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マーベル『ブラックパンサー』は独立したストーリーに ― 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』との関係を予測

映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)で初登場した新ヒーロー、ブラックパンサーを主人公とする単独映画『ブラックパンサー』は、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の集大成『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の“直前作”だ。
しかし製作を担当するマーベル・スタジオは、本作をあくまで独立したストーリーとして構想しているという。

「独立したストーリー」、その意味は

これまでMCUは、独立した作品群を相互に繋げることによって、世界観を少しずつ拡大しながら大きなストーリーを構成してきた。アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソーといったキャラクターを『アベンジャーズ』(2012)で集合させ、さらに『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)で地球外のストーリーを描いて、それぞれのヒーローにはそれぞれの物語を与える。やがて作品の壁を超えてキャラクターは行き来するようになり、ヒーローたちの物語がゆるやかに繋がるなか、驚くべき力を持つインフィニティ・ストーンの存在感が高まっていく……。

こうした中で近年登場してきたのが、のちに『シビル・ウォー』に合流したアントマン、『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)にも顔を出したドクター・ストレンジ、そしてスパイダーマンだ。しかしその単独映画第1作は――やや複雑なリンクを示した『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)を除いて――他とはあまり繋がりのない作品だった。たとえば『ドクター・ストレンジ』(2016)を撮ったスコット・デリクソン監督は、そのクリエイティブな自由度を保証されていたという。

しかし『ブラックパンサー』の場合、また事情が異なるといっていいだろう。前述の通り『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の直前となるほか、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)で主人公ティ・チャラの父親が殺されてしまったこと、ヴィランのユリシーズ・クロウが『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)に登場していたことは、すでに大きな「リンク・ポイント」といえるものだ。

『ブラックパンサー』でプロデューサーを務めるネイト・ムーア氏は、米ScreenRantの取材に対して、こうしたリンクを認めながらも、あくまで本作が独立したストーリーを志向したことを明らかにしている。

「(『ブラックパンサー』は)もともと他の作品とリンクしています。『シビル・ウォー』や『エイジ・オブ・ウルトロン』と繋がっていますからね。ですから、一連の出来事ではあるんですよ。
ただし『ドクター・ストレンジ』のように、この映画も、他との繋がりを超えて独立しうるだけのストーリーテリングを有していると思います。ライアン(・クーグラー監督)には、MCUで起こったことに縛られずに物語を描いてほしいと思ったんです。ただし、この映画の出来事がMCUに影響をもたらさないということではありませんよ。それでも、この映画自体はMCUの他のプロットに依存していないんです。」

したがって本作は、『シビル・ウォー』『エイジ・オブ・ウルトロン』の影響下にありながらも、絶対に予習が必要となるストーリーではないのだろう。同時に『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の直前作として、そのお膳立てをするような物語でもなさそうだ。

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』予告編の謎

とはいえ『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の予告編には、『ブラックパンサー』の要素が意味深な形で登場している。ティ・チャラ/ブラックパンサーがキャプテン・アメリカの盾について言及しているほか、映像の終盤でヒーローたちが集結しているのは、ティ・チャラが治めるワカンダ王国とみて間違いない。

もっとも『ブラックパンサー』の公開前にリリースされた本予告編に、本作の要素がたくさん忍ばされていることは、マーベル・スタジオによる巧妙なプロモーション戦略の一環として捉えることもできる。なにせ、「『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のためには『ブラックパンサー』を観なければいけないのでは」と思わせるには十分な仕上がりの映像なのだ。ソー役のクリス・ヘムズワースも、この予告編について「“えっ、こんなに出さないんだ”って思いました」コメントしているだけに、ワカンダのシーンが本編のごく一部にすぎない可能性も否定できない。

現状、『ブラックパンサー』で明らかになるとみられているのは、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の下準備となる、インフィニティ・ストーンの“最後のひとつ”ソウル・ストーンの正体とその在り処だ。ワカンダ王国がそのカギを握っているはずだが、逆にいえば、この一点を除いて、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の用意がどこまで行われるのかは定かでない。

プロデューサーのネイト氏は『ドクター・ストレンジ』のように」と述べているが、よくよく思えば『ドクター・ストレンジ』は、インフィニティ・ストーンのひとつであるタイム・ストーンの存在が示されたほか、『マイティ・ソー バトルロイヤル』の前振りすら用意された作品だった。確かに物語は独立していたが、MCUの1本としてはその役割を十分果たしていたのである。同じく『マイティ・ソー バトルロイヤル』も、ストーリーや演出こそ独自路線ながら最後の最後にサプライズがあった。きっと『ブラックパンサー』にも“なにか”があるに違いない……。

なお本作の脚本を執筆したのは、『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)でも脚本・監督を務めたライアン・クーグラー監督と、ドラマ『アメリカン・クライム・ストーリー』(2016)を手がけたジョー・ロバート・コール『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)にも似ているという、骨太なストーリーテリングに期待できそうだ。

映画『ブラックパンサー』は2018年3月1日より全国ロードショー。

Source: https://screenrant.com/black-panther-infinity-war-set-up/
©THE RIVER

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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