『スーパーマン』は「マーベルからの解雇なくして作れなかった」とジェームズ・ガン ─ 「人に好かれるための創作をやめられた」

新DCユニバースの映画第1弾『スーパーマン』の公開がいよいよ近づいてきた。ジェームズ・ガン監督にとっては『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(2023)以来2年ぶり、自身が統括するDCスタジオで初めて手がける長編映画だ。すでに「新境地」を自認する一本でもある。
2018年7月、ガン監督は不適切な言動を理由に、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)から一時解雇された。現在、ガンは「あの出来事がなければ、この『スーパーマン』は書けなかった」と米Rolling Stoneにて断言する。それは、ディズニー/マーベル・スタジオから解雇されている間にDCの打診を受けて『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)を手がけたから──というだけではない。
「もしも(一時解雇が)ああいう経験でなければ、この仕事をしていたかさえわからないのです。僕がピュアなキャラクターに惹かれることはなかったと思うから。」
ガンの解雇後、ハリウッドで活躍する多くの業界人や映画ファン、世界中のジャーナリストがディズニーの判断を批判。再雇用を求める署名運動には40万人以上が名を連ね、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのキャストがガンを支持すると表明した。友人たちからもたくさんの連絡が寄せられ、ガンはこの出来事に心から感動したという。

時をさかのぼると、ガンはMCUの一時解雇直後である2018年に『スーパーマン』の映画化を打診されていた。しかし、当時のガンは「うまくつかめなかった」ために『スーパーマン』を断り、代わりに『ザ・スーサイド・スクワッド』を選んだのだ。
実際のところ、ガンは「2020年の自分にも撮れなかったのではないか」とも言っている。「しかるべき方法を見つける必要がありました。“これだ”という道にたどりつくまでに、たくさんの選択肢を検討する時間が必要だった」と。
「私は自分の人生とキャリアを通じて、少しずつカドがとれてきたと思います。もちろんブラックコメディは好きですし、カドはまだ残っています。けれど、以前は挑発的なことをよくやっていました。今でもそうだと思われるかもしれませんが、実際はそういうことを好んではいません。私はとてもセンチメンタルな人間で、人間の基本的な価値観を信じています。」

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズを手がけたこと、MCUから一時解雇されたこと、しかし周囲からの愛情と信頼を実感できたことを通して、ようやくガンは「人々から好かれるための創作をやめることができた」という。
「それまでの作品はすべて、人を喜ばせようとしていました。機能不全家族で、周りを喜んでもらうために踊っている子どもが大人になった──それが僕のキャリアだったんです。それがすべてではなくとも、愛されたいという欲求はありました。」
ガンが得意としてきたコメディやホラーというジャンルは、そのためにうってつけだった。「(ホラーやコメディは)うまくいけば観客が常に反応してくれる。作り手にとっては安心感がありますが、それは自己中心的なことでもあります」と率直に言う。本来は観客席で自分が満足するための作品を創っているわけではないのだから、「観客が好いてくれるかわからないものを一緒に観る覚悟が必要」なのだと。
そのためにガンは、自ら「新境地」と呼べる作風に踏み出した。以前ならユーモアを盛り込んでいたであろう会話シーンも、なるべく笑いを削ぎ落とし、シーンの本質に向き合ったという。

これまで、ガンはクリス・プラットやジョン・シナといったスターたちに「観客に好かれようとしなくてもいい」と助言してきたことを自ら振り返っている。「ただ自分らしく、一人の人間としての弱さを見せることが観客の心に響くのだ、と言ってきました。素晴らしいアドバイスだと思いますが、そのときは僕自身が心から理解していたわけではなかったんです」。
いわば『スーパーマン』はジェームズ・ガンの創作としてもキャリアの第二章と言えそうだ。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズやMCU経験の向こう側で、今のガンはいったい何を語るのか──。
映画『スーパーマン』は2025年7月11日(金)日米同時公開。
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Source: Rolling Stone