『プラダを着た悪魔』徹底解説 ─ あらすじ、 キャスト&監督、海外評価など

ファッション誌「VOGUE」の元編集アシスタントという経歴を持つ、作家ローレン・ワイズバーガーの同名小説をメリル・ストリープ&アン・ハサウェイという2大女優で映画化した『プラダを着た悪魔』(2006)。製作から15年近くが経ってなお、根強い人気を誇る“お仕事コメディ”だ。
本記事では、そのストーリーから、出演者&監督のプロフィール、公開当時のレビュー・評価などをご紹介。ぜひ鑑賞のおともにどうぞ。
『プラダを着た悪魔』予告編
『プラダを着た悪魔』あらすじ
大学を卒業し、ジャーナリストを目指しているアンディ(アン・ハサウェイ)は、ファッション誌「ランウェイ」の面接を受ける。決してファッションに詳しくなかったアンディの格好に、編集長のミランダ(メリル・ストリープ)は驚愕するが、アンディの知性と情熱を買ってして採用を決めるのだった。
ミランダに応えるべく努力するアンディだが、“悪魔的”なプロフェッショナルであるミランダによる難題とハラスメントの中で心が折れそうになる。恋人との時間さえ穏やかに過ごせない毎日に、ついにアシスタントを辞めることを考えるのだった。
しかしアンディは、ファッション・ディレクターのナイジェル(スタンリー・トゥッチ)の指摘を受けたことから考え方を変えることに。自分の見た目から仕事を変え始めるや、がぜん仕事が面白くなっていくのだった。
ところが、その一方でプライベートにはひずみが生まれつつあった。再び悩み始めるアンディだったが、ミランダの毎日も決して順風満帆なわけではなく……。
『プラダを着た悪魔』出演者・キャスト
アン・ハサウェイ(アンドレア・“アンディ”・サックス役)

アン・ハサウェイは、ドラマ「ゲット・リアル」(1999-2000)の主人公役に抜擢されて一躍有名になったのち、『プリティ・プリンセス』(2001)で映画デビュー。『ブロークバック・マウンテン』(2005)『プラダを着た悪魔』(2006)『ゲット スマート』(2008)などで人気を博し、『レイチェルの結婚』(2008)でアカデミー主演女優賞候補となった。『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)『ラブ&ドラッグ』(2010)の後、『レ・ミゼラブル』(2012)ではアカデミー助演女優賞を受賞した他、数々の映画賞に輝いている。
同じく2012年には、クリストファー・ノーラン監督『ダークナイト ライジング』にも起用され、ノーランとは『インターステラー』(2014)で再びタッグを組んだ。近作に『シンクロナイズドモンスター』(2015)や『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』(2016)『セレニティー: 平穏の海』(2019)など。児童文学の映画化『魔女がいっぱい(原題:The Witches)』のリリースを控えるほか、映画版『セサミストリート(原題)』、ジェームズ・グレイ監督『Armageddon Times(原題)』などを控えている。
メリル・ストリープ(ミランダ・プリーストリー役)

『ジュリア』(1977)で映画デビューを果たしたメリル・ストリープは、『ディア・ハンター』(1978)でアカデミー賞助演女優賞に初ノミネート。『クレイマー・クレイマー』(1979)でアカデミー賞助演女優賞、『ソフィーの選択』(1982)でアカデミー賞主演女優賞に輝いた。その後も『愛と哀しみの果て』(1985)『クライ・イン・ザ・ダーク』(1988)『めぐりあう時間たち』(2002)など、数々の作品で受賞、またはノミネートを受けている。
『プラダを着た悪魔』のあとは、『マンマ・ミーア!』(2008)などの娯楽作品にも出演し、『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』(2011)では再びアカデミー賞主演女優賞に輝いた。近年は『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』(2016)『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2017)『ザ・ランドロマット -パナマ文書流出-』(2018)『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)など話題作に立て続けに出演している。今後の作品としては、ライアン・マーフィー監督のNetflix映画『ザ・プロム』、スティーブン・ソダーバーグ監督『Let Them All Talk(原題)』などが待機中だ。
エミリー・ブラント(エミリー・チャールトン役)

2000年に舞台でキャリアをスタートさせたエミリー・ブラントは、複数のテレビ作品やインディペンデント映画に出演し、特に『マイ・サマー・オブ・ラブ』(2004)や『ナターシャの歌に』(2005)の演技が評価された。本作『プラダを着た悪魔』でゴールデングローブ賞&英国アカデミー賞の助演女優賞候補となった後も、『サンシャイン・クリーニング』(2009)『ヴィクトリア女王 世紀の愛』(2009)『砂漠でサーモン・フィッシング』(2011)などで映画賞に輝いた。
近年の代表作には、日本のライトノベルを映画化したトム・クルーズとのW主演作『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)や、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『ボーダーライン』(2015)、世界的ヒットスリラー『クワイエット・プレイス』(2018)、ディズニー名作映画の続編『メリー・ポピンズ リターンズ』(2018)。2021年にはドウェイン・ジョンソンとのW主演による『ジャングル・クルーズ』や、続編『クワイエット・プレイス PARTII』の公開を控える。
スタンリー・トゥッチ(ナイジェル役)

スタンリー・トゥッチは、1980年代から映画・テレビ・舞台にまたがって名バイプレーヤーとして活躍し、『普通じゃない』(1997)や『謀議』(2001)『ロード・トゥ・パーディション』(2002)『ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方』(2004)『ターミナル』(2004)など多数の代表作を誇る。本作ののち、『ラブリーボーン』(2009)でアカデミー賞&ゴールデングローブ賞の助演男優賞候補となった。2010年代には『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011)や『ハンガー・ゲーム』『トランスフォーマー』シリーズといった大作映画や『スポットライト 世紀のスクープ』(2015)『美女と野獣』(2017)などに参加。
今後の作品には『キングスマン』シリーズの最新作『キングスマン:ファースト・エージェント』(2021年2月11日公開)や、アン・ハサウェイ主演『魔女がいっぱい(原題:The Witches)』、コリン・ファースとW主演の恋愛映画『Supernova(原題)』など。脚本家・監督としても活動しており、主な作品に『シェフとギャルソン、リストランテの夜』(1996)『ジャコメッティ 最後の肖像』(2017)がある。
エイドリアン・グレニアー(ネイト役)

大学時代に演劇を学んだエイドリアン・グレニアーは、1997年に『ハリケーン・クラブ』で映画デビュー。1999年『ニコルに夢中』、2000年『セシル・B/ザ・シネマ・ウォーズ』などを経て、ドラマシリーズ「アントラージュ★オレたちのハリウッド」(2004-2009)でヴィンセント・チェイス役を演じる。2015年には『アントラージュ★オレたちのハリウッド:ザ・ムービー』でチェイス役を再演した。
俳優としては日本未公開の出演作も少なくないが、監督やプロデューサーとしても活動。代表作には、自身のパパラッチに13歳の少年を発見したエイドリアンが、逆に少年を追うドキュメンタリー『ティーンエイジ・パパラッチ』(2010)などがある。同じく2010年には、映画やデザイン、アートを通じて持続可能なライフスタイルの普及を呼びかけるブランド「SHFT.com」を設立した。
サイモン・ベイカー(クリスチャン・トンプソン役)

1969年生まれ、オーストラリア出身のサイモン・ベイカーは、80年代後半に俳優としてのキャリアをスタート。「Home and Away(原題)」など母国のテレビドラマに数々出演したのち、『L.A.コンフィデンシャル』(1997)でハリウッドデビューを果たした。主演を務めたドラマシリーズに「堕ちた弁護士 -ニック・フォーリン-」(2001-2004)「THE MENTALIST メンタリストの捜査ファイル」(2008-2015)がある。
アメリカやオーストラリア、イギリスなど各国の作品に出演しており、2010年代以降の代表作に『キラー・インサイド・ミー』(2010)『マージン・コール』(2011)。青春映画『ブレス あの波の向こうへ』(2017)では監督業に初挑戦し、脚本・製作・主演も兼任した。
トレイシー・トムズ(リリー役)
大手テレビ局・PBSのディレクターを父親に持つトレイシー・トムズは、10歳から演技を学び始め、学生時代も芸術と演技に傾倒した。2002年からテレビ作品に出演し、主なテレビシリーズには「コールドケース 迷宮事件簿」シーズン3~7(2005-2010)や「9-1-1: LA救命最前線」(2018-)、Apple TV+作品「真相 – Truth Be Told」(2019-)がある。
映画の代表作には『プラダを着た悪魔』のほか、『RENT/レント』(2005)やクエンティン・タランティーノ監督『デス・プルーフ in グラインドハウス』(2006)、ライアン・ジョンソン監督『LOOPER/ルーパー』(2012)、『ANNIE/アニー』(2014)など。秀でた演技力と歌唱力を評価され、ブロードウェイの舞台でも活躍する。
『プラダを着た悪魔』出演者/吹替声優
キャラクター名 | キャスト | 日本語吹替声優 |
ミランダ・プリーストリー | メリル・ストリープ | 夏木マリ |
アンドレア・“アンディ”・サックス | アン・ハサウェイ | 小林沙苗 |
エミリー | エミリー・ブラント | 松谷彼哉 |
ナイジェル | スタンリー・トゥッチ | 岩崎ひろし |
ネイト | エイドリアン・グレニアー | 加瀬康之 |
クリスチャン・トンプソン | サイモン・ベイカー | 東地宏樹 |
リリー | トレイシー・トムズ | 浅野まゆみ |
デヴィッド・フランケル監督

1959年生まれのデヴィッド・フランケルは、サラ・ジェシカ・パーカー&アントニオ・バンデラス出演『マイアミ・ラプソディー』(1994)で監督デビュー。1996年製作『Dear Diary(原題)』でアカデミー賞短編実写映画賞に輝いた。その後、スティーブン・スピルバーグ製作総指揮「バンド・オブ・ブラザーズ」(2001)や「セックス・アンド・ザ・シティ」、本作『プラダを着た悪魔』にも出演したエイドリアン・グレニアーの代表作「アントラージュ★オレたちのハリウッド」でエピソード監督を担当。
『プラダを着た悪魔』ののちは、映画『マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと』(2008)や『ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して』(2011)『31年目の夫婦げんか』(2012)、ウィル・スミス&エドワード・ノートンら出演『素晴らしきかな、人生』(2016)などで監督を務めた。
『プラダを着た悪魔』レビュー・評価
『プラダを着た悪魔』は米レビューサイトRotten Tomatoesでは、批評家スコア75%、観客スコア76%。データベースサイトのIMDbでは、10点満点中6.9点と、まずまずの高評価と見ることができる。
好意的なレビューを紹介しよう。「『プラダを着た悪魔』は生意気で、スマートで、洗練されている。ニュー・ミレニアムのワーキング・ガールだ」とOrlando Sentinel。Denver Postは「よくあるスタジオ映画と思いきや、細かいところを見ると、しっかり質が高い」と残している。
Los Angeles Timesは「女性誌の意地悪な領域への、鋭く、驚くほど笑える小旅行」と評し、AP通信は「楽しくて、チャラチャラしてて、元気があって、セクシーで、目が離せない」と書いている。Atlanta Journal-Constitutionは「最高のキャスト、最高の衣装、最高の笑い」と絶賛だ。
中でも、“悪魔”な編集長ミランダを演じたメリル・ストリープを評価する声が特に多い。「悪がくすぶるようなメリル・ストリープが真の喜び」とBBC、「偉大なコメディエンヌ、メリル・ストリープを祝福するような作品だ」とNewsday、「メリル・ストリープがまたも素晴らしい演技に入り込むのを拝むことができる」とDenver Rocky Mountain News。
Christian Science Monitorは「この映画の何が素晴らしいって、ストリープの演技だよ」と、Washington Postは「ストリープが形にしてくれている。ストリープが面白くしてくれている」と絶賛している。ほかにも、「光っているのはストリープだ」(Entertainment Weekly)、「ストリープが、原作小説をシットコム的に、しかし楽しい映画化に一手で昇華してくれている」(Variety)と、各メディアはメリル・ストリープをべた褒めしている。
『プラダを着た悪魔』商品情報
『プラダを着た悪魔』DVD・ブルーレイは2007年4月18日にリリースされた。その後、DVD・ブルーレイともに廉価版が発売されている。特典には監督・製作・衣装・脚本・編集・撮影監督が集結しての音声解説、6種類のメイキング&インタビュー映像集や、監督・編集の音声解説付き未公開シーン集(ブルーレイ盤にはDVD未収録のシーンも収録)、NGシーン集などを収録。
ちなみにファッション誌を舞台とした一作だけあって、初リリース時には、初回生産限定で劇中ブランドを網羅したファッションブック(押切もえのコメント付)が付属。「Jewel Changes UNITED ARROWS」製の限定スカーフ付き、ユナイテッドアローズコラボレーションBOXも同時発売されていた。