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【ネタバレ】サノスの設定はなぜ変更された?『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』コミック脚色の理由を製作チームが語る

映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』に登場するヴィラン、サノスマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)史上“最凶”だ。4人の手下(=サノス・チルドレン)を従えて6つのインフィニティ・ストーンを求め、宇宙の半分を消し去ろうとしているのである。

では、なぜサノスはそんな凶行に挑もうとしているのか。実は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』において、サノスの動機は原案コミック『インフィニティ・ガントレット』(小学館集英社プロダクション刊)から大きく変更されている。その脚色理由と経緯について、アンソニー&ジョー・ルッソ監督をはじめとした製作チームが語った。

注意

この記事には、映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のネタバレが含まれています。すでに作品を鑑賞された方向けの内容となりますのでご注意下さい。なお、このページをSNSにてシェア頂く際は、記事内容に触れないようお願い致します。

アベンジャーズ インフィニティ・ウォー
© 2018 MARVEL

死の象徴デスから、全宇宙の均衡へ

『インフィニティ・ガントレット』でサノスが宇宙の半分を消滅させるのは、なんと求愛のためだ。死の女神…もはや死そのものが具象化した存在であるデスの気を惹くため、サノスはインフィニティ・ガントレットの力で宇宙に脅威をもたらすのである。サノスとデスの関係はコミックで繰り返し語られており、オリジン・ストーリーを扱った『サノス・ライジング』(小学館集英社プロダクション刊)でも丹念に描かれている。

しかし『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』において、デスの存在はまったく姿を見せない。『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)に死を司る女神ヘラが登場すると判明した際には「ヘラがデスの役割を担うのではないか」とも予想されたが、これは当たらなかった。本作のサノスが宇宙の半分を消し去ろうとするのは、あまりに生命が増えすぎてしまったため。平和で穏やかな宇宙を維持するため、生命の半分という“少ない犠牲”によって彼は多くを守ろうと考えるのだ。

Vultureにて、アンソニー&ジョー・ルッソ監督、そして脚本家のクリストファー・マルクス&スティーブン・マクフィーリーは『インフィニティ・ガントレット』を絶賛している。ルッソ監督は少年時代からの思い出も語るほどの熱の入れようだが、それでも本作にサノスの「デスへの求愛」は採用されなかった。ただしそのアイデア自体は最初の候補に入っていたようで、ジョー監督は「採用しないと決めるまでの数日間、本当に良い話し合いをしました」と振り返っている。

『インフィニティ・ガントレット』の設定が使用されなかった理由は極めてシンプルだ。サノスが求愛のため宇宙を脅威にさらすという物語が、そもそも従来構築されてきたMCUの世界に合わないということ。多くのキャラクターが登場する本作にデスを登場させる余裕がなく、その時間をサノスやヒーローを描くことに使いたいと考えられたことである。もしデスを登場させるとすれば、本編で語らなければならない内容が格段に増えるのだ。

アンソニー監督: 僕たちには物語を先へ進める責任があります。2時間半でこれだけ多くのキャラクターを扱うところに、さらに観客の知らない登場人物を足してしまうと、その背景を説明しなければいけませんし、みなさんに気にかけてもらわなければいけませんし、サノスがそのキャラクターと関わったり、またそのキャラクターが別の登場人物に興味を示したりしなくてはいけません……。

また脚本家たちは、デスを登場させるハードルの高さも指摘している。なにせデスは死が具象化した存在であり、その姿は美しい女性にも、また骸骨にも見えるのである。

スティーブン: (デスを登場させることは)別の次元を…別の存在の次元を作るということ。おそらく、まだMCUにはないものです。物質を持たない、霊的なキャラクターはいませんよね?

そこでルッソ監督と脚本家のチーム、マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長が検討したのは、「サノスが宇宙の半分を消滅させる」というコミックのストーリーを、いかに別の形で物語に落とし込むかという課題だった。キャラクターやストーリーの魅力を損なうことなく、映画の中で説得力を発揮するにはどうすればいいのか?

ケヴィン社長: サノスの動機について話し合っていて、デスに関係する動機は、バランスの問題が大きいとわかったんです。生と死のバランスだったり、生命は際限がなくて手に負えない、だから是正しなきゃいけないという信念だったりして。そうしたものをサノスの動力源や背景にしたいと思いました。(監督や脚本家たちが)さらに自然で、地に足の着いた形を見つけてくれた。巨大なマッド・タイタンが、できるかぎり現実的な存在になったんです。

これまでにもルッソ監督は、ヴィランについて「豊かな背景があり、現実的なドラマが秘められている、そんな複雑なヴィランが好き」だと話していた。サノスに与えられた物語は、コミックの精神を継承しながら、このように少しずつ編み出されていったのである。

なお本作では、デスの代わりに、ある一人の女性キャラクターがサノスと深く関わることになる。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズでサノスの娘として紹介されたガモーラだ。これまで折にふれて言及されてきた父娘関係を、製作陣はここで活かそうと決めたのである。

スティーブン: 死に執着するのではなく、親子関係に焦点を絞ることでサノスを人間らしく描ける。狂気そのものではなく、より理解できる人物になるんです。

アンソニー監督: ゾーイ(・サルダナ。ガモーラ役)には最高の物語を作ってあげたいとも思いました。彼女はこの映画において、最も勇敢で、最もヒロイックなキャラクターですから。

なお『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』には、サノスの手下としてヒーローと対峙する4人の“子どもたち”が存在する。コミック『インフィニティ』(ヴィレッジブックス刊)で「ブラック・オーダー」あるいは「カル・オブシディアン」として登場した彼らにも、映画の登場にあたって設定の変更が加えられているのだ。米CinemaBlendにて、その理由が端的に明かされている。

ジョー監督: (映画の4人は)マーベル・シネマティック・ユニバース用にブラック・オーダーを解釈したものです。全員、コミックほど強くありませんよね。それはサノスより目立たせたくなかったからで、彼らはガモーラやネビュラよりは強い手下なんです。[中略]映画でもその力は見られるんですが、23人のヒーローがポスターに描かれている2時間半の作品で、それ以上に踏み込むことはできなかった。ブラック・オーダーの背景を描くことの優先順位は高くなかったですしね。ちょっとした要素や、彼ら同士の言葉にならない関係性は見てもらえると思います。けれども、ストーリーを台無しにするようなことではありませんよ。

映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は2018年4月27日より全国の映画館にて公開中。ヴィランの存在や描かれ方が気になったら、ぜひコミックも読んでみて!

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』公式サイト:http://cpn.disney.co.jp/avengers-iw/

Sources: Vulture, CB

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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