『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』公開延期で3000万ドル以上の損失か

『007』 シリーズ最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の世界公開が2020年4月から約7ヶ月先の11月に延期された。製作スタジオへの経済的な打撃も大きいようだ。
米The Hollywood Reporterによれば、この度の延期によるMGMの損失は3,000〜5,000万ドル(約31.7~52.9億円=1ドル106円)にも及ぶという。一大市場となる中国では、新型コロナウイルスの影響で1月より約70,000館の映画館が閉鎖されており、上映再開の目処は立っていない状況。前作『007 スペクター』(2015)の世界興行収入8億8,100万ドルのうち約10%(金額にして8,400万ドル)を中国が占めたというから、「経済的事情を考慮した結果の公開延期」という製作陣の判断も納得だ。予定通り4月に公開されていた場合、見込み最終興行収入の30%以上、金額にして3億ドル(約315億円)以上が失われる可能性があったと算出されている。
クレイグにとって最後のジェームズ・ボンド映画となる本作では、プロモーションに力が注がれていたようで、2月に開催された「第54回スーパーボウル」での新映像公開には450万ドル(約4億7,000万円)の費用が投入されたという。なお、北京やロンドンで予定していたワールドプレミアは中止となっていた。
公開延期に伴う影響は、映画スタジオだけでなく、本作とのコラボレーション商品を展開する企業にも及んでいる。『007』特別版腕時計を展開する大手時計ブランドのオメガやスウォッチでは、すでに店頭販売が開始されているため、販売を継続する。一方、ロンドンに拠点を置くニットウェアブランドN.Pealは、劇中でジェームズ・ボンドが着用するものと同モデルのセーターの先行注文を開始する予定だったが、発売は11月の公開に合わせて延期した。同ブランドは、3月5日の公開延期発表まで、延期の事実を知らされていなかったというから、刻一刻と状況が変動する現場の混乱ぶりが伺える。
新たな公開時期となる11月は、新しく放送開始されるTVシリーズなどの影響もあり、春シーズンよりも放送広告費が高騰するのだそう。同時期にディズニー/マーベル新作映画『エターナルズ(原題:Eternals)』や『ゴジラVSコング(原題:Godzilla vs. Kong )』といった注目作が公開を控えていることも高騰の一因となっている。広告枠をめぐって他スタジオと争うことにもなり、MGMは予算を増額してプロモーション活動を行っていくという。
本作でプロデューサーを務めるバーバラ・ブロッコリは、「公共の場の安全、世界の安全を考慮した判断は正しいと思います」とコメントしている。
▼ 新型コロナウイルスの影響
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Source:THR