ドウェイン・ジョンソン『The Smashing Machine』レビュー ─ ロック様の脱・「筋肉頼みの役」、日本シーンも多数登場

(カナダ・トロントから現地レポート)今年で50周年を迎えるトロント国際映画祭(以下、TIFF)。アカデミー賞の前哨戦とも言われるこの映画祭で、ドウェイン・ジョンソン主演、A24製作の『The Smashing Machine(原題)』がプレミア上映された。日本のファンも注目のこの絶賛作を、日本の媒体最速でレビューする。
実在するMMA(総合格闘技)選手マーク・ケアーのキャリアと葛藤に迫った伝記映画。2002年のドキュメンタリー『The Smashing Machine: The Life and Times of Extreme Fighter Mark Kerr』をベースにしている。マークの恋人ドーン・ステイプルスを演じるのはエミリー・ブラント。ジョンソンとブラントは『ジャングル・クルーズ』(2021)以来の二度目の共演となる。さらにマークが日本で活躍していたこともあり、日本を舞台にしたシーンも多数登場。布袋寅泰、石井慧ら日本人キャストも出演している。
物語は1997年、ブラジルでの初のMMA大会から始まる。レスリング出身のマーク・ケアー(ジョンソン)は圧倒的な強さを見せ、一躍注目の存在に。やがて「Smashing Machine」という異名で恐れられるが、試合の痛みを和らげるために処方鎮痛剤を使い始め、依存に苦しむようになる。恋人ドーン(ブラント)は必死に彼を支えようとするが、極限まで自分を追い込むマークとの関係は次第に不安定になっていく。
本作は1997年から2000年までのマークのキャリアを中心に描き、ライバルや仲間との関係も見どころ。マーク・コールマン役を演じるライアン・ベイダー、イゴール・ヴォヴチャンチ役のオケクサンドル・ウシル、そしてバス・ルッテンが本人役で出演する。
ジョンソンといえば、『ジュマンジ』シリーズや『ワイルド・スピード』シリーズなど、どこか“ドウェインらしさ”を残した役が多かった。しかし本作ではそのイメージを封印。入念のボイストレーニングで柔らかい声を習得し、アカデミー賞でメイクアップ&ヘアスタイリング賞を日本人ではじめて受賞したカズ・ヒロによるメイクで大きく変貌。さらにマークの繊細で優しい内面も丁寧に演じている。

TIFFにて行われたトークイベントでジョンソンは、ハリウッド初期は筋肉頼みの役ばかりだったと振り返り、「本当に自分の夢を生きているのか、それとも他人の夢を生きているのか」と問い直すようになったと明かした。その上で「『The Smashing Machine』は自分のための映画です」と強調する。
映画の見どころは、迫力ある試合シーンだけではない。マークとドーンのやり取りも注目だ。同トークイベントでは途中で監督のベニー・サフディとともにエミリー・ブラントがサプライズ登場。ブラントは「『ジャングル・クルーズ』の共演中に、ドウェインと魂を共有した瞬間がありました」と語り、彼の優しさに感銘を受けたと明かした。二人の信頼関係があったからこそ、カップルの脆く有害な関係性をリアルに描けた、とも。そんな2人の二人の深層心理を、『アンカット・ダイヤモンド』(2019)などでも知られるサフディ監督が手持ちカメラによる独自の映像表現で深く描き出している。
ちなみに、同トークイベントでは、ジョンソンの新作映画の話題も。監督ベニー・サフディと再び組み、ダニエル・ピンクウォーターの小説『Lizard Music(原題)』を原作にした映画を製作中と明かした。詳細は伏せつつも、彼が演じるのは「チキンマン」と呼ばれる70代の風変わりなおじいさんで、親友はなんと鶏だと明かした。最近ジョンソンの減量した姿が注目を集めていたが、彼自身は「また変身できるのが楽しみだ」と話した。
なお、Rotten Tomatoesでの批評家スコアは、9月14日時点で79%を記録。『The Smashing Machine(原題)』は2025年10月3日、米国公開予定だ。
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