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映画館業界とNYの対立深まる、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』延期は「州知事が原因」 ─ 映画館再開で公開を年内前倒しの可能性も

映画館
Photo by Eden, Janine and Jim https://www.flickr.com/photos/edenpictures/49674923947/

映画館業界と米ニューヨーク州の対立が深まっている。コロナ禍からの復活を志すアメリカにおいて、いまや、映画館の営業がまったく再開されていない州はニューヨークとニューメキシコのみとなった。しかしニューヨークは、国内の映画興行の本丸、ひいては世界の映画業界を牽引する重要市場だ。なぜ、ニューヨークの映画館は再び動き出せないままなのか。変わらず危機的状況を脱していない業界内では、アンドリュー・クオモ州知事の責任を問う声が高まっている。

本来ならば、『TENET テネット』を皮切りとして、アメリカの映画業界は本格的に息を吹き返すはずだった。しかし『TENET テネット』はニューヨークやロサンゼルスといった大都市圏で上映が行われていないこともあり、劇場に戻る客足は予想を下回り、米国内で苦戦を強いられている。ワーナー・ブラザースは長期的な上映を見据えたが、次に起こったのは『ブラック・ウィドウ』『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開延期だった。

全米劇場所有者協会のジョン・フィシアン氏は、クオモ州知事の判断が『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開延期を招いたと主張する。米Varietyの取材では、同作が映画館業界にとって重要な作品だったことに触れ、「延期はクオモ知事が州内で映画館の再開を認めなかったことが原因」だと述べているのだ。「ニューヨークの劇場が再開されなければ、年内に予定されている他の作品も同じことになるでしょう」

このコメントが掲載された同日、アメリカ・イギリスの大手映画館チェーンCineworld/Regal Cinemasは、米英両国で経営する映画館を再び全館休業すると発表。翌日、ワーナーは『DUNE/デューン 砂の惑星』の米国公開日を2020年12月18日から2021年10月1日まで延期することを決定した。フィシアン氏の予想は、早くも現実となってしまったのである。

フィシアン氏は、ニューヨークが興行の中心であり、専門家やジャーナリスト、批評家たちの主な活動場所であることを指摘する。ニューヨークとは映画文化を作る街であり、この土地で映画業界が動けない以上、世界の映画業界を先導するオピニオンリーダーも動けないのだ。Cineworldのムーキー・グレイディンジャーCEOは、再休業の決定後、「世界中の映画館はクオモ知事の柔軟性のなさのために休業している」批判した。ニューヨークではレストランやボウリング場、カジノの営業が再開されているが、映画館が営業を再開できない理由について、理論的根拠の提示はないという。

ニューヨークの各映画館は、現在、営業再開に向けた取り組みを続けながら行政の許可を待っている。しかしながら、いつ、どのように営業を再開できるのか、具体的な指針は立たないままだ。それどころか、知事のシニア・アドバイザーであるリチャード・アゾパルディ氏はVarietyの取材にこう応じている。

「我々は(感染拡大の)第二波を止めるために全力を尽くしています。人々は、今がパンデミックのさなかであることを知り、そのうえで行動を始めなければなりません。不満のある方がいることは理解していますが、とはいえ、病気や重症化よりも不満のほうがましというものです。」

むろん、このコメントは業界の危機感を適切に捉えられていない。フィシアン氏は「世界でワクチンの接種が行われるまで映画が公開されなければ、映画館企業はたくさん倒産し、劇場はなくなる」と警鐘を鳴らした。「これは地域産業の問題ではありません。映画ビジネスは国の、そして世界の産業です。ニューヨークが動き出さないがために映画が公開されなければ、世界の映画産業と従業員にも影響が生じてしまう」

すでに映画スタジオ各社は、2020年に公開予定だった作品をいくつも2021年に延期している。しかしフィシアン氏は、ニューヨークの映画館さえ動き出せば、それらの作品が年内に戻ってくる可能性もあると述べる。「いくつか条件が整えば、2020年に公開日を戻す可能性があるというスタジオは複数あります。第一の条件がニューヨークの再稼働なのです」。逆にいえば、ニューヨークとはそれほど重要な土壌なのだ。

一方でフィシアン氏は、話題作の延期を次々と決定するスタジオ側にも忍耐を求めた。映画館の存続が危ぶまれる今、「映画を劇場で公開できること、そこで利益を得ることは別問題であり、さらなる利益のために公開を控えることは筋が通らない」とまで言っているのだ。公開延期が続けば、映画館業界にはそれだけのダメージが及ぶ。「スタジオは今すぐ映画を公開すべきです。1ヶ月、あるいは数ヶ月、映画の公開を延ばすことで状況はどんどん悪化します。作品を公開し、少しでもお金を生んでください。我々にはあなた方が必要です」

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Source: Variety(1, 2

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

THE RIVER編集部。「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。劇場用プログラムや各種媒体への寄稿なども喜んで承りますので、お気軽にお尋ねください。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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