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『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』懐かしのヴィラン復活、「ただのファンサービス」に陥らない脚本術とは

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
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マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)最新作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、スパイダーマン映画において最も野心的な一作だ。サム・ライミ監督『スパイダーマン』3部作からドクター・オクトパスやグリーン・ゴブリン、サンドマン、マーク・ウェブ監督『アメイジング・スパイダーマン』2部作からエレクトロやリザードが復帰したのである。

したがって、監督のジョン・ワッツ、脚本家のクリス・マッケナ&エリック・ソマーズには極めて高いハードルが設けられた。本作はMCU版『スパイダーマン』の最新作でありつつ、過去のスパイダーマン映画を愛するファンの期待に応えつつ、しかも独立した映画として優れた作品にしなければならないのだ。米Discussing Filmにて、エリックはその難しさを吐露している。

「バランスが大事です。僕たちは過去の映画、サム・ライミとマーク・ウェブの作品が大好きだから敬意を払いたいし、ファンの皆さんにも喜んでほしい。ただし、それ自体をつまらないファンサービスにしたくはない。そんなものは上滑りするだけだから。重要なのはバランスを取ることだし、どの段階でもストーリーについて考えること。だから、仮に“このヴィランに昔と同じ台詞を言わせたい!”と思っても、それができる場面を探してはいけないんです。懸命に探して、時間をかけて、最終的に脚本に書いたとしても、それは今回の映画には必要ないかもしれない。」

キーワードは、あくまでも本作が、トム・ホランド演じる主人公ピーター・パーカーの物語であるということだった。エリックは執筆のプロセスについて、「ピーター・パーカーの物語を描くことに集中しながら、その中で、やりたいことができる場面を見つけられることを祈る」のだと語る。ときには周囲のスタッフが、ふたりの“やりたいこと”をやる余地を発見することもあったそうだ。「賢くて才能あふれる人たちが脚本を読み込み、物事を組み立て、(過去作の要素を)自然に組み込めるところを見つけてくれた」とはエリックの談である。

ちなみに劇中には、まったく同じ理由から削除せざるをえなかった場面が複数あったことも認められている。エリックは「もしやれていたら絶対気に入っていた」「ふたりのヴィランが一緒にアレを出来たら最高」と思っていたシーンなどがあったものの、「時には手放すことも必要」だったと話しているのだ。“何よりも大切なのはストーリーである”とは、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)を手がけたアンソニー&ジョー・ルッソ監督や、脚本家のスティーブン・マクフィーリー&クリストファー・マルクスも述べていた言葉だ。

Sources: Discussing Film

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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