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『オールド』シャマラン監督が語る時間の大切さ ─ カメオ出演、タルコフスキー作品の影響や続編の可能性など【インタビュー】

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© 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

『シックス・センス』(1999)『ヴィジット』(2015)『スプリット』(2017)など、作品を発表するたびに観客の度肝を抜いてきたM・ナイト・シャマラン。そんな鬼才監督による最新作『オールド』が、2021年8月27日(金)よりついに日本公開を迎えた。

フランスのグラフィック・ノベル『Sandcastle(原題)』を原案とする本作の題材は、異常な速度で進む時間。休暇を過ごすために訪れた美しいビーチで、時間が異常な速度で加速し、身体が老いていく不可解な現象に見舞われ、その謎を解かなければ脱出できない家族たちの恐怖を描く極限タイムスリラーだ。なぜ異常な速度で時間が進んでいるのか、果たして彼らはその謎を解き明かし脱出することは出来るのか……?

このたびTHE RIVERは、M・ナイト・シャマラン監督に二度目の取材を行う機会に恵まれた。前回のインタビューでは、本作を手掛けることになったきっかけやキャスティング、コロナ禍とのつながりなどについて質問したが、このたびの取材では、アンドレイ・タルコフスキー監督作や日本映画からの影響、シャマランがカメオ出演しつづける理由、気になる続編の可能性などについて尋ねてみた。

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時間の大切さ、家族を描き続ける理由

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──“異常な速度で時間が進む”を描く本作は、ジャンルとしてはもちろんスリラーですが、“歳を取る”という普遍的な題材としても捉えられるので、ヒューマンドラマでもあったと感じています。こちらは意識されていたのでしょうか?

このふたつの組み合わせは、私が映画を作る上で常に気にかけていることのひとつです。感情的な部分を削ぐことなく、怖いものを描くことが出来るのかと。ただ、このふたつのジャンル混ぜ合わせるのは非常に難しいんです。感情的な要素が多すぎると、怖くなくなってしまうので。そんなふたつを上手く調和させることが好きなんです。

──歳を取る”ということについて、監督自身はどのように考えていますか?

若い頃よりも物事を真摯に受け止め、深く考えられるようになってきたと感じています。監督というのは、60代、70代、80代と歳を重ねてもさらに成長できる素晴らしい職業だと思うので、そんな仕事に就けたことを幸運に思っています。尊敬する監督の中には、60代、70代、80代と傑作を世に送り出し続けた方々がたくさんいますし、90代でもそれを成し遂げる方が現れるでしょう。

──シャマラン監督はこれまでにも家族を題材にした映画を数多く描いてきましたが、今後も同じ題材を掘り下げていきたいですか?

もちろん思っていますよ。芸術家というのは、何かを理解するため、深く掘り下げるために同じことを繰り返していくものなので。私の友人のひとりで、とあるグループに所属している方がいるのですが、彼らは美術館に行っては一枚の絵を何時間も眺めているんです。最後は互いに感想を言い合っているみたいで。つまり、それと似たようなことで、ひとつのテーマを何度も何度も繰り返し描くことにより、新たな発見があるわけなんです。それこそ家族や超常現象という題材もまた、未知数だからこそ僕は描き続けているんだと思います。

──スリラーでありヒューマンドラマでもある本作ですが、映画館を後にした観客にはどのような感情を抱いていて欲しいですか?

非常に体験的な映画にしたいと考えていました。この映画を観ている時間のあいだ、あのビーチに自分が実際にいたかのように、時間があっという間に過ぎていく感じを味わってもらいたいんです。そして、その感覚のまま映画館を出て、“私たちにはこんなに時間が残されているのだから、それをもっと有効に活用すべきだ”と実感してもらいたいんです。多くの人は映画を観終わったあと、子供や両親に電話したり会いに行ったりすることでしょう。

アンドレイ・タルコフスキーや日本映画からの影響

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──前回のインタビューでは、オーストラリア映画からの影響を強く受けているとお話しされていましたが、アンドレイ・タルコフスキー監督作への影響も垣間見られました。それらの要素も含めて、何かほかに影響を受けた作品があれば教えてください。※アンドレイ・タルコフスキー監督の代表作:『惑星ソラリス』(1972)『ストーカー』(1979)『サクリファイス』(1986)など。

アンドレイ・タルコフスキーについてはあなたのおっしゃる通りで、間違いなく影響を受けています。ホテルの部屋に家族が初めて入ったところで、窓の外から左右に行ったり来たりするショットは、『サクリファイス』から参考にしているので。ほかにも多くの映画から影響を受けていますが、日本映画だと、『藪の中の黒猫』(1968)を参考にしました。

──『藪の中の黒猫』といえば、アレックス・ウルフもインタビューで名を挙げていました

この映画では、幽霊のように頭に布をかぶせた女性たちが森の中を歩く姿が捉えられています。『オールド』でもクリスタルが素顔を見られないようにと、同じように布を頭にかぶり、娘の名前を呼びながら海辺を彷徨う場面がありますが、それはまるで霊になってしまったかのようですよね。彼女を演じていたアビー・リーにも、この映画を撮影前に観て置くよう伝えていました。

──アレックス・ウルフは、“目に見えない恐怖”を描く日本映画から影響を受けているという話もされていたのですが、シャマラン監督としてはいかがでしょうか?

“目に見えない敵”を描くことが私は好きなんです。これまでの作品でもやってきたことではありますが、目に見えるような敵が物理的に襲いかかってくるのではなく、今にも獲物を捕らえようとしている猛禽類が迫ってくるようなイメージ。観る者自身に恐怖が降り注いでくるようなもので、非常に恐ろしく記憶に刻まれるでしょう。このような類の作品は大衆向けとしては少し挑戦的かもしれませんが、そういった恐怖に襲われる観客を見ることにも興味があるんです。こうした演出は、ミニマリズムなどを駆使した日本映画にも見受けられることなので、アレックスが話していることは正しいと言えるでしょう。

カメオ出演、ユニバース化や続編の可能性

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──シャマラン監督は自身の作品に度々出演していますが、その理由はなぜでしょうか?

私としては自身の作品に出演することは、とても有機的で自然なことだと感じていて、とても楽しくやらせてもらっています。ただ、自分に合った役を上手く書くことが出来ないので、そこまでやれる機会もないんですよ。『スプリット』で女の子たちと一緒に地下室に監禁されるわけにはいきませんし、そこに私の居場所もありません(笑)。だから、作品によっては適切な居場所を見つけられないこともありますが、楽しくて適切な役があれば、ぜひやりたいと思っています。

──『アンブレイカブル』『スプリット』『ミスター・ガラス』のトリロジー作品を製作された経験がありますが、『オールド』のユニバース化や続編についてはいかがでしょうか?

ハハハ。面白いことに、新たな物語については実際に考えたことがあるんです。

──続編を望む方々もすでに多くいると思いますが、実行に移さない理由はなぜでしょうか?

作りたいと思っている映画が沢山あって、私は監督と脚本の両方を担当するので、人生で作れる映画の数は限られているわけなんです。30本とか40本とかぐらいで。それしか作れないんですよ。だから、このテーマで新たな映画を作るのは、あまりにもコストが大きすぎると考えたわけなんです。『アンブレイカブル』『スプリット』『ミスター・ガラス』に関しては、とても特殊なものだったので。この先はもう続編のようなものは作らないと思います。もちろん、どうなるかはわかりませんけど。

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真摯かつ丁寧に取材に応じてくれたシャマランは、本作に与えた影響作品について話しているときには、「オススメの日本映画を教えてほしい。リアルにですよ。それで次会ったときにでも話しましょう」と気さくな一面も見せれてくれていた。

映画『オールド』は、2021年8月27日より全国公開中。

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Minami

THE RIVER編集部。「思わず誰かに話して足を運びたくなるような」「映像を見ているかのように読者が想像できるような」を基準に記事を執筆しています。映画のことばかり考えている“映画人間”です。どうぞ、宜しくお願い致します。

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