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エドガー・ライト監督『アントマン』降板の理由を語る ― 『シビル・ウォー』は鑑賞済み、『ハン・ソロ』監督交代にも言及

映画『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』(2007)や『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ集団』(2010)などで知られるエドガー・ライト監督が、新作『ベイビー・ドライバー』(2017年8月19日公開)のプロモーションに登場。複数のメディアで、製作中に降板となった『アントマン』(2015)について、降板の理由や当時の様子などを明かしている

エドガー・ライト監督『アントマン』降板の理由

マーベル・シネマティック・ユニバース作品『アントマン』は、もともとライト監督による脚本・監督で製作される予定だった。しかしライト監督は、マーベル・スタジオとの「創作上の相違(creative difference)」を理由にプロジェクトから離脱。後任者にはペイトン・リード監督があたっている。

バラエティ誌のポッドキャストに登場したライト監督は、自身が『アントマン』を降板するに至った理由をこう語っている。

「いちばん外面がいい答えを言うと、僕はマーベル映画を作りたかった、でも彼らはエドガー・ライトの映画を本当に作りたいわけではなかった、ってことだね。僕は(『アントマン』の)脚本家・監督だったけど、彼らは僕抜きで草稿を作ろうとしていた。ほかの映画ではすべて自分で脚本を書いてきたから、先へ進むのが辛かったよ。突然監督として雇われたけど、思い入れも少なくなって、“どうして僕はここにいるんだろう”と思い始めたんだ」

前述の通り、ライト監督が降板したあと『アントマン』はペイトン・リード監督に引き継がれた。UPROXXによると、ライト監督は「お願いだから、僕のストーリーボード(絵コンテ)だけを使うのは止めてほしい」とだけ伝えたあと、リード監督とは一度も話をしていないという(もっとも完成した作品には、ライト監督によるストーリーボードが少なからず活かされているようだ)。

しかしライト監督は、『アントマン』降板の件について「あまり悪いことを言うつもりはない」という。

「(『アントマン』には)友達がいるからね。ポール・ラッドとは今でもすごく良い友達さ。実際、数週間前にニューヨークで会って食事をしたよ。あれ以来、きちんと話す機会は初めてだったんだ。あの映画について言えることは、脚本にクレジットされてうれしいってことだよ。8年くらいかけて作った脚本だったし、それに僕の友人――ポールをメジャー映画に出すことができた」

「あの映画をやらなかったことに後悔は何もないよ。ただひとつ後悔しているとすれば、僕とジョー・コーニッシュ(脚本)の時間がムダになったことだけさ。[中略]脚本のギャラももらったし、みんなが僕のためにそこまで泣くことはないよ。代わりにオリジナルの映画を作れたし、幸せだと思ってる」

「まだ観ていないし、観るつもりもない」

ところがライト監督は、未だに完成した『アントマン』を観ていないのだという。

「映画は観てないし、予告編すら観てないよ。“元カノがセックスしてるのを見たい?”って聞かれてるようなものさ。“いや、別にいいよ”ってことだよ」

ただしライト監督は、アントマンというキャラクターを見ることが辛いわけではないようだ。なぜなら彼は『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)を観ているというのである。ポール・ラッドと食事した際には「『アントマン』はまだ観てないし、これからも観ないだろうけど、『シビル・ウォー』は観たよ。君が一番愉快だった」と感想を述べたそう。ちなみに、飛行機で隣に座った乗客が『アントマン』を観ようとした時には、ライト監督は仕事をすることで観るのを回避したようだ……。

『ハン・ソロ』監督交代劇について

ところで昨今話題を呼んでいる“監督の降板”といえば、『スター・ウォーズ』シリーズのスピンオフ作品『ハン・ソロ(仮題)』から『LEGO®ムービー』のフィル・ロード&クリス・ミラー監督が降板し、代わりにロン・ハワード監督が起用されたことだ。

ルーカスフィルムとマーベル・スタジオという違いこそあれ、同じくディズニー傘下のプロジェクトから離脱した経験を持つライト監督は、この『ハン・ソロ』監督交代劇をどのように見ているのか……。しかし彼はコメントを差し控えている。

「コメントできないし、するつもりもないよ。フィルとクリスとはすごく親しいからね。ロン、キャシー(キャスリーン・ケネディ/ルーカスフィルム社長)とも良い友人なんだ。だからコメントはしない。でもフィルとクリスはとても素晴らしいよね。(降板が)発表された翌日、二人が『ベイビー・ドライバー』のロンドン・プレミアに来てくれたんだ。“来てくれると思ってたよ、楽しい時間になると思う”って話をした。会えて良かったよ。二人はすごく才能があるし、きっと成功する

ちなみにロン・ハワードが新監督として発表される直前、「デジタル・スパイ」のインタビューで『ハン・ソロ』を引き継ぐことを検討しうるかどうか尋ねられたライト監督は、こんなことを話している。

「いいや。彼らは僕の友人だから、そんなことはしないよ。自分自身がそんな状況にあっても、誰かの映画を完成させるなんて、僕には倫理的にできないことだ」

自身が降板した『アントマン』を“元カノ”と表現するライト監督にとって、別の人物が製作してきた映画を引き継ぐことは、それはすなわち……なるほど、“倫理的”という言葉が出てくるのも理解できるだろう。

『アントマン』を降板した監督は、その後オリジナル映画『ベイビー・ドライバー』を完成させており、同作は映画批評サイト「Rotten Tomatoes」ですでに高い評価を受けている。フィル&クリス監督も、きっと同じように鮮やかな復活を果たしてくれるに違いない。
映画『ベイビー・ドライバー』は2017年8月19日より全国ロードショー、会心の一作を見逃さないように!

Sources: http://variety.com/2017/film/news/playback-podcast-edgar-wright-baby-driver-1202467275/
http://comicbook.com/2017/06/22/ant-man-edgar-wright-exit/
http://uproxx.com/movies/edgar-wright-baby-driver-ant-man/2/
http://www.digitalspy.com/movies/star-wars/news/a831419/edgar-wright-wont-direct-han-solo-movie/
Eyecatch Image: https://www.amazon.co.jp/Ant-Man-Christophe-Beck/dp/B00YJKRJ38/

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。