらも、『評決のとき』や『U-571』など良作への出演も顕著だった。しかし、ハリウッドはマコノヒーに”実力派”の路線を望んでいなかったのだろう。
かつて『タイタニック』でアイドル的人気を得たレオナルド・ディカプリオがそうしたように、そのイメージを払拭するためにも1年という短くも長い休息期間を置くことが彼には重要だったのだ。
ともあれ、本作でのマコノヒーはリンカーンに乗った”ぼったくり弁護士感”を見事に体現しながらも、正義に対して真摯な気持ちで挑むやり手の弁護士を熱演し、多方面から絶賛を浴びたのだ。ここから、マコノヒーの黄金期と言われるキャリア成熟期が幕を開けるのだ。
2012年『MUD -マッド-』『マジック・マイク』の衝撃
その後、マコノヒーはこれまでの主役俳優のイメージを捨て去り、『バーニー/みんなが愛した殺人者』や『ペーパーボーイ 真夏の引力』など、脇役として存在感を発揮するようになる。そして2012年に出演した『MUD -マッド-』で全米もとい全世界に衝撃を与えることになる。
ボートハウスに住む少年エリスと両親を知らない少年ネックボーンは、ボートで外れた場所へ向かい、洪水で木の上に上がったボートを見つける。そこにいた逃亡犯と共に過ごすようになるが…。
少年たちの人生に大きな影響を与える謎の逃亡犯を演じるのが、マコノヒーだ。
終始、危ない雰囲気を醸し出してはいるものの、どこかその背中で多くを語る魅力があるキャラクターであり、とにかく言葉では言い表せないほどの魅力がある。
主人公の少年たちの目を通して見るマコノヒーの姿に感無量だ。
この年もう1本、彼の転機となった作品がある。それが『マジック・マイク』。
本作でもマコノヒーは、チャニング・テイタム演じるマイクにストリップを指南する師匠的な役柄を演じる。
ここでもこれまでとは違う魅力を振りまいているのが印象的で、かつてのセクシー系肉体派俳優がその代名詞とも言える筋肉を自虐的に捉え、体を売り物にする人間を好演して魅せたのだ。(歌も披露している)
2012年にはこの2作品でサポート役としての存在感を発揮したマコノヒーが、この翌年、今度は主演俳優として大きな評価を得ることになる。
2013年『ダラス・バイヤーズクラブ』でオスカー受賞
かつてイケメン俳優として名を馳せた男がハリウッド最高の栄誉を手にする。
『ダラス・バイヤーズクラブ』での演技が評価され、アカデミー主演男優賞を受賞したのだ。
本作のマコノヒーを語る上で外せないのは、やはりその役作りだろう。
かつてはロバート・デ・ニーロ、最近ではクリスチャン・ベールやジャレッド・レトが役作りに魂を捧げるメソッド俳優として記憶に新しいが、近年のハリウッドでは恐らくマコノヒーこそが役になりきるという点においては最高の俳優と言えるだろう。
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