【ネタバレ解説】『ドクター・ストレンジ/MoM』ワンダは何故◯◯◯◯でなければいけなかったのか

この記事には、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』のネタバレが含まれています。必ず本編鑑賞後にお楽しみください。

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』ワンダは何故ヴィランでなければいけなかったのか
『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』では、かつて共に激戦を乗り越えたドクター・ストレンジとワンダ・マキシモフの対立から物語がスタートした。「ワンダヴィジョン」(2021)で騒がせたウエストビューでの一件の後、禁断の書・ダークホールドを手にしたワンダは人里離れた地で1人静かに暮らしていたかと思いきや、魔女・スカーレット・ウィッチとしてマルチバースの支配を画策していたのだ。
ワンダがヴィランになるという展開は、名コミック『ハウス・オブ・M』などでも描かれてきたことで、ことMCUにおいても「ワンダヴィジョン」で示唆されていた。「ロキ」(2021-)から脚本を続投したマイケル・ウォルドロンもワンダのこうした悪の一面を常に意識してきたという。米The Wrapで、ウォルドロンは「彼女をアンサンブルの一員にするというアイデアや、彼女が最後には悪に染まってしまうのか?という話し合いは常にありました」と話しながら、執筆当時を振り返っている。
「常に手札の一つとしてありました。『ハウス・オブ・M』とかのコミックでも、彼女はそういう設定でしたからね。ワンダが狂気に陥ってしまうという。映画で彼女をメインヴィランにするというアイデアにはワクワクしてましたし、彼女以上の敵はいないようにも思えました。それに、豪華な面々の1人である彼女が最終的に悪者でした、という展開は巧みな欺きにもなりました。もしかしたら、本作で善から堕ちていく彼女は、他の楽しいバージョンよりも少し卑劣だったかもしれませんけど。」

こう語るウォルドロン、物語の着想はやはり「ワンダヴィジョン」から得たようだが、なかでも発想のきっかけを与えたのが、劇中でも重要なパートを担った禁断の書・ダークホールド。この呪われた書物により、ワンダは別世界の自分に憑依するドリームウォークを行い、最強の秘密結社・イルミナティのメンバーを皆殺しにまでした。このダークホールドについて、ウォルドロンは「手に取るべくしてそこにあった」と説明する。
「『ワンダヴィジョン』は彼女を悲しみへと突き動かしたと思います。でももしかすると、彼女はまだ怒りにまでは突き動かされていなかったんじゃないかと考えたんです。そうしたことを議論し、ダークホールドがそのつかみだと思ったんです。怒りをもたらし、ワンダの判断力を曇らせてしまうような。」
ワンダの最期、彼女にとっての救いとは

ダークホールドに善の心を奪われたワンダは、自分の行いの正当化として、サノスとの決戦におけるストレンジの過ちを指摘する。ウォルドロンは、ワンダのこの発言の意味を深く掘り下げることで、2人の対立に説得力を与えたのだ。
「彼女は映画で良い点を突いたと思います。スティーヴンはサノスにタイムストーンを渡したけど、彼はそうしなければいけなかったのか。他にも方法はあったんじゃないかって。映画を通してこの疑問は何度も提示されています。もし彼がサノスにタイムストーンを渡さなかったら、ワンダがビジョンを殺していた。それでマインドストーンも消えてなくなる。彼女は良い点を突いていたので、そうしたおいしい矛盾を掘り下げるのが良いと思ったんです。」
ワンダはかつての“同胞”たちを手にかけ、一線を越えてしまった。そして、最後は自らの否を認めることで、アース-616の世界から消え去った。ワンダを「殺す」ことで落着したエンディングへの思いは人それぞれだが、ウォルドロンは「観客全員を満足させられるようなエンディングはありません。皆が愛し、気にかけてきたヴィランがいたとしたらなおさらです」と語りながら、「エンディングは色んな意味で悲しくなっていただろうし、悲劇そのものです」と「ワンダヴィジョン」から続いてきた物語の必然性を強調する。その一方で、ウォルドロン自身、『ドクター・ストレンジ/MoM』を通して、ワンダにとっての救いを見出したようだ。
「僕自身満足できたのは、全てが終わった時、ワンダが自分を押さえつけていたスカーレット・ウィッチと、ダークホールドから解放されたことを見てもらえたことです。彼女がダークホールドを開けてしまったことを認めたということも──特にリジー(エリザベス・オルセン)にとっては──重要なことで、感謝しています。自分のしたことに責任を取ったのですから。それが別次元にいる他のワンダに起こらないよう願いながら、彼女は犠牲になっていったんです。」

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』は公開中。
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Source: The Wrap