『オッペンハイマー』撮影はわずか57日間で完了 ─ 「常識では考えられない」とキリアン・マーフィー

クリストファー・ノーラン監督最新作として、世界中から注目を集める『オッペンハイマー(原題)』。すでに鑑賞した海外ジャーナリストたちのレビューからも、相当の野心作であり、肝いりの一作であることが予想されるが、撮影スケジュールは驚くほどにスピーディだったようだ。主演のキリアン・マーフィーが、米国のポッドキャスト「WTF with Marc Maron」で明かしている。
『オッペンハイマー』は“原爆の父”と呼ばれるアメリカの科学者、ロバート・オッペンハイマーを約3時間もの長尺で描いた一作。非常にチャレンジングな内容だが、マーフィーいわく撮影はわずか57日間で完了したとのこと。『バットマン ビギンズ』(2005)に始まりノーラン作品常連と言えるマーフィーだけに、ノーランの仕事ぶりは熟知しているはずだが、「あのペースは常識では考えられません」と語る様子からも、撮影現場が凄まじい集中力とスピードを発揮していたことが想像できる。
ちなみに、ノーランの過去作『ダンケルク』(2017)は69日間、『TENET テネット』(2020)は96日間で撮影された。『オッペンハイマー』もこれまでの作品と同様、大勢のキャストとスタッフを抱えた大規模な撮影だったと思われるが、マーフィーは「セットは巨大でしたが、インディペンデント映画のような雰囲気がありました」と語っている。
「大掛かりなシーンでもない限り、クリス(クリストファー)と、カメラマンと、ブームオペレーター(録音技師)がいるだけです。モニターが置かれているスペースもなく、モニターは一台たりともない。彼は非常にアナログな映画作家なんですよ。」
作品ごとに世界観やスケールをアップデートし、観客を新たな映像体験に誘ってきたノーラン。自らの美学を追求するスタンスは広く知られており、作品作りを自分からやめることは到底できないと語っている。現在進行中の全米脚本家組合(WGA)・全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)のストライキが終結するまでは次回作の執筆には着手しない意向も明かしており、その徹底した映画職人ぶりが厚い信頼を得ている所以なのだろう。
本作『オッペンハイマー』は、早くも「ノーラン史上最高傑作」との評価を受けており、キリアン・マーフィーやロバート・ダウニー・Jr.ら俳優たちにも高い賛辞が寄せられている。米国では2023年7月21日より米国公開中。日本公開は未定。
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Source: WTF with Marc Maron Podcast