【僕はこういう映画と出会いたくて、今日も映画館に行く】タイムトリップ体験型痛快バディアクション『ナイスガイズ』絶賛レビューと関連作ガイド

期待して待っていた甲斐がありました。

THE RIVER読者の皆様には『アイアンマン3』でお馴染みシェーン・ブラック監督最新作、ラッセル・クロウ、ライアン・ゴズリングW主演で話題のアクションコメディ『ナイスガイズ』は、その異様に高かった前評判に違わず、ポップで、うんと俗悪で、ほんのちょっとだけカッコ良くて、何より楽しい映画でした。個人的に本当に大好きな映画です。

映画『ナイスガイズ』とは

舞台は1977年のカリフォルニア州ロサンジェルス。腕っぷしでトラブルを強引に解決するフェミニストな示談屋ヒーリー(ラッセル・クロウ)と、奥さんに先立たれてからは年がら年中酔っ払ってばかりいるモラルハザード探偵マーチ(ライアン・ゴズリング)、人間として欠けたところのあるこのコンビに、生意気だけどしっかり者のマーチの13歳の娘ホリー(アンガーリー・ライス)を加えた三人が、ある家出娘捜索の仕事を受けたばっかりに巻き込まれる巨大な陰謀とは。三人のいく先々で明るみになる関係者たちの連続死。そして襲い来るプロの殺し屋たち。果たして三人は事件を解決、もとより生き残ることができるのか…?こんな感じのお話です。

1970年代後半のLAは、60年代までのアメリカ理想主義が、ベトナム戦争やケネディ大統領の暗殺、その後のニクソン大統領のウォーターゲート事件などで思いっきり水を差されて、かなりガックリきているところに、それまでアメリカの基幹産業だった自動車工業が、安くて品質の良い日本車に圧されて翳りを見せ始め、社会全体が変革の過渡期にありました。市民生活に目を向けると、若者中心に新しい価値観の模索が始まり、それがヒッピー文化やハリウッドを席巻したポルノ産業の興隆といった「退廃的」なカルチャーとして顕現、アメリカそのものがある種「途方に暮れている」ような状態でした。
劇中ことさらに語られることはありませんが、そのアクション時のファイトスタイルから明らかに軍籍上がりのヒーリーや、世情に振り回されて貧乏籤引き続けてきた男マーチは、いわば当時のアメリカ社会の「犠牲者」のような象徴的な二人であるわけです。

本作の見どころですが、「あらすじ」から、その話運びやサスペンス性に期待するとちょっと肩透かしを食らうかもしれません。話運びそのものは、行き当たりばったりに見えますし(意図的に)サスペンス性も、どちらかというとコメディに強めにふったバランスのせいで、それほど強くはありません。私見では、この映画の最大の見所・主役は「1977年のLA」そのもの。監督のシェーン・ブラックは1961年生まれ。LAと隣接するフラートンで高校生活を送っており、1970年代後半当時のLAを、深く知っているはずです。「ゆるく」て、「だらしなく」なってしまっていたけれども、それでも「愛おしかった時代」。監督は当時の自らと同世代であるホリーの目を通して、当時の「傷ついた愛すべき大人たち」を映すスタイルをとることにより、パーソナルな当時への慕情をこの作品に込めたのでしょう。
劇中、これでもかとばかり詰め込まれた1970年代「小ネタ」の数々。ファッションや、車、音楽に至るまで妥協せずに「当時のLA」の再現にこだわっています。語弊があるかもしれませんが、シェーン・ブラック流『三丁目の夕日』と言ったら少し分かりやすいでしょうか。そんな二度と戻れない過去への愛情がたっぷり詰まった「あたたかい映画」です。

『ナイスガイズ』をより味わうための関連作品紹介

『ナイスガイズ』は単純にコメディ映画としても充分面白い作品ですが、上に挙げたような作品の性格や、作中散りばめられた「こんなのあったな」という小ネタの数々や時事ネタなど、この映画を隅々まで楽しむには「当時のLAを多少なりとも知っている」という条件が若干必要となります。この記事をお読みの皆様は、LAなど行ったこともないし、1970年代後半なんて「産まれてもいねえよ」って方が大半だと思いますので、こちらの『ナイスガイズ』をご覧になる前、なった後、この作品の世界観の補完に役立ちそうな過去の映画を何本か挙げておきますので、ぜひお役立てください。

『インヒアレント・ヴァイス』(2014)

トマス・ピンチョン『LAヴァイス』が原作、ホアキン・フェニックス主演の探偵映画。『ナイスガイズ』より少し前のLAが舞台です。こちらも本筋よりも当時の世俗や人間模様を描いた作品です。

『ブギーナイツ』(1997)

ポール・トーマス・アンダーソン監督、マーク・ウォルバーグ主演。1960年代から70年代にかけてのポルノ産業の興廃を描いた作品です。開けっぴろげな性描写が登場しますのでご家族での鑑賞はご注意ください。

『フロスト×ニクソン』(2008)

ロン・ハワード監督。ウォーターゲート事件によって辞職に追い込まれたニクソン大統領と有名司会者の、テレビ対談番組における対決を描いた映画です。当時の社会政治情勢がよく分かります。

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About the author

1977年生まれ。週刊少年ジャンプ脳のクリーチャー愛好家。玩具コレクター。エンドレスダイエッター。「意識低い系」の文章を信条としています。

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