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【ネタバレ】『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』夢の共演に隠された、CGチームの見えない苦労 ─ 緻密なリサーチ、丁寧な作業で実現

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
©2021 CTMG. © & ™ 2021 MARVEL. All Rights Reserved.

この記事には、映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のネタバレが含まれています。

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
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3人のスパイダーマン、どう描き分ける?

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のVFXチームが挑んだのは、ついに大スクリーンで夢の共演を果たした“3人のスパイダーマン”だ。サム・ライミ版『スパイダーマン』3部作からトビー・マグワイア演じるスパイダーマン、マーク・ウェブ版『アメイジング・スパイダーマン』2部作からアンドリュー・ガーフィールド演じるスパイダーマン、そしてトム・ホランド演じる“MCU版”スパイダーマンがそれぞれのスーツを身にまとって登場する。

VFXスーパーバイザーのクリス・ワーグナーは、過去に『スパイダーマン』『アメイジング・スパイダーマン』シリーズでもVFXを担当してきた人物。過去にフィルムメーカーたちと手がけてきたスパイダーマンを、本作で自ら新しく甦らせることは「本当に刺激的な機会だった」と語っている。

「(スパイダーマンには)あらゆる年代とジェンダーにまたがる熱狂的なファンたちがいます。この映画でトム・ホランドのスパイダーマンを初めて観る子どもたちもいれば、最初にトビー・マグワイアのスパイダーマンを劇場で観て、あとからアンドリュー・ガーフィールド版を観たという年長者のコミックファンもいる。だから、本当に大切なのはシリーズを正しく扱うこと。監督のジョン・ワッツと、VFXスーパーバイザーのケリー・ポートには同じくらいの情熱がありました。」

チームが取り組んだのは、トビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドが演じたスパイダーマンのモデルを再創作することだった。それぞれの映画製作当時に作られたものはあったが、テクノロジーが進歩したため、スキャンと写真を併用しながらゼロからCGを作り直したのである。骨の折れる作業だが、決め手はトビーとアンドリューの肉体が歳を重ねて変化したことだったという。

「それぞれのスパイダーマンを描き分けることは、ジョンとケリーにとっても非常に重要なことでした。しかし彼らのスーツは色調がとてもよく似ているし、しかも私たちが担当するのは夜のシーンが多かったので本当に難しかったですね。とにかく見分けづらくて。明るいショットに着手してから、やるべきことが明瞭になったんです。スパイダーマンたちそれぞれの肉体的特徴と、スパイダー・スタイルの違いを強調することでした。つまり、彼らがスウィングするとき、ウェブを撃つとき、おなじみのポーズを取るとき、人体の比率はどうなっているのか。」

そこでアニメーション・スーパーバイザーのリチャード・スミスは、チーム全体で過去作品を再検討し、それぞれのスタイルの違いを改めて踏まえ直した。ワーグナー氏いわく「それぞれの特徴的な個性を見比べたことで、隣同士になってもユニークなスタイルを作っていった」とのこと。緻密な研究と新しい工夫によって、3人のスパイダーマンは描き分けられたのである。

ちなみにVFXチームが予想外の苦労を味わったのが、トム・ホランド演じるスパイダーマンの新スーツだった。本撮影中に“ハイブリッド・スパイダーマン・スーツ”と呼ばれるメタリックなスーツを着ることが決定したため、トムが撮影で着用していた実物のスーツを、すべてデジタルのスーツに置き換える必要があったのだ。最終的な見た目のレベルを上げるため、あらゆる部署を巻き込んで作業が行われ、トム個人の筋肉の動きや共演者との身体的接触も完璧にCGで置き換えられたという。細部までをキャプチャし、それらを徹底再現したものを映像に収め直すという作業を、ワーグナー氏は「本当に大変だった」と振り返っている。

Source: befores&afters

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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