『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』怪獣大図鑑 ─ ゴジラ・モスラ・ラドン・キングギドラ、設定と造形に迫る

「私たちが採用したのは、世界は彼らの所有物なのだという考え方。我々の方が外来種なのです」。
映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)のマイケル・ドハティ監督は、怪獣たちを“タイタンズ”と呼び、あくまでも“古代の神々”として扱った。「古代人たちが両膝をつき、首を垂れてしまうような存在感にしたかった」というデザインには、東宝怪獣映画への愛情と、本作を独自の作品に仕上げようという熱意が見て取れる。
ゴジラ、モスラ、ラドン、キングギドラ。東宝が誇る人気怪獣は、いかにしてモンスターバース(モンスター・ヴァース)の世界に蘇ったのか。登場怪獣の振り返りとともに、造形に込められたこだわりを紐解いていきたい。
ゴジラ
我らが怪獣王、ゴジラ。1954年『ゴジラ』では、ジュラ紀~白亜紀の海棲生物がビキニ環礁の核実験で住処を追われ、海上に出現したものではないかと推測された。その後の東宝映画では、ルーツは同じではあるが、原子実験によって巨大生物として変貌したものとも説明される。
ハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』では先史時代から存在した巨大生物という設定に変更され、ビキニ環礁での核実験はゴジラの駆除が目的だったとされた。ゴジラはシリーズを通じて大きさが変化しており、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』でも前作の身長108.2メートル/体重9万トンから成長を遂げ、身長119.7メートル/体重9.9万トンという巨大化を果たした。
ドハティ監督は「怪獣の優れたデザインの基本はシルエット。シルエットだけで区別が付くものでなければいけない」「鳴き声を聴いただけで、どの怪獣なのかが分かるようにすべき」との考え方から、怪獣の造形についてはオリジナル版を大切にしたアップデートを試みている。特にゴジラの造形には“シルエット主義”が顕著に表れており、前作の造形を踏襲しながら、“初代”である1954年版『ゴジラ』の背びれを採用。監督は「ゴジラの背びれは王冠のようなもの。大きく、美しい方がいい」と語っている。
ちなみに鳴き声についても、監督は「怪獣たちは古代の神々である」という新設定を踏まえ、“それぞれの鳴き声には独自の由来がある”という発想で制作にあたった。今回は前作で聞くことができた咆哮をもとに、より1954年版に近い鳴き声に仕上げたという。
モスラ

ゴジラと並ぶ東宝映画の人気怪獣であり、『モスラ』シリーズのほか、『ゴジラ』シリーズへのゲスト登場は最多回数を誇る。本作では翼長244.7メートルという設定で、ゴジラをしのぐほどの巨大ぶりを見せる。本作では中国・雲南省の古代遺跡にて卵として発見された。
四大怪獣が登場する本作で、ドハティ監督が「一番大きな挑戦だった」と語るのがモスラの造形だ。過去の登場作品をすべてチェックし、蛾の研究にも取り組んだ末、監督が選んだのは、あくまでも“リアリティを感じられる怪獣”というアプローチ。鱗粉や発光という側面にも注目した。その一方、監督は「モスラは常に美しく、それゆえに他の怪獣よりも際立っていた。モスラは畏敬の念や驚き、美しさをもたらす」のだとも強調。“怪獣は古代の神々”というコンセプトから、「モスラが夜空を飛んでいると、まるで天使を見ているように思うんじゃないか」という発想も取り入れられた。
本作ではゴジラやラドン、キングギドラと同じく、モスラも従来より巨大化し、より強い怪獣となっている。カマキリやハチなどもデザインの参考にされており、爪のように鋭い脚を持っているのだ。羽根に見られる眼のような模様は、“ゴジラの眼”をイメージしたもの。実際の蝶や蛾が、捕食者に対抗するための模様をもっていることを参考にしたという。もっとも東宝サイドは、「モスラは誰も殺さない」というルールを製作側にオーダー。監督も「モスラは善意の生物。彼女とゴジラは陰と陽、対極の存在です」と語った。