Menu
(0)

Search

【考察】スパイダーマンはなぜ戦い続けてしまうのか ─ 『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』 予告編に滲む暴力性

スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ
MARVEL and all related character names: (C) & TM 2026 MARVEL

パニッシャーとハルク、爆発する暴力との対比

『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』の予告編では、爆発する怒りや暴力性のシンボルと言えるヒーローが登場する。その1人がストリートレベルのアンチヒーローであるパニッシャー/フランク・キャッスルだ。パニッシャーは妻子を犯罪者によって奪われたことがきっかけで、彼らに躊躇いなく銃口を向け、血まみれになるまで殴る、命を奪うなどもいとわない存在になった。

スパイダーマンはパニッシャーとして活動するフランク・キャッスルを止めている。しかし、ピーター・パーカーが孤独を加速させていく中で、スパイダーマンがパニッシャーと同じ暴力的なアンチヒーローの道へと一歩、また一歩と進んでしまい、私刑を下すようになっていくのではないだろうか。

もう1人のヒーローがハルク/ブルース・バナーだ。ブルース・バナーは『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)で自身の怒りや暴力性のシンボルだったハルクと向き合い、克服。以降はスマートハルクとして活動していた。その後、「シー・ハルク:ザ・アトーニー」(2022)では制御装置を着けることでブルース・バナーとして生活していることを語っていた。ブルース・バナーは怒りや暴力性を完全に制御したシンボルだったのだ。

しかし、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)などで、スマートハルクとして暴力性や怒りをコントロールできるはずにもかかわらず、敢えて制御装置を使用してブルース・バナーとして生活している点が気になる。この違和感が、『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』において再び怒りや暴力性がテーマとなる兆しなのかもしれない。

また、忘れてはいけないのがSSU版のトム・ハーディが演じたヴェノム/エディ・ブロックが残していったシンビオートのかけらだ。シンビオートに取り憑かれたブラックスーツのスパイダーマンは、トビー・マグワイアが演じたサム・ライミ監督作『スパイダーマン3』(2007)で登場したが、それによりピーター・パーカーの性格は傲慢になり、怒りをコントロールできなくなった。

『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』予告編では目が真っ黒になり、ヴィランの刀を砕くピーター・パーカーが登場している。この姿はシンビオートに取り憑かれてブラックスーツになったスパイダーマンが怒りや暴力性を爆発させてしまう状態である可能性も考えられる。

親愛なる隣人として復活できるか

ピーター・パーカーが意識を失っている間に体を繭で覆っているのは、コミックの『アザー』と同じ展開である。『アザー』はサム・ライミ監督作「スパイダーマン」三部作に合わせて生体ウェブになったスパイダーマンが、ウェブシューターを使うスパイダーマンに戻るエピソードだ。しかし、『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』ではウェブシューターを使用するスパイダーマンが生体ウェブになるなど設定が逆転している。

『アザー』では体が弱っていくピーター・パーカーが蜘蛛へと近づいていき、繭で体を覆って復活を果たした。このとき、ピーター・パーカーを診察した科学者やヒーローたちの中にブルース・バナーがおり、彼は「ピーター・パーカーはもう治らない」と診断している。

『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』でピーター・パーカーは『アザー』と異なり、肉体的に弱っていくのではなく、精神的に弱っていくのかもしれない。それによって蜘蛛本来が持つ暴力性を抑えることが難しくなり、暴走していく展開も考えられるだろう。

スパイダーマンといえばニューヨーク市民にとって親愛なる隣人だ。そのような心優しい彼が、孤独に戦ってきた4年間がどれほど過酷なものだったのか、想像するのはたやすい。そして、これまでのトム・ホランド演じるスパイダーマンは、グリーンゴブリンを殺そうとしたときにトビー・マグワイア演じるスパイダーマンが止めに入るなど、暴力に傾きかけたとき必ずそれを止めてくれる存在がいた。

しかし今のピーター・パーカーには、その“ブレーキ”が存在しない。そのことから、『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』は、ピーター・パーカーが抱えていた怒りや暴力性を自分自身の力で乗り越え、再び“親愛なる隣人”へと復活できるのかを問う物語になるのではないだろうか。

『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』は2026年7月31日(金)に日米同時公開。

Writer

アバター画像
鯨ヶ岬勇士

アニメ・特撮・洋画を中心に、作品の魅力とその背景にある社会性を横断的に読み解くカルチャーライター。Web媒体のほか、雑誌・ムック本などにも寄稿。作品分析を軸にした評論を執筆している。

Ranking

Daily

Weekly

Monthly