映画の相次ぐユニバース化、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』監督が「止めたほうがいい」と助言

マーベル・スタジオ映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)が好調だ。世界各地の興行収入ランキングでは初登場1位。公開初週末ランキングでは2015年の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を凌ぎ歴代1位を記録するなど社会現象的なブームとなっている。
シリーズのファンは、この快挙が一朝一夕に成就したものではないことをよく知っているだろう。同作は、2008年の映画『アイアンマン』より始まった「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」と呼ばれるシリーズの集大成。過去18作にもわたる映画は全て同じ世界の中の出来事であり、映画の中ではいくつもの「つながり」が示唆されてきた。シリーズを追うファンにとっては、「あの映画とこの映画が、こんなところで繋がっている」と発見するのが楽しみなのだ。
MCUだけじゃない、様々なシネマティック・ユニバース
このように複数の作品をまたいで1つの巨大な世界観を形成する、所謂「シネマティック・ユニバース」は、MCUが発明したトレンドとも言える。マーベルと共にアメコミ二大人気を分かつDCコミックも、スーパーマンやワンダーウーマンら人気キャラクターの単独映画を製作した後『ジャスティス・リーグ』(2017)に昇華。こちらもファンに人気のシリーズだ。

シネマティック・ユニバースの流れはスーパーヒーロー映画に留まらず、2017年の映画『キングコング:髑髏島の巨神』は『GODZILLA ゴジラ』(2014)と世界観を共有しており、2019年にはモスラ、ラドン、キングギドラ参戦の『ゴジラ:キング・オブ・モンスターズ(仮題)』、2020年には『ゴジラVSキングコング』が公開予定。こちらは「モンスターバース」と呼称されている。
ほか、人気監督のM・ナイト・シャマランは、2000年の『アンブレイカブル』と2016年の『スプリット』を接続させ、2019年に『グラス(仮題)』を予定。ファンからは「シャマラン・バース」とも呼ばれる。
「止めたほうがいい」?
MCUは「シネマティック・ユニバース」のフォーマットで先陣を切り、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でひとつの最高点に到達した。監督したアンソニー・ルッソ&ジョー・ルッソはその頂点にあるが、このアイデアの模倣には懐疑的のようだ。
米Varietyのインタビューに登場したジョー・ルッソ監督は、MCUのように知的財産を集結させるモデルに挑む場合のアドバイスを求められ、次のように答えている。
「いや、止めたほうがいい。シネマティック・ユニバースにしたからといって、全てが支えられるわけではありません。」
存続危ぶまれるユニバースも
こんな事例もある。米ユニバーサル・ピクチャーズは2017年、往年の有名モンスター映画を同一世界観の中で続々とリメイクするシリーズ企画「ダーク・ユニバース」を発表。第一弾としてトム・クルーズ主演の映画『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』を公開すると共に、ジョニー・デップが透明人間を、ハビエル・バルデムがフランケンシュタインを演じるとするキャスティング予定も正式発表した。

ところが、肝心の第一作『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』が残念ながら振るわず。第二弾として予定されていた『フランケンシュタインの花嫁』は主演も決まらぬまま無期延期となり、さらに「ダーク・ユニバース」企画の主要スタッフが次々と離脱し、事実上の凍結状態となっていた。
パイオニアであるマーベル・スタジオも、はじめからこれほどの成功を確実視していたわけではない。マーベル映画の関係者は、MCU企画起ち上げ当時の不安を常々振り返っている。舵取り人であるマーベル・スタジオ製作社長ケヴィン・ファイギは、「忘れられがちだけど、『アベンジャーズ』の製作は『マイティ・ソー』(2011)や『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011)の公開前から取り掛かっていました。もしもお客さんがソーを嫌ったらどうしよう?もしもロキがバカっぽく思われてしまったらどうしよう?氷漬けにされたスーパーソルジャーなんてウケなかったらどうしよう?あの時僕らは、巨大な映画製作の第一四半期にいて、止まらずに突き進むつもりでした。オール・インで挑むようなものだったかな」と振り返っている。いかに決死のギャンブル同然の覚悟で挑んでいたかがうかがえるだろう。
あなたは、他の映画シリーズがMCU同様の成功を収められると思うだろうか?なぜMCUは「一人勝ち」にも近いほどの成功を収められたのだろう?
Source:Variety