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『LOGAN/ローガン』監督、ディズニー買収後のR指定版X-MENを危惧 ― かたや「心配ない」との声も

米ウォルト・ディズニー・カンパニーによる21世紀フォックス社の事業買収がついに成立しようとしている。米国の報道によれば、本件は2017年12月14日(現地時間)にも正式発表されるといわれており、長い歴史を抱えた映画スタジオ「20世紀フォックス」はそこでディズニー傘下に収まることとなるわけだ。
20世紀フォックスが映像化権を有し、精力的に映画版の製作・発表にあたっていたのが、マーベル・コミックの『X-MEN』だ。事業買収が成立すれば、多くのコミック・ファンが待望した“X-MENのマーベル・シネマティック・ユニバース合流”も現実へ近づくことになる。

しかし同時に映画ファンが危惧するのは、フォックスが『デッドプール』(2016)や『LOGAN/ローガン』(2017)などで示してきた、“R指定のヒーロー映画”でジャンルの地平を切り拓こうとする取り組みが失われてしまうことだった。ディズニー傘下で、大人向けの、暴力描写の詰まった映画を作ることはできるのか……。
そうした思いは、『LOGAN/ローガン』を手がけたジェームズ・マンゴールド監督も同じだったようである。

“R指定のヒーロー映画”を作るということ

『LOGAN/ローガン』をアカデミー賞へとプッシュする上映イベントにて、マンゴールド監督は、ディズニーによるフォックス社の事業買収についてコメントしている。自身が愛情をもって映画化した『X-MEN』は、これからどうなってしまうのか……。その偽らざる心境を米Deadline誌が伝えた。

もしも彼ら(フォックス)が方針を変えているのなら、もしも変えなければならないのなら、僕にとっては悲しいことですね。それは、ただ映画のためにならないことですから。映画にとってポジティブなものになることを願いますよ。」

きっとマンゴールド監督の脳裏にちらついているのは、フォックスによって開かれた可能性が、ディズニーの手で閉ざされてしまうという可能性だろう。ディズニー/マーベル・スタジオの手がけるヒーロー映画と、フォックスによる過激なヒーロー映画は、それほどまでに目指している場所が違うということなのだ……。

「R指定の映画を作るとき、舞台裏には、(映画の)ハッピーセット(編注:マクドナルドのグッズ付きセット)が出ないという現実にスタジオが適応せねばならないという事実があります。アクションフィギュアも出ないでしょう。子供たちに映画を売るための商品化やコラボレーションは、始まることすらなく終わってしまう。そういうものが終わることが、成熟した映画を作ることなんですよ。」

ディズニーがR指定映画を作れる2つの根拠

ブランドや売り上げのためにディズニーはR指定作品を作らせないだろう、『デッドプール』をはじめとした過激なヒーロー映画はどうなってしまうのか……。
そうした声が後を絶たない中で、米ScreenRant「そんな心配はしなくていい」と主張する。その根拠となったのが、ディズニーの擁する映画部門「タッチストーン・ピクチャーズ」と、Netflixで展開するドラマシリーズだ。

1984年に当時のディズニーCEOであったロナルド・W・ミラー氏が設立したタッチストーン・ピクチャーズは、ディズニーが大人向け実写映画を製作・配給する貴重なセクションだ。そこでは『身代金』(1996)や『コン・エアー』(1997)といった本国でR指定を受けた作品や、女優のヌードを含むような作品も取り扱われていたのである。ディズニーが20世紀フォックスを入手した場合、これと同じような扱いで映画を製作していく可能性は高いだろう。

またディズニー傘下にあるマーベル・テレビジョンは、Netflixとの共同製作によって『Marvel デアデビル』(2015-)や『Marvel パニッシャー』(2017)など激しい暴力描写を含む作品を多数発表してきた。こちらは映像配信サービスで提供する作品だが、表現や描写に無条件で制限を加えるわけでないことはよくわかる。

マンゴールド監督が危惧するように、ディズニーはR指定作品の可能性をあらゆる理由から閉ざしてしまうのか。それとも従来の例にのっとって、その可能性を自社でコントロールしていくのか。もちろん、ディズニーの思惑やその結果は事業買収が成立してみないことにはわからない。さて……あなたはどちらの展開になると考えるだろうか?

映画『LOGAN/ローガン』のブルーレイ&DVDは現在発売中。

Sources: http://deadline.com/2017/12/logan-director-james-mangold-fox-disney-merger-1202224732/
https://screenrant.com/disney-ruin-deadpool-fox-deal/
©2017Twentieth Century Fox Film Corporation

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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