巨匠オリバー・ストーン、『ジョン・ウィック』が不快だと批判 ─ 「映画というよりビデオゲーム」

ここ数年、巨匠と呼ばれる監督たちによる、スーパーヒーロー映画や大作映画に対する批判が散見されるが、『プラトーン』(1986)『ウォール街』(1987)『JFK』(1991)などを手がけたオリバー・ストーンも一家言あるようだ。
米Varietyのインタビューにてストーンが表明したのは、近年の映画にみられる風潮への違和感だった。ターゲットとなったのは、キアヌ・リーブス主演の人気シリーズ『ジョン・ウィック』。最新作である『ジョン・ウィック:コンセクエンス』を飛行機で観たというストーンは、「言いたいことがたくさんあります。信じられないほど不快な作品だった」と述べている。
「私には、人々が何を考えているのか分かりません。私も子どものころには『G.Iジョー』を観たと思いますが、(キアヌは)あの映画の中で300~400人を殺していますよね。しかし戦闘経験者として言わせてもらいますが、そのなかのひとつとして真実味がない。気づいたんです、映画が映画というよりもビデオゲームに近くなってきていることに。現実味がないんですよ。」
『ミッドナイト・エクスプレス』(1978)の脚本で頭角を現したストーンは、ベトナム帰還兵としての実体験を反映した監督作『プラトーン』で高く評価された。その後も社会性の高い作品をコンスタントに発表していたが、『スノーデン』(2016)を最後に映画監督業は行っていない。
今回、ストーンは『ジョン・ウィック』のストーリーではなく、リアリティのなさを論点としている。
「きっと観客はビデオゲームが好きなのでしょう。しかし、それに私は退屈するんです。何台の車を壊せるか、どれだけスタントをやれるか……『ワイルド・スピード』とその他の映画の違いは何なんだ、と思うんですよ。次々に新しいものが出ているだけで、超人的なマーベルのキャラクターだろうが、人間のジョン・ウィックだろうが大した違いはありません。まるで信じられない。」
なかなか厳しい意見だが、ストーンは決して「文句を言っているわけではない」そう。「これまで20本ほど映画を作ってきましたが、死ぬまでに21本目を作るでしょう。頭の中には構想があります。どのようなものかはまだお話できませんが」と次回作への意欲も語っている。
ストーンといえば、映画制作の師にあたるマーティン・スコセッシが以前、マーベル映画について「映画ではない、最も近いのはテーマパークだ」と発言して物議を醸した。クエンティン・タランティーノによる「マーベル俳優は映画スターではない」という主張も大きく波紋を呼び、『マイティ・ソー』シリーズの主演で知られるクリス・ヘムズワースは、スコセッシとタランティーノの発言に対して、「めちゃくちゃ凹んだ」と素直な反応を口にしている。
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Source: Variety