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『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』サノスの未公開シーンは約30分存在する? コミック原作者の証言を検証

マーベル・シネマティック・ユニバース作品の集大成、映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)に、ジョシュ・ブローリン演じる帝王サノスの未公開シーンが約30分存在するとの情報が話題を呼んでいる。

2018年7月1日(現地時間)、ラスベガスにて開催されたイベント「Amazing Las Vegas Comic Con」に、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の原案コミックである『インフィニティ・ガントレット』(邦訳版:小学館集英社プロダクション刊)を執筆したジム・スターリン氏が登場。トークの司会を務めた米Colliderのジョン・シュネップ氏は、その壇上でジム氏の口から飛び出した発言を紹介したのだ。

ジム・スターリン氏といえば、コミックの世界にサノスを生み出した、いわば“サノスの生みの親”である。ジム氏のもとには、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』が劇場公開される数週間前に制作サイドから電話がかかってきて、サノスのバックストーリーを大幅に削除しなければならなくなったことが伝えられたという。

ジョン氏の報告によれば、ジム氏はサノスのバックストーリーは約30分あったと証言しており、そこにはサノスのオリジン・ストーリーや若い頃のエピソードなどが含まれていたそう。しかし、ジム氏が電話を受けた時点で映画は約2時間30分の作品になっており、サノスの背景を本編にうまく入れられなかったというのだ。該当のシーンは完成しており、ジム氏いわく「スペシャル・エディション」に収録されるとか……。

ここで筆者がきちんと断っておきたいのは、一連の情報が「ジム氏の発言をジョン氏が報告する」という、いわば“また聞き”の形で全世界に発信されているということだ。映像の中で、ジョン氏は「ジム氏の発言だ」と強調しているが、その内容がどこまで正確なのか、ジョン氏の解釈がどこまで含まれているのかを確かめることはできない

サノスの未公開シーン、本当に30分もあったのか?

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でサノスの背景が描かれていたという情報は、実は同作の公開以前から明かされていたものだ。2018年3月中旬、マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長や、サノス役のジョシュ・ブローリンはこうした証言を残していた

ケヴィン:サノスはタイタンという星の生まれですが、そこにはもう人が住んでいません。彼はそれを防げたはずなのですが、そうすることが許されなかったんですね。そして、最も恐れていたことが起こる。惑星と、そこにいる全員が滅んでしまうんです。彼は、こんなことは二度と起こさないと誓います。そして、この宇宙は滅亡に向かっていると考えるんですね。生命が際限なく広がっていくことは宇宙を滅ぼし、生命を奪うことになると。

ジョシュ:彼の家族は、彼とは違っているんです。タイタン人の見た目は全員よく似ていますが、サノスは醜い姿で生まれてきた。[中略]彼は(タイタンで)目立っていた。異様だった。奇妙だったんです。それが狂気を生んだんです。

こうしたエピソードは、サノスのオリジンを描いたコミック『サノス・ライジング』(邦訳版:小学館集英社プロダクション刊)を思わせる。しかし4月上旬、アンソニー・ルッソ監督は「この映画には必要ないと思った」としてサノスの背景を削除したことを明かしていた
報道当時、サノスのバックストーリーを示すシーンが撮影されていたのか、それとも脚本の段階で削除されたのかは不明だった。ただし、ジム氏のもとに「バックストーリーを削除する」という報告が公開直前に入っていることを鑑みると、一連のシーンは完成しており、編集段階で削除されたと考えるのが自然だろう。「スペシャル・エディション」なる言葉の真意は不明だが、それらが未公開シーンとしてブルーレイに収録される可能性は十分にありそうだ。

すると論点は、サノスの未公開シーンは本当に約30分という長尺だったのか、というところになる。これに関しても、いくつかの情報や証言を推理のヒントにすることができるそうだ。

2018年3月上旬、当初『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は156分(2時間36分)の作品だと告知されていた。しかし、劇場公開を約2週間後に控えた4月中旬、この情報は150分(2時間30分)へと変更されている。ジム氏がカットの連絡を受けたのは「公開の数週間前」だったというが、その証言に上映時間の変更時期が一致していることには注目しておきたい。
しかしながら、上映時間の変更がサノスの背景を削除したことに起因していたにせよ、その誤差は約6分であり、30分という数字にはほど遠い。またジョー・ルッソ監督は、ディレクターズ・カット版が劇場公開版より約10分長かったことも明かしているが、これまた30分という数字にはまるで及んでいない。ただしサノスの背景を削除したことで、全編を再編集する余裕が生まれ、結果として誤差が小さくなった可能性は否定できないだろう。

結論として本稿が指摘できるのは、「サノスのバックストーリーは存在する」ということ、しかし「約30分という長さには大いに疑問の余地がある」ということだ。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のブルーレイ情報は米国でも告知されておらず、その特典映像は明らかになっていない。おそらく、真相はそう遠くないうちに明かされるはずだが……。

映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は2018年4月27日に米国公開された。

Source: Collider

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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