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『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』ルーク・スカイウォーカーはどこへ行く ― マーク・ハミル、34年ぶりのシリーズ本格復帰

©Walt Disney Studios Motion Pictures ©2017 & TM Lucasfilm Ltd. 写真:ゼータ イメージ

映画『スター・ウォーズ』オリジナル3部作とは、自らの出自と能力を知らない少年ルーク・スカイウォーカーが、その力を覚醒させ、成長しながら自分の運命と対峙していく物語だった。『エピソード6/ジェダイの帰還』(1983)で帝国軍を打ち破り、父親であるダース・ベイダーを葬った彼は、それからどんな人生を送っていたのだろうか。

32年ぶりの続編だった『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)で、世界中の観客はハン・ソロ(ハリソン・フォード)とレイア・オーガナ(キャリー・フィッシャー)のその後を知った。しかしそのラストシーンまで、かつての主人公ルークはその姿を見せなかったのである。私たちはまだ、“その後”のルーク・スカイウォーカーを知らない……。

注意

この記事には、『スター・ウォーズ』実写映画各作品の内容が含まれています。

少年はいかにして大人になったか

『エピソード3/シスの復讐』(2005)の結末で、ダークサイドに堕ちたジェダイの騎士アナキン・スカイウォーカーが師匠のオビ=ワン・ケノービに倒されたあと、その妻パドメ・アミダラは双子を出産している。のちに真のジェダイの騎士となるルーク・スカイウォーカー、またのちに帝国軍との戦いを導く女王となるレイア・オーガナである。
パドメは二人を産み落とすと息絶えるが、銀河帝国の皇帝パルパティーンはジェダイの血を引くルークとレイアを狙っていた。そこでオビ=ワンとジェダイ・マスターのヨーダは、ルークとレイアを別々の場所で育てることにしたのだ。ルークはアナキンの親類である惑星タトゥイーンのラーズ夫妻に預けられる。妹の存在も、死んだと聞かされていた父親の素性も、その頃の彼は知る由もない。

そんな日々に変化が訪れるのは、『エピソード4/新たなる希望』(1977)でラーズ夫妻がC-3PO、R2-D2を購入したことがきっかけだった。R2-D2に入っていた映像データにオビ=ワンへのメッセージが入っていたことをきっかけに、郊外の老人ベン・ケノービがジェダイの騎士であることを知るのである。ルークは父の形見であるライトセーバーを渡され、反乱同盟軍に入るよう誘われるのだった。帝国軍によって育ての両親を奪われたルークは、父親と同じくジェダイの騎士になることを願って、R2-D2に託されていた帝国軍の兵器「デス・スター」の設計図を惑星オルデランへと届ける作戦へと参加することになる。
密輸業者のハン・ソロと出会い、デス・スターからオルデランの女王レイア・オーガナを救出したルークは、設計図にもとづきデス・スターの弱点を急襲する「ヤヴィンの戦い」に挑む。ダース・ベイダーの追撃をかわし、フォースの力を駆使して任務を全うしたルークは、無事に帰還するとレイアから勲章を受け、反乱軍の英雄として認められるのだった。

スター・ウォーズ
©Twentieth Century-Fox Film Corporation Photographer: John Jay 写真:ゼータ イメージ

しかし『エピソード5/帝国の逆襲』(1980)で、ルークは自身の出自にとうとう対峙する。デス・スターを破壊されてもなお強力な帝国軍によって反乱軍は苦境を味わい、氷の惑星ホスに基地を構えていた。しかし帝国軍の攻撃に耐えきれず、ついに「ホスの戦い」でルークは敗走する。オビ=ワンの霊体に助言を受けた彼は、惑星ダゴバにてヨーダによる本格的な修行を受けるのだった。しかしフォースを通じてハンとレイアに危機が迫っていることを悟ったルークは、修行も終わらぬまま飛び出して行ってしまう。
ハンとレイアのいるクラウド・シティでは、ベイダーがルークの到着を待ち構えていた。ベイダーとの一騎打ちに敗れたルークは、右腕を切り落とされて父親の形見であるライトセーバーを失ってしまう。しかもそこで彼は、自分の腕を斬ったベイダーこそが父親アナキンであるという事実を聞かされる。自らの仇と父子だったという事実、そしてフォースのダークサイドへの誘いを拒んだルークはクラウド・シティの排気シャフトへと落ちていく。その後ミレニアム・ファルコン号によって救われたルークは、失った右腕に機械の義手を装着するのだった。

『エピソード6/ジェダイの帰還』で、ルークはベイダーへの敗北を受けてタトゥイーンにあるオビ=ワンの家にこもり、新たなライトセーバーを作って修行の日々を送っていた。『帝国の逆襲』でジャバ・ザ・ハットのもとへさらわれたハン・ソロは未だ救出されず、仲間からの連絡もなくなっていた。ジャバの宮殿へ赴いたルークが目撃したのは奴隷となったレイアの姿、しかもジャバの手によって彼も捕らわれの身になってしまう。ハンとともに処刑を宣告されるルークだったが、処刑間際にR2-D2からライトセーバーを受け取り、驚くべき手際でジャバの手下やボバ・フェットらを倒すのだった。
その後、帝国軍の「第2デス・スター」破壊のため反乱軍へと再合流したルークは、父であるベイダーを自分が救えるのではないかと信じていた。彼はレイアに自分たちが兄妹であること、父親がベイダーであることを告げると、帝国軍へと自ら飛び込んでベイダーを説得しようとする。しかしその説得もむなしく、皇帝パルパティーン/ダース・シディアスによってルークはダークサイドへと再び誘われ、しかも「第2デス・スター破壊作戦」が反乱軍を壊滅させる罠だと知らされるのだった。仲間が危機に瀕する中、ルークにはダークサイドの源である怒りがこみ上げてくる。シディアスに襲いかかるルークとダース・ベイダーがライトセーバーを交える中、ルークは怒りにまかせて父の右腕を切り落とすのだった。ルークはダークサイドへと接近していくが、やがて自分自身を取り戻し、ダークサイドには加わらないと宣言する。もはや帝国軍の脅威となったルークはシディアスによって追い込まれ、ついに父親へ助けを求める。最後にアナキンとしての自分を取り戻したベイダーは、シディアスをデス・スターの反応炉へと投げ落とすのだった。マスクを外し、息子と対面して穏やかに息を引き取ったベイダーとともに、ルークは崩壊を始めたデス・スターから脱出する。反乱軍が勝利を祝う中、彼は父の遺骸とマスク、鎧を火葬するのだった……。

スター・ウォーズ ルーク・スカイウォーカー

その後のルークに何があったのか

かくして銀河に平和を取り戻したはずのルークだったが、『フォースの覚醒』では空白の期間に起こった衝撃の事実が語られる。ルークはジェダイ再興のため、新たなジェダイの騎士を鍛える側に回っていたはずが、ハンとレイアの間に生まれた息子、すなわちルークの甥であるベン・ソロを弟子に加えたことからすべてが狂ってしまったのだ。帝国軍の残党によって始動したファースト・オーダーの最高指導者スノークに心酔したベンは、カイロ・レンと名乗ってダークサイドに身を置き、ルークの弟子たちを虐殺してしまったのである。自身の責任を強く問うたルークは、最初のジェダイ寺院を求めて姿を消したのだった。
『フォースの覚醒』のラストでルークの居場所が明らかになったあと、かつて彼が失ったライトセーバーを手に惑星アク=トゥーを訪れたのは、新たなフォースの能力者であるレイだった。

『スター・ウォーズ』オリジナル3部作でルークが向き合ったのは、思わぬ出自と能力を持つ自分自身、そして悪の道に落ちてしまった父親だ。その途中でルークは感情に走り、あわや自らもダークサイドへと引き込まれそうになっている。しかしルークは、結局は自分の意志によって脅威を克服し、父親との葛藤も解消するに至っているのだ。
こうしてみると、『フォースの覚醒』から始まった新3部作の悪役であるカイロ・レンは“ルークになりそびれた男”だといっても過言ではないだろう。スノークの、ダークサイドの誘惑に屈したのみならず、父親との葛藤を真っ当に解消しないままにハンを葬ってしまったのである。このねじれが『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』そして『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』でどういう意味を持つのかはまだわからない。

しかしベン・ソロ/カイロ・レンによる虐殺事件は、ルークにとって『ジェダイの帰還』から『最後のジェダイ』までに起こった出来事の「ほんの一部」であるという。34年ぶりの本格再登板となるマーク・ハミルは、『最後のジェダイ』に登場するルークが「多くの出来事を経験し、大きく変わった」存在だと述べて、本作で「見たこともないルーク」が現れることを明らかにしている
ルーカスフィルムは未知のルーク・スカイウォーカーを求め、また脚本・監督のライアン・ジョンソン監督はそれに応えるかのように、マークにも予想がつかなかったほどのルーク像を提示したというのだ。そして、そんなルークを演じることはマークにとって「チャレンジだった」という……。

予告映像が公開され、ルークの写真やプロモーション素材が発表されるにつれ、ファンの間ではある懸念が持ち上がっている。それは「ついにルークがダークサイドに落ちてしまうのではないか」というものだ。果たして、空白の時間に一体何があったのか、そしてルークはどこに向かっていくのか、何が目的なのか……。ファンたちの予想合戦は白熱する一方だが、当のマークは飄々として仮説の数々を煙に巻いている。

「“ヴィランはポスターの後ろにそびえている”という仮説を立てているみんなに速報:ルークは常にヴィランだった!(あるひとつの視点から見れば)

マーク・ハミル、堂々の大作カムバック

スター・ウォーズ/フォースの覚醒
写真:ゼータ イメージ

ところでルークを演じるマーク・ハミルという俳優にとって、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は堂々の大作カムバックというべき作品だ。1977年に『スター・ウォーズ/エピソード4 新たなる希望』で映画デビューを果たした彼は、オリジナル3部作の完結後、実写作品の俳優としてはやや厳しいキャリアを送っている。誰もが知る大作映画で誰もが知る役柄を務めあげたにもかかわらず、長らくB級SF映画やビデオ映画への出演が主で、近年は『SUSHI GIRL』(2012)や『キングスマン』(2015)が珍しく日本公開されたような状況だったのだ。

しかしマークは、それでもルーク・スカイウォーカーと同等の当たり役で知られる人物である。米国では実写作品以上に声優として名を馳せており、DCコミックス作品を原作としたアニメ作品では『バットマン』などに登場する有名ヴィラン・ジョーカーを1992年から演じつづけているのだ。実写映画ではジャック・ニコルソンやヒース・レジャー、ジャレッド・レトが演じたキャラクターだが、アニメの世界ではマークが長年にわたって絶大な人気を獲得している。
そのほかマークは、『スパイダーマン』をはじめとしたマーベル・コミックス原作のアニメ、『トムとジェリー』や『スクービー・ドゥー』など数え切れないほどの作品で声優を務めてきた。宮崎駿監督作品『天空の城ラピュタ』(1986)の英語版でムスカ役を、ゲーム『龍が如く』(2005)の英語版で真島吾朗役を演じるなど日本発の作品にも縁が深い。

34年ぶりの『スター・ウォーズ』本格復帰にして大作映画への復活を果たすマーク・ハミルは、34年ぶんの蓄積を経て、従来の『スター・ウォーズ』ファンに驚きを与えてくれるに違いない。これまでのルーク・スカイウォーカーとは違うという人物像をいかなる演技で見せてくれるのか、今はまったく予想がつかないだけに非常に楽しみだ。
ちなみにマーク自身は、『フォースの覚醒』『最後のジェダイ』で惑星アク=トゥーのロケ地として使われた孤島スケリッグ・マイケルを訪れた際の感慨をこんなふうに語っている

「スケリッグ・マイケルの一番頂上に立った時、『スター・ウォーズ』第1作をやった時のような感覚に襲われたのを覚えています。自分というものが消えていき、ただ日が沈んでいって、上ってきたゴツゴツした岩場があって。“すごい、まるで別の世界だ”って。」

映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は2017年12月15日より全国ロードショー
きっと世界中の観客が、ルーク・スカイウォーカーというキャラクターと出会い直すことになる。

©Walt Disney Studios Motion Pictures ©2017 & TM Lucasfilm Ltd. 写真:ゼータ イメージ

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。