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【インタビュー】『ミッドウェイ』ローランド・エメリッヒ監督「戦争に勝者など存在しない」 ─ 日米海戦を中立的に撮り分ける意義とは

ローランド・エメリッヒ『ミッドウェイ』
Midway ©2019 Midway Island Productions, LLC All Rights Reserved.

『インデペンデンス・デイ』シリーズなどで知られる巨匠ローランド・エメリッヒ監督、待望の最新作ミッドウェイが、2020年9月11日(金)より遂に日本で公開となった。宇宙人の襲来や現代における氷河期の到来など、人類にとっての未曾有の出来事を大迫力かつリアルな映像で描き出したエメリッヒ監督が新たに魅せる題材は、太平洋戦争のターニングポイントとして知られるミッドウェイ海戦だ。

エメリッヒ監督が本作の構想に費やした月日は、実に20年以上。満を持しての超大作である。THE RIVERは、エメリッヒ監督にZoomを通じて独占インタビューを行った。次回作『Moonfall(原題)』の撮影でカナダに滞在していたエメリッヒ監督は、この日を含めた約2週間、隔離生活を送っていたのだそう。インタビューの間は終始、冷静な眼差しと柔らかな声で応じてくれたエメリッヒ監督。俳優陣との映画づくりやドイツ人監督として描く日米間の戦い、そして本作に込めた魂を訊いてきた。破壊王の異名を持つエメリッヒ監督の視覚効果論にも注目だ。

Roland Emmerich
©Claudette Barius

徹底的な視覚効果で再現した史上最大の海戦

── 本作のリサーチ期間は20年以上とお聞きしました。ミッドウェイ海戦が監督を熱くさせたのはどのような所でしょうか?

ある時、史上最大の海戦を題材にしたイギリスのドキュメンタリー作品を観ました。それがミッドウェイ海戦だったんです。この戦いの複雑さとか、運や偶然、海軍による諜報活動など、全てが絡み合った側面の多さに最初から魅了されましたし、私にとって最も興味深かった海戦でした。子どもの頃、1970年代に作られた映画(ジャック・スマイト監督『ミッドウェイ』、1976年公開)を観ていた繋がりもありましたからね。しかし、この戦いにはまだ伝えるべきことが多くありますし、この海戦がどう見えていたのかを現代のテクノロジーで正確に伝えられると気づいたんです。

── 監督のおっしゃるテクノロジーに関して、本作ではいかに活用しましたか?

『ミッドウェイ』は、私が撮った他の作品とは少し違います。今までの作品は、その物語が現実的でなければ「これは作られた物語」と理解されたでしょう。もし戦争映画を撮るなら、ビジュアル・エフェクト(視覚効果)が完璧でなければなりません。一生懸命作業したのですが、他と比べて基準に及ばないショットは、最終的に3つから4つほどカットしなければいけませんでした。無理に盛り込むよりはカットした方が良いんです。完成したものには私たち全員が誇らしい気持ちになりました。私たちが一度たりとも船にも空中にも行かず、全てCG加工で撮ったということを覚えておいて下さい。全てセットとCGなんです。

ミッドウェイ
©2019 Midway Island Productions, LLC All Rights Reserved.

キャストとの協力、日米の違いを直感で撮り分ける

── 本作では若手から大御所まで日米共に豪華なキャストが集結しました。この錚々たる顔ぶれの共演はどのようにして実現したのでしょうか?

日本人の俳優については、ある日本人の女性が色々と協力してくれました。知識がものすごく豊富な方で、「この役にはこの俳優、あの役はあの人が良いですよ」というように助言してくれたんです。その後に、最初に声をかける俳優を私が選んで、幸いどの役者も出演を望んでくれていました。それで、スカイプ(ビデオ通話)をしたんですが、これがすごく上手い具合に運びましたよ。

アメリカ側の俳優陣については、ウディ・ハレルソンとデニス・クエイドとは以前も一緒に映画を作っていました。なので、自然な流れでオファーすることになりましたよ。他の俳優たちに関しては、私がずっと好きな役者でしたね。キャスティングはとってもスムーズに進みました。

ミッドウェイ
Midway ©2019 Midway Island Productions, LLC

── 浅野忠信さんや豊川悦司さんなど、日本人俳優たちとのコミュニケーションに関して質問です。監督から俳優陣に対して演出は行ったのでしょうか?また、演技に対する要求で苦労したことはありましたか?

コミュニケーションは常に通訳の方を通して行われました。それでも上手く意思疎通ができましたよ。俳優一人ひとりが歴史上の人物である自らのキャラクターを熟知していましたから。それに彼らはとても知性的で、私の要求をしっかり理解してくれていました。また、彼らは私にアイデアを幾つか提案してくれたので、私が意見を求めているんだということも分かっていましたね。

あとは、非常に優れた日本人の軍事アドバイザーであるドイさんという方が、何が正しくて何が違うのかを明確に教えて下さりました。(ドイさんの助けもあって)日本人の俳優たちは安心していたでしょう。あとは、彼らの(アイデアを提案する)姿勢が素敵でしたね。

── 俳優たちの助言などを取り入れながら、作品を創り上げていったということですね。

その通りです。映画製作というのは互いの協力があって成り立つものです。それに、キャラクターについては大抵、役者たちが誰よりも詳しいので、彼らの意見に耳を傾けなければいけません。どうしたら映画が上手くいくのかを考えなければならないですし、それぞれにやるべきことがあるんです。

アメリカ人と日本人の俳優たちでは、どんな違いを出して撮ったのでしょうか?」という質問を訊かれます。答えというものは無いのですが、かなりのロング・ショットからミドルショットまでのトラッキング撮影を行った時に、その違いを直感的に出そうとしたんです。そんなに考えていたわけではないんですが、後になって映画全体を観てみると全てが上手くいっているんです。なぜなら、アメリカ人は動作を伴った自由な振る舞いをしますけど、日本人は非常に内側に秘めたような文化に生きていますから。

Writer

SAWADA
SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。

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