『マイティ・ソー』クリス・ヘムズワース&トム・ヒドルストンの起用、マーベル空前絶後の一大事だった

映画『マイティ・ソー』(2011)は、製作当時、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のカギを握る作品だったことで知られる。本作は『アイアンマン』シリーズと『インクレディブル・ハルク』(2008)からなる地球の物語を、ユニバースの“宇宙”に繋げなければならなかったのだ。監督を務めたケネス・ブラナーは、「虹の橋が出てくる『マイティ・ソー』は、いわば作風の橋として重要な作品だった」と振り返る。
もちろん、その重責を担ったのは監督だけではなかった。ブラナーとマーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長は、キーパーソンであるソー役のクリス・ヘムズワース、ロキ役のトム・ヒドルストンのキャスティングに大いに葛藤したという。米Colliderにて明かしている。
「あの2人(クリス&トム)に決めた時のことは絶対に忘れませんよ。まるで瞑想や呪文みたいに、ケヴィン・ファイギが長い楕円のテーブルの周りを、ずっとぐるぐる回るしかなくなってて。土曜日の朝でした。」
この時、ブラナーはファイギ社長に「二人に電話すべき」と言い続けては、「本当にそう思う?」と問い返され、「ええ、電話すべきです」と答えていたのだそう。それくらい、マーベルにとってクリス&トムの起用は一大事だったのだ。
「僕にも、これがとても重大な決断だということは分かっていました。ケヴィンには“土曜の朝10時半、あなたがクリス・ヘムズワースとトム・ヒドルストンに電話をかける。この会社にとって、これ以上大きな決断はもう二度とありません”と言われたんです。“成功しても失敗してもそれは同じ、だから頑張ってください”って。」

いまや、クリスとトムはハリウッドでも名を馳せるスター俳優となり、ソーとロキもともに絶大なる人気を得ている。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)を経ても、『マイティ・ソー』シリーズは第4作『マイティ・ソー/ラブ&サンダー(原題)』への継続が決定し、ロキの単独ドラマ「ロキ(原題)」も製作中だ。しかしながらキャスティング当時、クリスとトムは映画界で引く手あまたの人気俳優とは言えない状態だったのだ。
2016年、トムは『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)の撮影を控え、ドクター・ストレンジ役の盟友ベネディクト・カンバーバッチを相手に「一番良いのはクリスとまた仕事ができること」だと明かしていた。「最初にクリスと会ったのは2009年、ケネス・ブラナーの家だった。あの時は二人とも子ども同然で、演技の道を歩み始めたばかり。すぐに仲良くなって、それから一緒にマーベルでとんでもない旅を続けてる感じ」。二人の信頼関係は、映画を観ていても十分にうかがい知れるところであろう。
ともあれ『マイティ・ソー』当時、クリスとトムに白羽の矢を立てたケネス・ブラナーとマーベル・スタジオの目は確かだった。のちにブラナーは『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)冒頭シーンに声のカメオ出演を果たしているが、自分の出番が2人の登場に繋がることを受け、「トムやクリスのことはよく知っているし、二人とは強い絆を感じていますから」と喜んでいる。
Sources: Collider, Interview Magazine