『TENET テネット』物語を読み解く ─ 記者会見レポート、ノーランが語るコンセプトのルーツ


── 映画に刺激を与えた哲学者や思想はありますか。
ノーラン:えっと、正直に言うと、哲学や思想のことは、私よりもはるかに頭脳明晰な先人たちが考えつづけてきたわけなので……。どちらかというと、私は「ペンローズの階段」(を基にした『上昇と下降』)など、マウリッツ・エッシャーの作品からビジュアル面のインスピレーションを大きく受けています。脚本を書く時は図形で物事を考える傾向にあるので、時間のベクトルがどうなるのか、それらがどのように折り重なっていくのか、ということを図にしながら考えています。なので、脚本の主なインスピレーションはエッシャーと言えるでしょう。
── 「スパイ映画」といえば、最初に観たスパイ映画と、一番好きなスパイ映画は?
ノーラン:『007』シリーズで言うと、映画館で最初に観たのは『007 私を愛したスパイ』(1977)でした。主演はロジャー・ムーアですね。これは今でもお気に入りの一つで、あまり頻繁には観ないようにしているんですが、最近子供に見せたんですよ。自分が7歳の時、父親に連れられて映画館へ行ったことを思い出しましたね。
これは今でも大事にしていることですが、私はあの時、スクリーンにものすごい可能性を感じたんです。映画を観るということは、スクリーンを飛び越え、世界のどこへでもいけて、素晴らしい光景を目にすることなんだって。そこにはすごいスケールと可能性が広がっていて、完全に現実を離れることができたし、車が潜水艦になるとか、突飛な要素も楽しかった。私はキャリアの大半を、あの時の感覚を呼び覚まし、観客に与えることに費やしてきたように思います。映画に何ができるのか、みなさんをどこへ連れて行けるのか、その可能性を感じてもらいたいのです。
〈時間〉から脱出して、世界を救え。名もなき男(ジョン・デイビッド・ワシントン)は、突然あるミッションを命じられた。それは、時間のルールから脱出し、第三次世界大戦から人類を救うというもの。キーワードは〈TENET テネット〉。名もなき男は、相棒(ロバート・パティンソン)と共に任務を遂行し、大いなる謎を解き明かす事が出来るのか……。
映画『TENET テネット』は2020年9月18日(金)全国ロードショー。
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