『TENET テネット』高速海上レースも実写撮影 ─ イタリア&イギリスロケの舞台裏、ノーランと出演者が語る


最高速度で進むF50についていける船はないため、ノーランとホイテマは、通り過ぎるF50を追って撮影するためにヘリコプターをチャーター。IMAXカメラをアームに搭載したカメラ用ボートを使用し、さらにクローズアップショットやセリフのシーンを撮るべく、“バック”と呼ばれるF50のレプリカを組み立てて別の大きな船に繋いだ。ノーランとホイテマらが船からカメラを回し、俳優は“バック”の上で演じるなど、工夫を凝らした撮影が行われている。
F50のレースを撮影するにあたっては、実際のレースチームが参加。ノーランは「脚本ではアマルフィ海岸という設定ですが、チームは世界中を周っているので、捕まえられるところで捕まえるしかなかった」と語っている。
「最終的にチームと合流できたのはサウサンプトンのワイト島で、これは偶然にも、初めて私が(チームを)見た場所でした。『ダンケルク』(2017)を撮っていた時、ちょうどボートがセイリングしている真上から空撮していたんです。海面に浮かぶボートが印象に残り、“いつかボートの登場するストーリーをやってみよう”と。けれど、まさか同じロケ地で、同じチームのボートを撮ることになるとは思いませんでした。幸い、とてもうまくいきました。(設定とは)異なる場所での撮影でしたが、編集で違和感なく繋げています。」

ちなみにノーランは実写撮影にこだわるべく、本作のアクションシーンでは本物のジャンボジェット機を爆破。緻密な計画に基づいて撮影を実現したことで、かつてない迫力のあるシーンに仕上がった。グリーンバックに頼らず、実物の特殊効果を活用した実写撮影を好むことについて、ノーランはこう語る。
「俳優を撮影した映像と彼らの置かれた状況、そして非現実的な要素の境界線をあいまいにすることが好きなんです。飛行機がビルに衝突するシーンであれ、時間が歪む感覚であれ、空想的な描写と登場人物のリアルな描写の境目をなくすことで、映画全体に均一なトーンが生まれ、それが観客を没頭させることに繋がると思っています。」
こうしたノーランの姿勢には俳優陣も共鳴し、ジョン・デイビッド・ワシントンは「とにかくやる気が湧いてきた」と話している。「実際の環境にいること、すべてが実在することが演技のための情報源になるんです」。数々の映画・ドラマ・舞台に出演し、自身も映画監督を務めるケネス・ブラナーも「インカメラで撮ると、現場のエネルギーも確実に上がる。観客はそれを直感的に感じるのだと思います。スタントを間近に見ての撮影はとても迫力のある体験で、そういうところから違いは生まれるもの。クリスのアプローチのおかげで真に迫る演技ができ、ありがたく思っています」とノーラン流のアプローチの作用を語った。
〈時間〉から脱出して、世界を救え。名もなき男(ジョン・デイビッド・ワシントン)は、突然あるミッションを命じられた。それは、時間のルールから脱出し、第三次世界大戦から人類を救うというもの。キーワードは〈TENET テネット〉。名もなき男は、相棒(ロバート・パティンソン)と共に任務を遂行し、大いなる謎を解き明かす事が出来るのか……。
映画『TENET テネット』は2020年9月18日(金)全国ロードショー。
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