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『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』ミステリオは敵か味方か ─ コミックではヴィラン、今回はピーターの師匠にして兄貴分

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
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『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)に続くマーベル・シネマティック・ユニバース最新作スパイダーマン:ファー・フロム・ホームは、過去11年にわたる「インフィニティ・サーガ」の“真の完結編”…なのだが、事態はそれほどわかりやすくない。予告編でも語られたように、本作には別次元からの来訪者が登場。それが、クウェンティン・ベック/ミステリオジェイク・ギレンホールだ。

“指パッチン”によって別次元への扉が開き、そこから地・風・水・火の四大元素を操る脅威“エレメンタルズ”が出現。ミステリオは異次元から現れた新ヒーローで、ピーター・パーカー/スパイダーマンと手を組んでエレメンタルズと戦うことになる、のだが……。

謎の新ヒーロー、ミステリオ

前作『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)に引き続き、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の監督を務めるジョン・ワッツは、本作が『アベンジャーズ/エンドゲーム』で生まれた疑問に取り組む作品であることを明かしている。米Fandangoのインタビューで、ワッツ監督は「今回は『エンドゲーム』で生じた大きな疑問のひとつに答えようとしました。それが“別次元”です。ピーター・パーカーは、その問題に等身大で取り組める数少ない人物ですから」とコメント。ミステリオ&エレメンタルズが、予告編でも語られているように同じ別次元からやってきたことを強調している。

それにしても、本作におけるミステリオの設定は『スパイダーマン』ファンであればあるほど驚きだろう。なぜなら、ミステリオはコミック版『スパイダーマン』の人気ヴィランなのだ。1964年6月刊行「Amazing Spider-Man」#13で初登場したクウェンティン・ベック/ミステリオは、かのスタン・リー&スティーブ・ディッコが生み出した最も歴史あるヴィランの一人。映画特殊効果のスペシャリストとして、その技術と才能で人々をすっかりだましてしまう設定だ。

ただしワッツ監督は、そもそも「ミステリオはヒーローとしてコミックに登場した」キャラクターだと話している。確かに、コミックに初登場した際のミステリオは、新聞が“悪党”として報じるスパイダーマンを捕らえようと考える“ヒーロー”だった。今回のミステリオは、いわばその原点を志向する意図のもとで誕生したわけだ。

ミステリオを原作の設定に戻して、ミステリオを魅力的なキャラクターにしていたものは何か、という点に回帰しました。また第一に、ミステリオをいかに描くかという点でいえば、(コミックの)強力でアイコニックなヴィランではなく、かつてない形でスクリーンに登場させたかったんです。」

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
SPIDER-MAN: ™ FAR FROM HOME

ワッツ監督らの解釈は、ミステリオという存在をさらなる高みへと押し上げた。ミステリオの存在こそが「語りうるストーリーに大きな可能性を開いてくれた」というのだ。現に、本作ではスパイダーマンとミステリオがタッグを組むことになる。スパイダーマン役のトム・ホランドは、二人の関係を「兄弟のよう」だと語った。

「(ミステリオとは)兄弟のような関係です。ニック・フューリーは、しょっちゅう説教してくる校長先生みたいなもの。だけど、ピーターはそこにいたくないわけですから。休みを満喫したいんです。そんな中で、ミステリオはいつも僕の味方をしてくれて、僕のことを褒めてくれる。“よくやった”って言ってくれるんです。ピーター自身が“できてない”と思ってるのに、ミステリオは“やったな!”って言ってくれるんですよ。だから“えっ?”って。面白いですよね。」

実はTHE RIVERも、ファンの間でにわかに語られている『ファー・フロム・ホーム』のミステリオ、本当にヒーローなのか問題」について、トムに直接質問する機会に恵まれた。すると、トムはやはり“ヒーロー説”に準ずる答えを返してくれたのだった。

ミステリオと僕はチームで相棒です。協力してエレメンタルズと戦うんです。彼が現れたのは、サノスの(トム、指を綺麗にパチンと鳴らして)指パッチンによって次元の狭間が生じたからで、マルチバースからやってきたんです。異次元の主要素(エレメンタル)で出来た怪物で、地球を壊滅させようとしているんですね。で、世界の運命がスパイダーマンとミステリオにかかっているというわけです。」

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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