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『TENET テネット』物語を読み解く ─ 記者会見レポート、ノーランが語るコンセプトのルーツ

TENET テネット
Tenet c 2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

クリストファー・ノーラン監督の最新作TENET テネットが2020年9月18日(金)に公開される。これに先がけて、ノーランをはじめ、主演のジョン・デイビッド・ワシントン、ロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキ、ケネス・ブラナー、音楽のルドウィグ・ゴランソン、そしてプロデューサーのエマ・トーマスが参加した豪華記者会見が開催された。

THE RIVERでは、この会見の模様をテーマごとに整理して余すところなくお届け。第1回となる今回は「ストーリー編」として、監督クリストファー・ノーランが語る『TENET テネット』のコンセプトや背景、ノーランの妻でありプロデューサーのエマ・トーマスが脚本を受け取った際のエピソードなど、物語や作品の“始まり”にまつわるコメントをお届けする。

TENET テネット
© 2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

『TENET テネット』のコンセプト&ストーリー

── コンセプトはどのように生まれましたか? きっかけと構想期間を教えてください。

クリストファー・ノーラン:この映画に登場するイメージや仕掛けには、数十年前から考えていたものもあります。私の初期の作品をご存知なら分かることですが、たとえば『メメント』には、壁に撃ち込まれた銃弾が逆流して銃口に戻る場面がありました。それはあくまでもメタファーとしての描写でしたが、今回はそれを確固たる現実として描いています。だから、私が長いあいだ扱ってきたアイデアではあるわけです。スパイ映画というジャンルは、こういう奇妙な時間のコンセプトを、物語を通じて観客に語るためのもの。作業には6〜7年、ずいぶん時間がかかりましたね。

── 過去の作品でも時間の歪みを描いていますが、今回はさらに複雑な展開です。6~7年かけて作業されてきたとのことですが、その間、ストーリーや内容に変化はありましたか?

ノーラン:大きく変化しましたね。〈時間〉というコンセプトを描くため、スパイ映画というジャンルを選んだので、できる限り興味をそそるようなスパイ・ストーリーを練ることにその期間を費やしたのです。時間のコンセプトを説明し、かつ活かしながら、素直に楽しめるスリリングなアトラクションに仕上げる必要がありました。主人公と一緒に世界中を巡りながら豪華なアクションを味わってもらうというジャンルの造形と、〈時間〉というコンセプトを掛け合わせることが本当に重要だったんです。

TENET テネット
© 2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

── とても美しいロケ地がたくさん登場しますが、世界中での撮影は作品にどんな影響を与えましたか。

ノーラン:大スケールのエンターテイメントを作ろうとすると、実際にできることの限界や、自分の想像に対する現実的な制約にしょっちゅうぶつかります。けれどもロケ撮影に出てみると、現実の世界は広いし、すばらしいし、たくさんの可能性を提示してくれる。すると、二つの意味で現実逃避が可能になるのです。ひとつは観客が映画を観に行くこと。もうひとつは、普段の生活では絶対に行けないような、非常に美しい、あるいはとても危険な場所へと観客を連れて行くことです。

これらは観客の体験をとても豊かなものにできるし、物語をも満たしてくれるもの。クラシックなスパイ映画として、『TENET テネット』では全世界の脅威を描いています。世界各国の風景や、そこにいる人々を描くことで、この脅威が局地的なものではなく、世界全体のもの、とてつもなく大きなものだということを絶えず表現することができるのです。

── プロデューサーのエマ・トーマスに質問です。クリストファーから次回作のアイデアを聞いた時、たとえばスケール的に難しいことを要求される時、どのように反応するのでしょうか?

エマ・トーマス:完成した脚本を見せられる時は、いつも少し緊張します。どんなことが起こってもおかしくないから、一体どうなるのだろうと思うのです。だけど最初に脚本を読む時は、あくまでも映画として、「どんな体験を観客にもたらすのか」だけを考えて読むようにしていますね。その体験が分かれば、実際にどう作るかを考えようとするよりもスムーズな作業になります。彼にやりたいことがあり、そのスケールが大きい時には、それだけの理由があるもの。完成した映画を観て、観客がどんな体験をするのかを彼は考えているんです。創作の面でいえば、(ノーラン作品に)キャストやスタッフが楽をして作れるものはありません。それでも、全員にとって楽しいものなんです。

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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