トム・ヒドルストン、ロキ役の11年間は「毎回ベストを尽くす責任を感じる」 ─ 『アベンジャーズ/エンドゲーム』秘話、今後の展開は

トム・ヒドルストンが『マイティ・ソー』(2011)でロキ役を演じてから、待望のドラマシリーズ「ロキ」(2021)が実現するまでの年月は、なんと11年間にもおよんだ。「“僕はロキを11年演じているので”って初めて言った時、その事実に気付かされてビックリした」とはトム自身の談だが、それほどまでに道のりは長かったのだ。
「ロキ」の配信開始に先駆けて、トムはロキ役を演じた過去を改めて振り返っている。米Entertainment Weeklyでは、11年かけて断続的に演じてきたロキ役について「40年間の人生の何割を占めているのかは正確にわからないけれど、相当のものですよ」と話した。
もともと、トムがロキ役ではなくソー役で『マイティ・ソー』のオーディションを受けていたというエピソードはファンの間ではよく知られているものだ。『マイティ・ソー』監督のケネス・ブラナーは、以前からトムとの共演経験もあり、「ロキに通じる大胆な想像力があるし、いたずらっぽいユーモアセンスもある。スター性もあれば、チームの一員としても動ける」との理由からロキ役に起用。役柄に特別な深みをもたらした演技に感銘を受けたと語っている。

一方、マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長にとって、ロキというキャラクターはマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)全体にとって重要な存在だった。当初から『マイティ・ソー』だけでなく、『アベンジャーズ』(2012)のメイン・ヴィランにすることを決めていたからだ。トムは『マイティ・ソー』の撮影前にその事実を聞かされ、思わず耳を疑ったと述べている。
「彼(ファイギ)は当時、すでに数歩先を行っていて、理解するのに数分かかりました。いきなり規模が大きくなったことが飲み込めなかったんです。ロキ役に選ばれたことが、自分の人生にとっていかに重大な出来事だったかがわかりましたし、それが続くんだな、と。」
『マイティ・ソー』で描かれた孤独を抱えた弟から、『アベンジャーズ』でのコミカルなテイストも色濃い悪役へ。キャラクターの振れ幅はさっそく大きかったが、トムは「映画の構造はわかっていたので、純粋な悪役として演じなければと思っていました」と振り返る。その一方、『アベンジャーズ』のロキにある好奇心や複雑さも、あくまで『マイティ・ソー』で描かれた家族や故郷にまつわる孤独感に由来するものとして解釈した。この方向性がロキというキャラクターを決定づけ、観客の心を射止めるに至ったのである。
ファイギ社長は当初、ロキがこれほどの人気を得るとは思っていなかったことを認めている。2013年のサンディエゴ・コミコンにロキの姿で登場したトムに観客が大歓声を上げる様子に、マーベル側も「想像以上、計画以上だ」と驚嘆したそう。その約1年前、『アベンジャーズ』のプレスツアー中には、熱狂的なファンがセキュリティをくぐり抜けてハルク役マーク・ラファロの車に乗り込み、「トム・ヒドルストンに私のファンアートを渡して」と頼んだというエピソードまである。ファイギ社長は「あれも(ロキが)いわゆるヴィラン以上のものになる兆候でした」と話した。

その後、『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(2013)でロキは死亡するはずだったが、テスト試写の反応を受けて、計画は急遽変更された。続く『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)では兄・ソーとの関係性に大きな変化が生まれ、そして『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)にて、ロキはサノスによって“本当の死”を迎える。撮影当時、トムには「本当にこれで終わりなんだ、ロキの最後の出番だし、オーディンソン・サーガの結末だ」という実感があったそうだ。
ところがその後、トムは『アベンジャーズ/エンドゲーム』の撮影に戻ることになった。なんと『アベンジャーズ』当時のロキは、テッセラクトを奪うと、たちまち姿をくらましてしまう。この展開には、さすがのトムも驚いたそう。「彼はいつ、どこに行ったのか。どうやって向かったのか。一日中ずっと質問しましたが、特に答えてもらえなかったのを覚えています」。それもそのはず、その時点でマーベル側はロキの“その後”を一切構想していなかったのだ。ファイギ社長は当時の実情をこう語る。
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