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『サンダーボルツ*』人が消えて影になる映像描写に広島からの影響

サンダーボルツ*
(L-R): Ghost (Hannah John-Kamen), Taskmaster (Olga Kurylenko), John Walker (Wyatt Russell), Bucky Barnes (Sebastian Stan), Alexei Shostakov/Red Guardian (David Harbour), and Yelena Belova (Florence Pugh) in Marvel Studios' THUNDERBOLTS*. Photo courtesy of Marvel Studios. © 2024 MARVEL.

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)『サンダーボルツ*』の劇中では、脅威として登場するヴォイドが人々を一瞬にして“影”に変えてしまう描写がある。この映像化にあたっては、広島原爆によって生じた「死の人影」の影響があるという。監督のジェイク・シュライアーが米Colliderのインタビューにて明かしている。

予め補足しておくと、筆者は本作『サンダーボルツ*』全編を鑑賞した上で、ヴォイドによる“影”の描写には、「死の人影」を視覚的に参照した意図以上の他意は全く感じられなかった。あくまでも映像表現の一環としての着想の話題である。

映画『サンダーボルツ*』に登場するヴォイドとは、謎の気弱な青年ボブの別の姿だ。原作コミックと同様、ボブはアベンジャーズ全員よりも強力な究極のヒーロー、セントリーとして覚醒する。しかし、その不安定な精神には闇の人格ヴォイドが潜んでいる。映画の中でヴォイドは街を襲い、逃げ惑う人々に手を掲げただけで全てを影に変えてしまう。これは映画の予告編映像でも確認できる。

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この恐ろしい映像表現について、シュライアーは長いリサーチの賜物だと米Colliderに話している。着想元は『ヘレディタリー/継承』(2018)「BEEF/ビーフ」(2023)『パスト ライブス/再会』(2023)などでもプロダクションデザインを手がけたグレース・ユンが持ち寄った参考資料。「そこには広島や、あの影の画像がありました」とシュライアーは認めている。

広島の原爆投下の際、銀行の階段に腰掛けていた人が強烈な熱線を浴び、その場に“影”のように焼き付いた「死の人影」(または「人影の石」)は世界的に知られる痛ましい遺構である。

インタビュー内でシュライアーが語ったのは、この「影」のイメージが着想源のひとつだったという事実のみであり、以降の発言では視覚効果制作会社の仕事を称賛する内容へと移っている。

マーベル・スタジオは広島原爆という史実について慎重で自戒的である。映画『エターナルズ』(2021)では、歴史の裏に存在したヒーローが1945年の広島に現れ、悲惨な焼け野原に絶句する場面がある。

念のために改めるが、『サンダーボルツ*』において原爆を題材とした描写や言及は一切存在しない。これはあくまでも制作陣のビジュアルリサーチ過程における一エピソードである。

映画『サンダーボルツ*』は2025年5月2日、日米同時公開。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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