【解説】『モービウス』予告編にファンが困惑しまくっている理由 ─ 『スパイダーマン』のバースが混在?隠し要素にも気付けるか

ソニー・ピクチャーズによるマーベル映画(SSU)最新作『モービウス』の新たな予告編映像にファンが困惑している。『スパイダーマン』シリーズの世界観が混在しているのだ。どういうことか見てみよう。
本作は、ソニー・ピクチャーズが『ヴェノム』に続いて制作する、スパイダーマンの宿敵を映画化する企画のうちの1作。そもそもこの『ヴェノム』の世界観が、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)とどう関わるのか、実はいまだにはっきりしていないのだ。ゆえに、本作『モービウス』がどういう位置づけになるのかも謎なのである。
今回の予告編映像にも見られるように、本作にはマイケル・キートンが演じるキャラクターが登場する。キートンは『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)でヴィランのバルチャーを演じていたから、これを見れば本作もMCUに関連すると考えることができる。
しかし、映像内にはサム・ライミ版スパイダーマンのグラフィティ(壁の落書き)も登場。「MURDERER(人殺し)」との殴り書きはMCU『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でも描かれる、スパイダーマンが悪人に仕立て上げられるというストーリーにも一致するのだが、なぜライミ版スパイダーマンのデザインなのだろうか?
合わせて本作には、新聞社としてのデイリー・ビューグルが登場する点も謎だ。デイリー・ビューグルといえばMCUでは「THE DAILY BUGULE .NET」というウェブメディアであるはずなので、これがMCUなら辻褄が合わない。ちなみに『モービウス』予告編のデイリー・ビューグルのロゴは、ライミ版『スパイダーマン』と『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』に登場するものと同一。なぜライミ版と『ヴェノム』のロゴが同じなのかも、今は説明がつかない。
そしてややこしいことに、この予告編に登場するオズコープ社のロゴは、サム・ライミ版ではなく『アメイジング・スパイダーマン』シリーズのものと同一なのだ。ただし、ビルのデザインは異なるという謎もある。
さらに、ファンの頭を悩ます隠し要素もある。予告編の1:55、デイリー・ビューグル紙の紙面上部をよく見ると、「RHINO ON THE LOOSE: ZOO HOAX FOOLS US ALL(ライノ、逃走中。動物園の悪ふざけに騙される)」「BLACK CAT: FRIEND OR FOE?(ブラックキャット 味方か敵か?)」という見出しが確認できるのだ。
ライノといえば『アメイジング・スパイダーマン2』(2014)に登場したヴィランの1人。そして同作でフェリシティ・ジョーンズが演じたフェリシア・ハーディは、原作コミックでブラックキャットになる。フェリシティ版ブラックキャットは『アメイジング』シリーズ第3作で本格登場するという噂もあったが、シリーズが打ち切りになってしまったので幻に。実はソニー、この『モービウス』よりも先にブラックキャットを描くスピンオフ映画『シルバー・アンド・ブラック(原題)』を企画していたこともある。
新聞に書かれたライノとブラックキャットは、『アメイジング・スパイダーマン2』のその後の世界のことを伝えているのかもしれないし、また別の世界の可能性もあるということだ。
整理すると『モービウス』は、MCUなのかもしれないし、ライミ版の世界なのかもしれないし、『アメイジング』シリーズの世界なのかもしれない。最もあり得そうな線で考えると、これらが混在するような全く別の独自の世界だということなのだろうが、そうするとまた別の大きな謎が浮上することになる。映像の最後にジャレッド・レト演じるモービウスが「俺はヴェノムだ」とかましているのである。劇中では冗談として伝えられているが、ここまでの解説を経ると、ファンにとってこれが全然冗談にならないということがお分かりになるだろう。つまり、『モービウス』が『ヴェノム』と同じユニバースなのだとしたら、じゃあ、『ヴェノム』は一体どういうユニバースだったのか?ということである。
映画『モービウス』は2022年全国ロードショー。