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【解説】製作費120億円のDC映画『バットガール』お蔵入り、撮影済みにも関わらず

バットガール
※画像はイメージです Photo by Ed's Toy Box https://www.flickr.com/photos/edwicks_toybox/21517087693/ Remixed by THE RIVER

異例のニュースだ。DCの新作映画として進行していた『バットガール(原題:Batgirl)』が、既に撮影を完了させていたにも関わらず、リリースを中止してお蔵入りとなることがわかった。米The Wrapなど複数が伝えている。

本作は、ゴッサム・シティのジェームズ・ゴードン警察長官の娘、バーバラ・ゴードン/バットガールを描く単独作品で、当初は米HBO Max配信作品として、その後は劇場公開が検討されていたものだった。

このニュースは、既に大規模な製作費をかけて撮影していた企画をキャンセルしたという点で前代未聞。撮影は2022年3月末ですでに完了していた。製作予算は7,000万ドルとされていたが、コロナ禍による撮影中断に見舞われ、最終的には9,000万ドルに膨らんだという。つまり米ワーナーは、約120億円(1ドル134円)のプロジェクトを、日の目も浴びさせることなく“損切り”に踏み切ったことになる。

報じられるところによると、度重なる再撮影や予算増の結果、作品が「うまくいかなかった」ためとされる。とはいえ、背景には現在ワーナーが推進する社内企画の抜本的改革があると見られる。米ワーナーメディア事業統合による新会社のCEOにして“仕分け人”デヴィッド・ザスラフ率いる幹部らは、これまでのDC作品は一貫性に欠けブランド戦略に乏しいと見ており、企画を続々見直した。その影響か、ドラマ「レジェンド・オブ・トゥモロー」「BATWOMAN/バットウーマン」を打ち切ったほか、DC以外の作品にもメスを入れていた。

結果としてお蔵入りとなった『バットガール』はどのような作品になるはずだったか。主演は『イン・ザ・ハイツ』(2021)で脚光を浴びたレスリー・グレース。監督は『バッドボーイズ フォーライフ』(2020)のアディル・エル・アルビ&ビラル・ファラー。撮影現場からは何度か楽しげな写真が投稿されており、撮影終了時にはアディルが「素晴らしい経験ができた!この映画をネクストレベルに押し上げてくれた素晴らしいクルーやキャストに感謝!みんな、楽しみにしてて!」と投稿していた。

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さらに、『ジャスティス・リーグ』(2017)からJ・K・シモンズがジェームズ・ゴードン役として重要なポジションで続投していたほか、ティム・バートン版でバットマンを演じたマイケル・キートン再登場することになっていた。つまり本作は、現行DC映画シリーズと過去の『バットマン』映画シリーズがクロスオーバーを果たす作品でもあったのだ。

ヴィラン役には『ハムナプトラ』シリーズで知られるブレンダン・フレイザー起用されていた。フレイザーは「ファイヤーフライ」と呼ばれるバットマンの宿敵を演じることとなっていた。フレイザーのDC作品出演は、別キャラクターを演じた「TITANS/タイタンズ」(2018-)「ドゥーム・パトロール」(2019-)に続き3度目になるはずだった。

DC実写映画初のトランスジェンダー・キャラクターが登場するという注目もあったほか、有色女性が主人公であるという点で、マーベルの「ミズ・マーベル」と比較する楽しみも見出されていた。実はアディル&ビラル監督コンビは「ミズ・マーベル」でもエピソード監督を手掛けており、その経験が『バットガール』に活かされていると公言。「ミズ・マーベルは10代でカラフルな世界観だけど、『バットガール』は大人の女性。仕事もあるし、それにゴッサム・シティに暮らしている。だからちょっとダークなんです」と話していた

これまでであれば、「劇場公開は断念したが、配信リリースで望みが叶う」というケースもあった。ところが今回は、配信リリースそのものを見送ったという格好。『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』時のような署名活動が起こったとしても、現在のワーナー幹部陣がいかほど聞き入れるかはわからない。

なぜワーナーは撮影を済ませた『バットガール』を葬ったのか?米The Hollywood Reporterによるとワーナー側は、ストリーミング配信用に製作された大予算映画について、同社の新戦略の下ではもはや財政的な意味をなさないと見ている模様。一方The Wrapによると、幹部らは本作の監督と主演キャストへは好感を示しており、今後の再起用を積極的に計画しているという。(続報はこちら

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Source:The Wrap,Deadline,The Hollywood Reporter

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。