『キャプテン・アメリカ:BNW』の前に観ておくマーベル作品はある?

“スーパーヒーロー疲れ”が叫ばれた後、マーベル・スタジオは新生キャプテン・アメリカの単独デビュー映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』を公開する(2025年2月14日)。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)でスティーブ・ロジャースに盾を託されたファルコン/サム・ウィルソンの物語だ。彼がキャプテン・アメリカの座を受け継ぐにあたっての葛藤は、ディズニープラスのドラマ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」で描かれている。

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022)では、ドラマ「ワンダヴィジョン」から継続した物語が描かれた。2021年より開始されたディズニープラスでのドラマ作品の内容がついに劇場版に接続される瞬間となったが、むろんドラマ版未視聴のファンは混乱しただろう。全てのファンがディズニープラスに加入しているわけではないことを、スタジオも理解しているはずである。「独立した物語として楽しんでもらうように作られています」と、ケヴィン・ファイギは少し前に話している。「接続性というのはボーナスです」。
しかし実際には、それぞれの重要度はどうあれ、『ブレイブ・ニュー・ワールド』はいくつかの作品に後続する物語になっていそうである。最も重要となるのはドラマ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」だ。
サム・ウィルソンとバッキー・バーンズの二人を主人公に、一度は継承を辞退したサムがキャプテン・アメリカを受け継ぐまでを描く。ドラマは全6話。各話50分前後だが、うち10分ほどがオープニングやエンドクレジットなので、本編部分は1話およそ40分。全エピソード通して、長編映画2本分ほどの時間で完走できる。なぜサムは星条旗の盾を背負うと決意したのか?そこに込められた熱い想いを理解しておけば、『ブレイブ・ニュー・ワールド』での戦いがよりドラマチックに映るはずだ。なお、脚本家もマルコム・スペルマンが続投している。

「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」に登場するバッキーとUSエージェント/ジョン・ウォーカーは、2025年GW公開の映画『サンダーボルツ*』でもチームを組んで再登場する。つまり「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」は今年の映画2本に通ずる、一粒で二度美味しいシリーズとなっている。

意外なポイントとなるのが『インクレディブル・ハルク』(2008)だ。同作限りエドワード・ノートンがハルク/ブルース・バナーを演じたこの映画は、長年の間MCUファンの間でも「特に観なくても良い」扱いされることが多かった。ところが『ブレイブ・ニュー・ワールド』では、同作でティム・ブレイク・ネルソンが演じたサミュエル・スターンズがヴィラン“リーダー”としてカムバック。ハリソン・フォードが新たに演じるヒーロー嫌いのサディアス・“サンダーボルト”・ロスが初登場したのも同作だ。また、サディアスの娘でブルースの恋人だったエリザベス・“ベディ”・ロスも、リヴ・タイラーによって再演されるという。ティム・ロスが演じたアボミネーション/エミル・ブロンスキーもドラマ「シー・ハルク:ザ・アトーニー」に再び顔を出しており、『インクレディブル・ハルク』の価値はにわかに高まっている。
それから、『ブレイブ・ニュー・ワールド』のために必ずしも再鑑賞する必要はないが、『エターナルズ』もこの新作に繋がってくる。同作では宇宙を生み出した絶対的存在セレスティアルが登場し、その新たな一体“ティアマット”がインド洋から巨大な身体を出現させた。クライマックスの戦いで氷河に変えられて以降、ティアマットの一部は海から突き出したままになっている。

『ブレイブ・ニュー・ワールド』では、このティアマット残骸に資源的価値が認められたことで、世界中の国々で争奪戦が繰り広げられる。“『エターナルズ』を観ていない人は置いていかれる”なんてことは絶対にないはずだが、背景を知っておくとまた興味深く楽しめるだろう。
『ブレイブ・ニュー・ワールド』でなぜロスが米大統領に新就任するのかは、ドラマ「シークレット・インベージョン」にヒントがある。同作ではリットソン大統領が国を治めているが、スクラル人の襲撃を受けたことで異星人排除の緊急法案を提出する。そんな彼についてニック・フューリーは「いかにも一期で終わる大統領」と吐き捨てており、これは強硬派のリットソン政権が短命に終わることへの伏線と見られる。

ここでは複数作を挙げたが、全てを視聴しておく必要は全くない。直接的な連続関係にあるのは「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」くらいだし、未視聴でも問題ない作品に仕上がっている……と信じよう。
また、キャラクターの精神や作風について改めて触れておきたいのなら、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2011)が最適だ。サム・ウィルソン初登場の重要作であり、MCUにおけるポリティカル・スリラーの源流。あらゆる点で『ブレイブ・ニュー・ワールド』のルーツとなる一本である。鑑賞に向けて気分を高めたい場合にオススメ。

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は2025年2月14日より日米同時公開。
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