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『マトリックス レザレクションズ』製作会社、米ワーナーを訴訟 ─ 火種は劇場&配信の同時リリース

マトリックス レザレクションズ
©2021 WARNER BROS. ALL RIGHTS RESERVED

米製作会社Village Roadshowが、映画『マトリックス レザレクションズ』を巡る契約不履行を理由に、配給の米ワーナー・ブラザースに対して訴訟を起こしたことがわかった。現地時間2022年2月7日、同社はロサンゼルス郡上級裁判所に50ページに及ぶ訴状を提出した。

Village Roadshow社は、『マトリックス』『オーシャンズ』シリーズや『ジョーカー』(2019)といったワーナーの大ヒット作品を手掛けてきた製作会社で、両者は長きにわたってパートナーシップ関係を維持してきた。しかし、2020年にワーナーが発表した自社の映画作品における劇場&HBO Maxの同時公開戦略が火種となり、このたびの『マトリックス レザレクションズ』の訴訟へと繋がることとなった。

2020年12月、ワーナーはコロナ禍の情勢を踏まえて、『マトリックス レザレクションズ』『ゴジラvsコング』『モータル・コンバット』『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』『DUNE/デューン 砂の惑星』といった2021年の映画作品全17作を独自の配信サービスHBO Maxで劇場公開と同時にリリースする“プロジェクト・ポップコーン(Project Popcorn)”という戦略を発表。この決定には各所から批判の声が上がり、クリストファー・ノーランやドゥニ・ヴィルヌーヴ、ジェームズ・ガンといった監督たちが抗議の声明を出し、『ゴジラvsコング』『DUNE/デューン』を手掛けた米製作会社レジェンダリー・ピクチャーズに至っては訴訟に踏み切る可能性も伝えられていた(後に両者は合意に至った)。

このたびのVillage Roadshow社による訴えは、同時リリースによってもたらされた“結果”に焦点を当てている。同社は訴状を通して、『マトリックス レザレクションズ』の公開形式が変更されたことにより、劇場での興収パフォーマンスに大きな影響が生じたと主張。本作の公開は2022年4月まで延期されていたが、最終的に2021年12月に繰り上げとなっていた。Village Roadshow社は、この公開日の前倒しに疑念を抱いており、「ワーナー・ブラザースは、それが映画の興行収入を縮小させたり、Village Roadshowのいかなる財政的状況を上昇させる機会を剥奪したり、そして自社と系列組織だけが享受したりしていることを熟知しながら、HBO Maxのプレミアム登録の年末需要を生み出すために、大作である『マトリックス レザレクションズ』の公開日を早めた」と訴えている。なお、ワーナーは2022年公開の映画作品については、劇場での独占公開という従来の方針に戻している

元々、『マトリックス レザレクションズ』のラナ・ウォシャウスキー監督は、劇場での独占公開にこだわっていたことが判明しており、製作側にとって同日リリースは苦渋の選択であったと見られる。映画が公開されるや、劇場での興行成績は思うように振るわず、 アメリカ国内では本記事掲載時点までの累計で、1週前に公開された『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の7億5,000万ドルの5%にも満たない3,700万ドルという結果に。また、グローバル興収についても累計1億5,300万ドルに留まり、『マトリックス』3部作の中で最も成績が良い『マトリックス リローデッド』(2003)と比較して7分の1程となっている。訴状では、配信リリースが海賊版の流通を助長し、興行成績に悪影響をもたらしたと述べられており、さらにはHBO Max上で生み出された収益をVillage Roadshow社は一切受け取っていないことも記されている。

一連の因果を踏まえた上で、Village Roadshow社は「財政的な理由によりこれ以上のシリーズ継続が見込めなくなった為、『マトリックス』フランチャイズの価値が低下した」と主張した。これを受け、ワーナー側も声明を発表。「これは、Village Roadshowが契約上の責任を免れるために行った軽率な行為」「本件については、間違いなく弊社にとって有利に解決されるでしょう」と訴えを一蹴した。

映画業界において、コロナ禍での変化に伴う訴訟が頻発している。本件についても今後の動向が待たれるところだ。

Source: THR,Variety,Deadline

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。