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ヒーロー映画は生き残れるか?『マッドマックス』ジョージ・ミラー監督、「存続する」 ─ 巨匠監督たちの批判とは別角度の意見

ジョージ・ミラー
Photo by Georges Biard https://commons.wikimedia.org/wiki/File:George_Miller_Cannes_2016.jpg

ハリウッドの一大フランチャイズであるマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)は、今後10年の計画がすでに存在しているという。2022年現在、隆盛を極め続ける“スーパーヒーロー”ジャンルの時代はまだまだ衰える気配を見せない。

しかし、無声映画がトーキー映画に取って代わられたように、いつかスーパーヒーロー映画にも“終焉”なる時が訪れることがあるのだろうか。『マッドマックス』シリーズで知られるジョージ・ミラー監督は、ヒーロー映画はこれからも存続すると確信しているようだ。

ミラー監督は、2015年の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』以来およそ7年ぶりの新作映画『Three Thousand Years of Longing(原題)』の為にフランスで開催中の第75回カンヌ国際映画祭に出席。出演者のティルダ・スウィントンとイドリス・エルバと共に記者会見に登場したミラー監督は、「現代のスーパーヒーロー映画は、きたる時代の人々の心にも刺さるか否か」という質問を米Varietyから投げかけられた。ヒーロー映画に対しては、近年ハリウッドの巨匠監督たちからの批判の声も目立つが、ヒーロー映画の本質を問う別角度からの質問に、ミラー監督はなんと答えたのか。

「ある意味、こうした作品は存続しますし、存在してもきました。確実なのは、彼らも変わり続け、何か他のものに形を変えることになるということ。これは明らかなことですが、マーベルやDCのユニバースは、基本的にギリシャ神話や北欧神話、ローマ神話といったものの名残です。キャラクターには同じ価値が内包されている。私たちは、動き続けるイメージの物語を通して表現する時代を生きているんだと思います。こうした作品(ヒーロー映画)は過去のこだまみたいなものですが、私たちにも意味を持つものとなるように(時代に合わせて)手を加えられてきたのではないでしょうか。」

ミラー監督自身、2000年代終盤にDCコミックスの「ジャスティス・リーグ」映画化企画に取り組んでいたことで知られる人物だが、今回の発言はヒーロー作品に対する賛否ではなく、ジャンルの価値そのものを論じたもの。これに加えてミラー監督は、「ヒーロー映画=人気なもの」という現代の風潮が当然のことではないと主張する。

「こうした作品が人気なのは偶然ではありません。作品を作っている人たちが非常に誠実だからです。あのレベルの誠実さで作られれば人気になるというわけでもないと思います。10年、20年、30年と経てば、変化も出てくるでしょうけど。」

先述の通り、MCUには10年の計画が存在していると言われているが、マーベル・スタジオの“モノづくり”の姿勢には、2021年に始まったMCUフェイズ4以降、ミラー監督も主張する時代にあわせた変化が顕著に見られる。アベンジャーズに次ぐ新世代ヒーローの登場や、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)や『エターナルズ』(2021)「ムーンナイト」(2022)を例とする多様性を意識したストーリーテリングは、“ヒーロージャンル”という枠組みに新たな視点を与え、世間の関心を集めてきた。

また、こうしたストーリーの多様性は、記者会見に同席したティルダ・スウィントンが重要視するポイントでもあるようだ。MCU俳優としても知られるスウィントンはミラー監督に続き、「本当に危険なのは物語が1つしかないということじゃないでしょうか」と投げかける。「人が他の一切の物語に触れられない時、全てが無駄になり、何もかもを除外することになりかねません」。

この主張は、ウクライナ侵攻を続けるロシア政府の情報統制を批判したものでもあるが、スウィントンは映画製作にこそ様々な形の真実を伝える役割があると考えているようで、会場に向けてこのように訴えかけた。「人に耳を澄ませてもらい、新しい視点、新しい真実に興味を持ってもらうことが大切なのではないでしょうか」。

ちなみにミラー監督の新作『Three Thousand Years of Longing(原題)』は、スウィントン演じる“真実を伝えること”に熱心な学者の物語。イドリス・エルバがイスラーム神話に登場する妖精ジン役を演じ、神話要素も織り込まれることになると見られる。

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Source: Variety

Writer

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。

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