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コムキャスト、21世紀フォックスの事業買収を断念 ― ディズニーが競争に勝利、買収実現の見通し

コムキャスト
Photo by Mike Mozart https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Comcast_(29013715274).jpg

21世紀フォックス社の事業買収をめぐる、ウォルト・ディズニー・カンパニーとコムキャストの熾烈な戦いにとうとう終止符が打たれた。

2018年7月19日(米国時間)、米国の通信・メディア企業大手であるコムキャストは、21世紀フォックスの事業買収を断念したことを正式に発表。これによって同社の事業買収は、かねてより合意が結ばれていた通り、ディズニーが引き続き進行していくことになる。

ディズニーと21世紀フォックスが事業統合について最初に合意を結んだのは2017年12月。両社は、フォックスの映画事業(20世紀フォックス)やテレビ事業(FOX ネットワークスなど)を含む複数の事業を、ディズニーが524億ドル(5兆7,640億円※1ドル110円換算)で買収すると発表したのである。
これを受けてコムキャストは、2018年6月14日に650億ドル(7兆1,500億円※レート換算同上)、全額現金での事業買収をフォックス側に再提案。しかしディズニーは同月20日に買収額713億ドル(7兆8,430億円※レート換算同上)、現金と株式取引を半分ずつにするという新条件でフォックスと再合意に至ったことを発表していた

一部報道ではコムキャストが現金900億ドルでの再提示を検討しているとも伝えられていたが、6月27日にはディズニーによる事業買収が米司法省から反トラスト法に関する承認を得たことが報じられ、ディズニー対コムキャストの争いは一気にディズニーが優勢となった(承認にあたって、ディズニーはフォックスの有するローカルのスポーツ・チャンネル22局を手放すことを受け入れている)。

コムキャスト、英Sky社の買収に集中へ

このたびの発表で、コムキャストはフォックスの事業買収から手を引くこと、かわりに英国のメディア企業Sky社の買収に集中する意向を明らかにした。ただしSky社は21世紀フォックスが大株主となっているため、コムキャストは次にフォックスと対決することになるわけだ。ただし事業買収が実現すればその株もディズニーが保有するため、結局そちらでもコムキャストとディズニーが激突する可能性も十分にある
Sky社をめぐる状況について、専門家たちは「ディズニーとフォックスは事業統合に集中するためSky社からは手を引く」とも、「ディズニーは自社映像配信サービスの足がかりとするため、こちらも絶対に譲らない」とも予想している。すべては実際の出方をうかがうしかなさそうだ。

コムキャストの会長兼CEOであるブライアン・ロバーツ氏は、両社に対して「ボブ・アイガー(ディズニー会長兼CEO)とディズニーのチームに祝福を、マードック・ファミリーとフォックスがこれほど価値が高くすばらしい企業を生み出していることに賛辞を送ります」とコメントを発表。これを受けてディズニーのボブ氏は喜びのコメントとともに、事業統合に向けて作業を進めていくことを改めて明言した。

なおディズニーとフォックスの株主は、2018年7月27日(米国時間)に今回の取引についての投票を実施する予定。ちなみに7月6日には、フォックスの株主が同社からの情報不足を理由に取引中止を求める訴状を裁判所に提出しているが、こちらの続報は聞こえてこない。

ディズニーによるフォックスの事業買収の大きな狙いは、2019年に米国で開始される予定の自社映像配信サービスの体制強化や、フォックスが保有する「スター・ウォーズ」やマーベル・キャラクターの権利取得である。いわゆる大人の都合でマーベル・シネマティック・ユニバースに登場できなかった「X-MEN」「ファンタスティック・フォー」のキャラクターも、事業統合が完了すれば、将来的にディズニー傘下のマーベル・スタジオによって映画化される可能性が高い。

Sources: Deadline, Variety
Eyecatch Image: Photo by Mike Mozart

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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