クリストファー・ノーラン新作映画を米ユニバーサルが獲得、ワーナー・ブラザースと決別へ ─ 「原爆の父」題材、2023年公開目指す

『インターステラー』(2014)『TENET テネット』(2020)など、およそ20年間にわたって米ワーナー・ブラザースと共に映画を作ってきたクリストファー・ノーラン監督が新たな道をゆく。
ノーラン監督の新作となる理論物理学者ロバート・オッペンハイマーを主人公とした映画(タイトル未定)の配給権を米ユニバーサル・ピクチャーズが獲得したことがわかった。米Deadlineが報じている。
2002年の長編第3作『インソムニア』以降、ノーラン監督は『ダークナイト』3部作や『インセプション』(2010)『インターステラー』『ダンケルク』(2017)など、全ての監督作品をワーナー・ブラザースで手掛けてきた。直近で製作されたのは、コロナ禍下における映画業界復活の希望として2020年9月に公開された『TENET テネット』。しかし、同作の公開時期を巡ってはノーラン監督とスタジオ側の間で齟齬が生じており、この時からすでに溝が生まれ始めていたようだ。
両者が決別するまでに至った大きな要因は2020年12月、ワーナー側が2021年公開作品を劇場&配信の同時公開にすることを発表したことだろう。このことを事前に知らされていなかったノーラン監督は同社への不信感を示す声明を出し、ワーナーの新戦略を「まぎれもない“おとり商法”」とまで批判していた。結果的に、19年にも及ぶ蜜月関係に終止符が打たれることとなった。
米Varietyは、ノーラン監督が新作映画の配給先にユニバーサルを選ぶまでに至った詳報を掲載している。両者の合意までには、「数ヶ月にわたる交際期間やミーティング」などが設けられていたという。ここで一役買った人物がユニバーサル会長のドナ・ラングレーだ。『ジュラシック・ワールド』『ワイルド・スピード』『ボーン』シリーズをはじめとする一大フランチャイズを成功に導いたラングレーは、ノーランとの関係構築を積極的に進め、公開形式をめぐる要望、意向も汲み取る姿勢を見せたという。
情報筋によれば、ノーラン監督は新作映画に関して、90〜120日間の独占劇場公開をユニバーサル側に要求したとのこと。これについて進捗は定かでないが、少なくとも45日以上の独占期間が与えられる見通しだと伝えられている。
一方で、本作とは関係なく、ユニバーサルは自社作品をなるべく迅速に配信プラットフォームに供給するべく、AMCやCinemarkといった米大手映画館チェーンと、新作映画の公開に関して17日間の独占劇場公開、さらに初週で5000万ドル以上の興収を記録した新作については31日間の独占公開を約束する契約を結んでいるという。
ノーラン監督にとってターニングポイントになるであろう本作は、早くも公開に向けて動き出している。2022年第1四半期に撮影が開始されることが今回の報道で判明。2023〜2024年の公開が目指されている。また、初報ではノーラン作品常連の俳優キリアン・マーフィーが関与していると伝えられていたが、現時点でキャスティングに関する確定情報は出ていないとのこと。
作品の主人公は、「原爆の父」と呼ばれ、原子爆弾の開発・製造を目的とする「マンハッタン計画」を主導したアメリカの物理学者ロバート・オッペンハイマー。本作では、オッペンハイマーによる原爆開発から、のちに核兵器の国際的な管理の必要性を訴えたり、水素爆弾への抗議活動を行ったりするようになった彼の行動の変化までが綴られていくという。
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