【東京コミコン2016】杉山すぴ豊さんスペシャルトーク レポート【2017年はワンダー・ウーマンとローガンに注目しよう!】

2016年12月2日(金)〜4日(日)、幕張メッセにて『東京コミコン2016』が開催、大盛況のうちに幕を閉じた。

会場内に設けられたメインステージでは、期間中さまざまなイベントやトークショウが開催され、多くの著名人やセレブリティが登壇。詰めかけた観客は、この貴重な機会を見逃すまいと熱心に聞き入っていた。

今回は、2日目となる12月3日(土)午前10時20分より開催された、『SCREEN presents 杉山すぴ豊 スペシャルトーク(提供:SCREEN ㈱近代映画社)』のレポートをお届けしよう。


杉山さんと言えば、日本を代表するアメコミ・アメキャラ系ライター。長年、日本におけるアメコミ伝道師として様々な活動をされている。(THE RIVER編集長も、先日スペシャル対談をさせていただき、記事は大きな反響を呼んだ。)

「アメコミ映画はコンテンツの中心になってきています。アメリカの有名経済誌が”OUR HERO”と題して”アメリカの経済を支えるのはヒーローだ”と特集を組むくらいの現象になっています。」

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スクリーンには全米における映画の歴代興行収入トップ50の作品の一部タイトルがズラリと紹介される。ほとんどがコミコンでフューチャーされるようなアメコミ映画、スター・ウォーズ作品ばかりだ。アメコミなどのポップカルチャー作品がいかに世界的なムーブメントになっているかがよくわかる。

「これはアメリカだけの現象ではありません。マーベルに関しては2008年の『アイアンマン』から2016年の『キャプテン・アメリカ / シビル・ウォー』までの全世界興行収入は1兆円なんです。映画の収益だけで1兆円です。みなさんきっとアメコミグッズとかにお金を使っていると思うんですが、その収益がこういうお金になっているんですね。だからみなさんは投資家みたいなもんですよ。」

2017年も多くのアメコミ映画が封切られるが、このステージでは中でも杉山さんが注目する2つの作品を掘り下げて解説された。一作目が『ワンダー・ウーマン』、二作目が『ローガン』だ。

『ワンダー・ウーマン』

ステージでは、大画面で『ワンダー・ウーマン』日本語字幕付きの最新フッテージ映像が上映された。

杉山さんは、大画面・大音量で、大迫力の予告編を観終えたばかりの熱気がフワつく会場に再登場しこう解説する。

「この予告映像の凄い所は、銃弾が飛んでくる時にダイアナ(=ワンダー・ウーマン)が(飛んでくる銃弾が一体何なのか)わからないという描写。彼女は銃を見たことがないんですね。その彼女が銃(=近代技術)に立ち向かっていくという構成になっているのが凄く良いです。

ワンダー・ウーマン誕生秘話

今年で生誕75周年を迎える、長い歴史を持つワンダー・ウーマン。ステージでは、彼女の辿った歴史が紐解かれていく。

「ワンダー・ウーマンは、1941年にウィリアム・モールトン・マーストンという人が生み出しました。この人、実はコミックライターじゃないんです。当時のDCコミックは、コミックを充実させるために、外から色々なブレーンを集めていました。」

このウィリアムの正体は、なんと『嘘発見器』を発明した心理学者だ。

「ワンダー・ウーマンの武器に、”ラッソー”という黄金のムチがあるんですけど、あれって悪人を縛り上げると悪人が自白するっていう力を持っているんです。彼の嘘発見器の発明から来ているんです。」

こうして、ワンダー・ウーマンは今まで男性中心だったスーパーヒーローの世界に初めての女性ヒーローとして登場したのだ。

ワンダー・ウーマンが国連名誉大使に選出された社会的意義 – ジェンダーの視点で見る女性ヒーロー

ワンダー・ウーマン映像化の歴史

「ワンダー・ウーマンが初めて映像化されたのは、実写ではなく1973年の”スーパーフレンズ”という子供向けアニメでのことでした。これはジャスティス・リーグを子供向けにしたアニメで、ここで初めて動くワンダー・ウーマンが出てきたわけです。」

その後も何度か映像化されたワンダー・ウーマンだったが、実写として登場したのは1976年のテレビドラマでのタイミング。日本では『空飛ぶ鉄腕美女ワンダー・ウーマン』という邦題で放送され、さらにその後『紅い旋風!ワンダーウーマン』という邦題で放送されたものは、由美かおるさんが吹き替えを務めていたそうだ。

「そして生誕75周年の2016年、『バットマン vs スーパーマン:ジャスティスの誕生』で映画デビューを果たし、来年(2017年)単独映画になるというわけです。」

ところで、なぜ1976年のテレビドラマの邦題が『空飛ぶ鉄腕美女』と謳われていたのか。ワンダー・ウーマンは空を飛べないはずだが…。その理由を杉山さんはこう解説する。

「実は原作コミックでは、ワンダー・ウーマンって透明の飛行機に乗っているという非常に便利な設定があるんです(笑)。今年のサンディエゴ・コミコンで、ファンのQ&Aのコーナーで“映画の中にも透明な飛行機は登場しますか?”と聞いたら、監督が”フフッ”って答えていました。まぁ、出るか出ないかわかんないですけど、もしかしたら出るかもしれません。」

ジャスティス・リーグがもたらす人権的多様性

「サンディエゴ・コミコンではワンダー・ウーマンの後にジャスティス・リーグのパネルがあって、監督と出演者陣が登壇して凄く盛り上がってたんですけど、今回のジャスティス・リーグっていうのは凄く社会性を持った映画になると思いました。」

杉山さんは、ジャスティス・リーグのメンバーそれぞれが社会的な問題を抱えているヒーローであると考察する。

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「例えば、バットマンは犯罪者に身内を殺されているから、“犯罪問題”に正義を見出していたり、アクアマンは人間とは全く別世界で生きてきた文明を持っている人なので、“違う文明と人間は共存できるか”という問題を持っているヒーローです。

フラッシュは若造なんですけど、旧世代は旧世代の、新世代は新世代の悩みを持っているわけで、“新世代の正義”を抱えていくヒーロー。それからサイボーグはテクノロジーと人間の融合ですね。“テクノロジーは人を幸せにするか”を描くヒーローとして出て来ると思います。

スーパーマンは、もともとコミックでは宇宙から来た”移民”なんですけど、今の映画では“難民”として描いています。”難民”がどう生きていくのかということを一つの象徴として描いていくんだと思います。

そして、ワンダー・ウーマンが担うのは“女性”です。ダイバーシティの観点で、女性問題は大きな問題だと思うんですが、その中で正義を遂行していくというのがこのワンダー・ウーマン。

こういうメンバーのジャスティス・リーグなわけですが、アクションだけではなく深い社会性も描く映画になるんでしょう。」

『ローガン』に注目すべき理由

杉山さんは、その後DCドラマの魅力や、『ゴジラ』『キング・コング』の魅力をたっぷり語ったあと、2017年公開予定のマーベル映画の注目作として『ローガン』を紹介。こちらも日本語字幕付きの最新フッテージ映像が上映された。

本場サンディエゴのコミコンでもX-MENは大人気で、ウルヴァリンを始めとするミュータントのコスプレイヤーが沢山いたそうだ。『X-MEN : アポカリプス』のブースも盛況だったそう。そういえば、東京コミコンではX-MENキャラのコスプレはちょっと少なめだったかな?

「今回の『ローガン』は、X-MENのタイトルが付かないウルヴァリンの映画です。」

映画『デッドプール』でも、「時系列が混乱しちゃって」というジョークがあったように、映画X-MENユニバースはタイムラインが分かれている。

「X-MENの映画シリーズはご存知の通り”フューチャー&パスト事件”で時空列が変わっちゃったのでややこしいんですけど、まず『X-MEN』『X-MEN2』『X-MEN:ファイナル ディシジョン』がありました。『ファイナル ディシジョン』の世界の後にくるのが『ウルヴァリン:サムライ』です。その後に来るのが『X-MEN:フューチャー&パスト』。過去に戻ったミスティークがトラスクを殺さなかったので、それによって新しい時空列が生まれました。その後に『X-MEN:アポカリプス』があります。

この『ローガン』は、『X-MEN:アポカリプス』の世界の時系列です。僕の中では『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』だけはどこの時系列にも当てはまらないので、多分違う時系列だと思うんですけど…。

『X-MEN:アポカリプス』ではエンドクレジットの後に”あるシーン”があるんですけど、そこを観るとこの『ローガン』につながっていきます。」

『ローガン』には、予告編に登場したウルヴァリンことローガン、プロフェッサーXことチャールズ・エグゼビアほか、ミュータントの居場所をトラッキングできるという原作設定のカリバンと呼ばれるミュータントが登場する。

http://www.cheatsheet.com/entertainment/logan-everything-learned-from-first-trailer.html/?a=viewall

『ローガン』予告編映像より

「実はこのカリバン、役者は異なりますが、『X-MEN:アポカリプス』でサイロックと一緒につるんでたブローカーです。そのカリバンが『アポカリプス』から『ローガン』に繋がって登場してきます。」

『ローガン』一番のポイント

「やはり今回の『ローガン』一番のポイントは、この女の子でしょう」

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『ローガン』予告編映像より

杉山さんが紹介するのは、予告編でプロフェッサーXが「彼女は君(ローガン)によく似ている」と話している謎の少女だ。

「彼女の役名は不明だったのですが、『ローガン』の公式Facebookで彼女の役名が”ローラ”と紹介されています。X-MENの世界で”ローラ”と言えば”ローラ・キニー”しかいません。

ローラ・キニーとは誰かと言うと、X-23なんです。彼女は、ウルヴァリンの女クローン。二本の爪が腕から出て、脚から一本の爪が出るというミュータント。どうやらローラが出るという事は、このX-23がいよいよスクリーンデビューするのではないかと期待されています。X-MENバースも目が離せないですね。」

X-MENの世界は映画だけに留まらない。杉山さんは続いて、注目のTVドラマを紹介する。

「来年(2017年)、『レギオン』というTVシリーズが日本でも放送されます。これはX-MENをテーマにした初のTVドラマシリーズです。ただしX-MENとは謳っていないんですけど。」

このTVドラマ『レギオン』は、プロフェッサーXの息子デヴィッド・ハラーが主人公。統合失調症で、自分の能力が多重人格に分かれているというキャラクターだ。

『X-MEN』のスピンオフ・ドラマ『レギオン』あらすじ、予告編が公開!多重人格の精神世界を映像化

「どうやらレギオンのストーリーはX-MENとなんとなく繋がっているようなんですが、どう繋がっているかはわかりません。マルチバース、多元宇宙という設定か、違う時系列かもしれません。」

『ローガン』そして『レギオン』と、2017年もX-MEN関連シリーズは盛り上がりを見せてくれそうだ。

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杉山さんはほかにも、テクノロジーとポップカルチャーは共に進化している事、アメリカにおけるコミックブックがいかに技術的発展を遂げていったかをわかりやすく解説し、拍手の中で講演を終えられた。満席状態の客席では、杉山さんの愛と知識あふれるアメコミ解説を熱心に、興味深げに聞き入る姿が沢山見られた。幕張メッセの大きなステージで、アメコミの魅力が語れるとは、少し前の日本ではなかなか実現できなかったことではないだろうか。

【特別企画】杉山すぴ豊さん✕ORIVERcinema編集長『アメコミ・ヒーロー大考察』徹底対談!

About the author

インド旅行中、たまたま現地新聞に写真を撮られて掲載されるというミラクルを起こしました。持ってる男。THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。

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