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『TENET テネット』高速海上レースも実写撮影 ─ イタリア&イギリスロケの舞台裏、ノーランと出演者が語る

TENET テネット
© 2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

クリストファー・ノーラン監督の最新作『TENET テネット』が2020年9月18日(金)に公開される。ノーランといえば、『ダークナイト』で本物のビルをまるごと爆破、『インセプション』で無重力をセットで作り、『インターステラー』ではトウモロコシ畑を一から栽培するなど、CGを最小限に抑え、なるべく実写撮影にこだわってきた人物。もちろん、そのこだわりは本作にも貫かれている。

『TENET テネット』で、作品のリアリティを担保するために重要だったのがロケ地だ。ノーラン自身、「この映画の国際性は物語にとって重要なもの。「世界全体、我々という存在にとっての脅威を描いているので、映画のテンポやスケールを演出するには世界規模の雰囲気が大切でした」と語る。本記事では、エストニア・イタリア・インド・デンマーク・ノルウェー・イギリス・アメリカの7ヶ国で行われた撮影から、イタリア&イギリスのエピソードをご紹介しよう。

TENET テネット
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イタリア・アマルフィ

イタリアのアマルフィ海岸の洋上で撮影されたのは、ケネス・ブラナー演じるアドレア・セイターが所有するスーパーヨットのシーンだ。このヨットは全長73メートル以上、6つのデッキ、さらに専用のヘリポートという豪華設備で、ケネスは「セイターがデザインし、作り上げた彼の宮殿」だと形容する。「セイターの逃げ場であり、隠れ家でもある。この船は世間に対する彼の態度がどういうものか、手がかりを与えてくれます。攻撃的でもあり、防御的でもある。すばらしい造形と構造をもつ船です」とも述べ、“表の顔は大富豪、裏の顔は武器商人”であるセイターを象徴する美術だと称賛を贈った。

ただし実際の撮影で使用されたヘリポートは、劇中に登場するロシア製Mi-8ツインタービン・ヘリコプターの重さに耐えられる構造ではなかった。そこで考え出されたのは、“ヘリコプターを着地させずにシーンを撮り終える方法”。東欧出身、救出ヘリのスペシャリストによって問題は解決されたという。製作総指揮のトーマス・ヘイスリップによれば「何度かテストして、撮影当日にはヘリをホバリングさせることに成功した」とのこと。「タイヤがヨットに乗っているように見えますが、実際には載っておらず、紙一重の差で浮いているんです。すごく正確な仕事でした」。

TENET テネット
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これらのシーンはベトナム沖が舞台だったが、運搬が困難なため、アマルフィ海岸をベトナム沖に見せる工夫がなされた。ノーランはイタリアでの撮影について、かつてその風景に心打たれたことを振り返っている。

「数年前にアマルフィ海岸沿いにあるラヴェッロの町を訪れたことがあり、“なぜここをもっと映画に登場させないんだ?”と思ったんです。信じられないほど壮観な光景で、カメラをどこに向けても、目を見張るほどの絶景をとらえることができる。海に面した崖に立ち並ぶ町には、自然の美と人工の美が独特の調和を見せていて、スパイ映画にとってはこの上なくエキゾチックな光景です。だから、数年前からあれこれと計画してきました。ボートの上で撮るシーンも多く、人混みの多い季節だったので段取りは大変でしたが、地元のクルーもとても協力的で、特別な体験になりました。」

イギリス・サウサンプトン

イギリスのサウサンプトンでは、セイターが所有する“空飛ぶ船”ともいうべき、最新式のF50フォイリングカタマランを駆使した撮影が行われた。帆の高さは24メートル、飛行機の翼に匹敵する硬さがあり、周囲の風を受けて推進力を作り出すのだ。2艇のレースシーンに参加したジョン・デイビッド・ワシントンは「強烈でしたよ、飛んでいるみたいで」と振り返る。「冗談だろ、と思ったけれど、ノーランとホイテ・ヴァン・ホイテマ(撮影監督)が紐で繋がれながら撮っているのを見て、僕が怖がることはできないなと思いました。彼らはどの瞬間も楽しんでいたし、実際にとても楽しかったですね」。

キャット役のエリザベス・デビッキも「船が海上に持ち上げられたとき、私たちは船の側面から吊るされていました。あんな感覚は初めてで、とても楽しかったけれど,ものすごく怖かった」とコメント。「だけど、それがノーラン作品の贈り物のひとつ。行ったことも、身を置いたことも、見たことさえない状況に放り込まれるんですよ」と興奮気味に語った。

TENET テネット
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最高速度で進むF50についていける船はないため、ノーランとホイテマは、通り過ぎるF50を追って撮影するためにヘリコプターをチャーター。IMAXカメラをアームに搭載したカメラ用ボートを使用し、さらにクローズアップショットやセリフのシーンを撮るべく、“バック”と呼ばれるF50のレプリカを組み立てて別の大きな船に繋いだ。ノーランとホイテマらが船からカメラを回し、俳優は“バック”の上で演じるなど、工夫を凝らした撮影が行われている。

F50のレースを撮影するにあたっては、実際のレースチームが参加。ノーランは「脚本ではアマルフィ海岸という設定ですが、チームは世界中を周っているので、捕まえられるところで捕まえるしかなかった」と語っている。

「最終的にチームと合流できたのはサウサンプトンのワイト島で、これは偶然にも、初めて私が(チームを)見た場所でした。『ダンケルク』(2017)を撮っていた時、ちょうどボートがセイリングしている真上から空撮していたんです。海面に浮かぶボートが印象に残り、“いつかボートの登場するストーリーをやってみよう”と。けれど、まさか同じロケ地で、同じチームのボートを撮ることになるとは思いませんでした。幸い、とてもうまくいきました。(設定とは)異なる場所での撮影でしたが、編集で違和感なく繋げています。」

TENET テネット
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ちなみにノーランは実写撮影にこだわるべく、本作のアクションシーンでは本物のジャンボジェット機を爆破。緻密な計画に基づいて撮影を実現したことで、かつてない迫力のあるシーンに仕上がった。グリーンバックに頼らず、実物の特殊効果を活用した実写撮影を好むことについて、ノーランはこう語る。

「俳優を撮影した映像と彼らの置かれた状況、そして非現実的な要素の境界線をあいまいにすることが好きなんです。飛行機がビルに衝突するシーンであれ、時間が歪む感覚であれ、空想的な描写と登場人物のリアルな描写の境目をなくすことで、映画全体に均一なトーンが生まれ、それが観客を没頭させることに繋がると思っています。」

こうしたノーランの姿勢には俳優陣も共鳴し、ジョン・デイビッド・ワシントンは「とにかくやる気が湧いてきた」と話している。「実際の環境にいること、すべてが実在することが演技のための情報源になるんです」。数々の映画・ドラマ・舞台に出演し、自身も映画監督を務めるケネス・ブラナーも「インカメラで撮ると、現場のエネルギーも確実に上がる。観客はそれを直感的に感じるのだと思います。スタントを間近に見ての撮影はとても迫力のある体験で、そういうところから違いは生まれるもの。クリスのアプローチのおかげで真に迫る演技ができ、ありがたく思っています」とノーラン流のアプローチの作用を語った。

〈時間〉から脱出して、世界を救え。名もなき男(ジョン・デイビッド・ワシントン)は、突然あるミッションを命じられた。それは、時間のルールから脱出し、第三次世界大戦から人類を救うというもの。キーワードは〈TENET テネット〉。名もなき男は、相棒(ロバート・パティンソン)と共に任務を遂行し、大いなる謎を解き明かす事が出来るのか……。

映画『TENET テネット』は2020年9月18日(金)全国ロードショー

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THE RIVER編集部THE RIVER

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