幻のティム・バートン版『キャットウーマン』、「ザ・ボーイズ」風のヒーローコメディになっていたかもしれない

『バットマン』(1989)『バットマン リターンズ』(1992)のティム・バートン監督による、幻の『キャットウーマン』単独映画は、ドラマ「ザ・ボーイズ」(2019-)のような作風になっていたかもしれない──。脚本家として就任していたダニエル・ウォルターズが明かした。
2023年12月22日、ロサンゼルスで開催された『バットマン リターンズ』の上映イベントに登場したウォルターズは、脚本家として参加した『バットマン リターンズ』のエピソードとともに、当時企画されていた『キャットウーマン』の単独映画について語っている。実現に至らなかったのは、バートンとウォルターズの目指した方向性がまるで違ったためだというのだ。
当時、バートンが構想していたのは、猫人間を描いた古典的ホラー映画『キャット・ピープル』(1942)のようなモノクロ映画。しかし、ウォルターズの脚本はより風刺的な内容だったという。
「彼(バートン)がやりたかったのは、オリジナル版『キャット・ピープル』のような製作費1,800万ドルのモノクロ映画。セリーナ(・カイル)が小さな町でひっそりと暮らしている話でした。しかし、私が作りたかったのは『バットマン』のメタファーとしてのバットマン映画。彼女がロサンゼルス風のゴッサムに移り住むんですが、そこを最低のスーパーヒーロー3人が仕切っている設定でした。『ザ・ボーイズ』以前の『ザ・ボーイズ』という感じ。」
ウォルターズはこの脚本を書き上げていたが、バートンはその内容を読むや「ぐったりしてしまった」という。ちょうど、ワーナー・ブラザースに脚本を提出したのは『バットマン フォーエヴァー』(1995)の米国公開当日。スタジオとしてはライトなスーパーヒーロー映画を求めていた時期に、いささかチャレンジングすぎるアイデアを持ち込んでしまったのだ。
もともと『ヘザース/ベロニカの熱い日』(1989)などのブラックコメディを手がけてきたウォルターズにとって、『バットマン リターンズ』は異色作。前作『バットマン』を「つまらない映画だ」と思っていた彼は、『バットマン リターンズ』にも尖ったユーモアを仕掛けようとしていた。当初の脚本では、オープニングを飾るバットマンのロゴは劇中世界の「バットマン・ストア」のもの。劇中では、バットマンが「金儲け主義のキャラクタービジネス」に言及していたという。ところが、これらはバットマン役のマイケル・キートンの要望で削除された。
幻となった『キャットウーマン』を、自ら「『ザ・ボーイズ』以前の『ザ・ボーイズ』」と形容したように、当時のウォルターズのアイデアは時代に先行しすぎていた感がある。もしも現代だったなら、もしかすると『キャットウーマン』もそのままの形で実現していたのかも……?
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Source: IndieWire