シー・ハルクの出番、VFX予算の都合で減らされていた ─ 脚本家が語る製作の苦労

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のドラマシリーズ「シー・ハルク:ザ・アトーニー」は、主人公のジェニファー・ウォルターズがハルクの能力を手にし、シー・ハルクとしての姿でも活躍する“法廷ドラマ”だ。脚本・製作総指揮のジェシカ・ガオは、米Varietyで「これほどスケールの大きい作品はやったことがなかった」と明かし、脚本の執筆にも大いに苦労したことを明かしている。
ガオが「未知の領域だった」と語るのは、タチアナ・マスラニー演じる人間のジェニファーを、どこまでシー・ハルクに変身させてよいのかということ。劇中でも言及されるように、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)以降のハルク/ブルース・バナーは、それ以前よりも人間の姿を強く残した“スマート・ハルク”。ジェニファーもこの路線を踏襲するが、そのVFX作業がどれほど大変なのか、物理的にどれほど実現可能なのかが読めなかったのだ。
「脚本の執筆中、このCGキャラクターをどうやって実現するのかを正確に理解していた人はいなかったと思います」とはガオの談。当時は脚本作業とVFXの試行錯誤が同時に進んでいたといい、ビジュアル面は経験豊富なマーベル・スタジオにある程度は任せていたという。
「執筆中、予算のことは気になっていましたが、CGにどれだけのコストがかかるのかが見当もつかなかったんです。予算がかかることは知っていたので、最初にケヴィン(・ファイギ社長)には“どれだけやっていいんですか? 予算のことはどれくらい気にすべき?”と聞きました。そうしたら、“『シー・ハルク』という作品なんだから、僕はシー・ハルクが見たい”と。」
ところが、ここに落とし穴があった。ファイギ社長の発言を聞いたガオは「書きたいものを書いていいんだな」と理解したものの、いざプリプロダクション(撮影前作業)が進み、撮影が始まると、予算の都合による脚本の修正作業を余儀なくされたのである。
「毎週のように、“シー・ハルクのシーンを減らせませんか、シー・ハルクをジェニファーに変えられませんか、ジェニファーをもっと出せませんか”という提案がありました。ギリギリになってから、シー・ハルクをジェニファーに変更することもたくさんあったんです。ポストプロダクション(編集後作業)でも、シー・ハルクが出ているために多くのショットをカットしなくてはいけませんでした。」
MCU作品はスーパーヒーローの活躍が売りであるために、こうしたやり取りが行われているのは、おそらく「シー・ハルク」に限った話ではないのだろう。しかしディズニープラスでのドラマシリーズが――テレビ作品としては高予算とも言われるものの――映画以上に厳しい条件で作られていることは想像に難くない。
ちなみに本作では、このほかにも大幅な変更が行われており、第1話の内容はもともと第8話で描かれる予定だったこともわかっている。水面下で活躍するスタッフたちの苦労がしのばれる。
ドラマ「シー・ハルク:ザ・アトーニー」はディズニープラスにて独占配信中。
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Source: Variety