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「物語は今後15年で劇的に変わる」 ― 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』監督、最先端のストーリーテリングを語る

アンソニー&ジョー・ルッソ
Photo by Gage Skidmore https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Anthony_and_Joe_Russo_by_Gage_Skidmore.jpg

映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、マーベル・スタジオが2008年『アイアンマン』から着実に積み上げてきた、新しいストーリーテリングの形を象徴する作品だ。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の集大成たる本作では、過去10年間の作品を彩ってきたキャラクターが次々に登場し、過去作品から物語や作風をゆるやかに繋げて物語を展開していく。

「ゆるやかに」というのがポイントといっていいだろう。MCUにおいて映画は単独で成立していながら、しかし完全に独立しているわけでもない。物語が完全に繋がっているわけではないが、まったく繋がっていないわけでもない。異なるクリエイターが参加していることによってキャラクターの解釈も決して一通りには落ち着かない。どこからでも楽しめるが、あれこれ観たほうがもっとも楽しい……。従来の映画やドラマが取り組んできたものとは、まるで異なるストーリーテリングがここには存在するのである。

Netflix、マーベル・シネマティック・ユニバース、新しい物語の形

米Variety誌のポッドキャストにて、ジョー・ルッソ監督(アンソニー・ルッソ監督と共同)は、MCUや『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を成功に導いた現代のストーリーテリングのあり方を語っている。

「Netflixやマーベル、スター・ウォーズ。これらの目覚ましい革新は、観客がストーリーテリングの新たな形を熱望した結果です。過去100年間、僕たちは2時間、二次元のストーリーテリングにおいて素晴らしい時代を過ごしてきましたが、次の10年、15年で物語の語り方は劇的に変化すると思います
Netflixが金曜日に(ドラマ)番組を一気に10話公開するのは、10時間の物語という、語り方の新たな形でしょう。休みの日にそこから何か選べるわけで、だからみんな楽しんで観るんだと思います。これは(観客が)コンテンツを受容する新たな形で、彼らにとっては内容が予想しづらくなりますよね。」

ここで語られているのは、ドラマを週ごとに一話ずつ見せるのではなく、いわば“10時間の映画”として観客の眼前へ一気に叩きつけるやり方だ。観る側も時間をつくって「ビンジ視聴(一気見)」に臨むなど、めくるめくストーリーテリングの中に身を投じていくような体験を味わうことになる。従来テレビドラマの特徴だった、「次回は(来週は)どうなるんだろう」という感覚は時に重要視されなくなるのだ(ちなみにマーベルは『デアデビル』『ジェシカ・ジョーンズ』などドラマの世界でも新しいストーリーテリングを実践していることになる)。

ジョー監督は、マーベル・シネマティック・ユニバースにせよNetflixの“一挙配信”にせよ、観客が求めた結果として誕生したものだと主張する。しかし「目覚ましい革新」とともに様々なコンテンツが身の回りにあふれる現在、監督は、今や普通の観客でも「映画の内容を予想する能力が高度化している」という実感を抱いているようだ。
そこで『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を手がけた二人は、そんな環境下で観客といかに対峙するかに心を砕いたという。

「アンソニーと僕は(作品の)秘密を隠しておくことに多くの時間を費やし、ミスリードを誘うように予告編を編集し、情報を扱いました。何が起こるかを直感するのは、(観客にとって)いともたやすいことですから。」

ジョー監督は、こうしたストーリーテリングの最先端をひた走る本人でありながら、映画界に「ユニバース構想」が広がっていくことには警鐘を鳴らしている。「ユニバースは(物語の)新しい形です」だと言い切りつつも、彼は「シネマティック・ユニバースにしたからといって、全てを支えられるわけではありません」述べているのだ。

「アドバイスをするなら、新しい物語の語り方を探し続けるべきだ、ということになるでしょうね。観客の方はオープンだと思いますから。世代間で分裂は起こるものですが、新しい世代は、長らくみられなかったような形でストーリーテリングを進化させると思います。テクノロジーは成長していますし、彼らはYouTubeのほか、簡潔かつ簡単、流動的なソーシャルメディア上でコンテンツを摂取することにも慣れている。長い時間をかけて(コンテンツに)情熱を傾けるのも好きだと思いますしね。ユニバースを作らずにすむ(ストーリーテリングの)方法もたくさんありますよ。」

ルッソ監督は『アベンジャーズ/エンドゲーム(邦題未定、原題:Avengers: Endgame)』をもってMCUを去るものとみられるが、その後、彼らはどんなやり方で物語を語っていくことになるのだろう? MCUの仕掛け人である、マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギの手を離れてからの活躍も楽しみだ。

映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は2018年4月27日より全国の映画館にて公開中

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』公式サイト:http://cpn.disney.co.jp/avengers-iw/

Sources: Variety(1, 2

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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