『ジョン・ウィック』スピンオフ作品まとめ ─ ドラマ「ザ・コンチネンタル」と映画『バレリーナ』の見どころ、アニメ化企画も?

『ジョン・ウィック』シリーズが絶好調だ。第4作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』が待望の日本公開を迎えたこのシリーズ、作品を重ねるごとに興行収入がうなぎ登りの稀有なシリーズ。あのマーベルやスター・ウォーズの映画だってこうはいかない。今、ハリウッドで最もノっている映画フランチャイズのひとつといって過言ではない。
スタジオは何を望むか?さらなるシリーズ展開である。スピンオフ企画やユニバース化である。その手始めとして『ジョン・ウィック』からは、初のスピンオフドラマ「ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から」が登場。さらに2024年には初めてのスピンオフ映画『バレリーナ』が続くほか、アニメ化を含め、検討中だという企画もある。
この記事では、拡大を始めた『ジョン・ウィック』シリーズのスピンオフ企画について、見どころと共にわかりやすくまとめてお伝えする。
ドラマ「ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から」

映画『ジョン・ウィック:コンセクエンス』の日本公開と同時に、Amazon Prime Videoで独占配信が始まったのが初のスピンオフ作品「ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から」だ。映画シリーズの主な舞台だったコンチネンタルホテル・ニューヨークの1970年代の激動を描く物語で、いわばシリーズの前日譚にあたる。
キアヌが演じるジョン・ウィックがまったく登場しない以上、映画シリーズのファンをどう満足させるのかという点が重要になる。そもそも観客は、『ジョン・ウィック』シリーズに何を期待していたのだろう。クールなキアヌの姿?派手で暴力的なアクション?それとも、殺し屋達の世界観が気に入っていたというのなら、このシリーズはきっと楽しむことができるだろう。映画ではイアン・マクシェーンが演じたホテル支配人ウィンストン・スコットの若き頃が主人公。コンシェルジュのシャロンも登場するなど、『ジョン・ウィック』シリーズの知られざる過去を見ることができる。
アクションシーンは映画版さながらにスタイリッシュだ。しかし映画が作品を重ねるにつれスタントの応酬となっていったのに比較して、「ザ・コンチネンタル」はもっと人間ドラマに重きを置いた印象。ニューヨークの裏社会で、さまざまな派閥や思惑が交錯する様を描く。ちょうどチャイナタウンが興隆した1970年代ニューヨークの空気も反映された。
そして別の見所は、絶大な権力を持つ現支配人コーマック役を名優メル・ギブソンが演じていること。ギブソン登場シーンは『ゴッドファーザー』並の存在感があり、彼がいるだけでスクリーンがずっしりと重く感じられる。演じる役もかなり強烈で、その迫力が頭から離れなくなるはずだ。

このドラマは各話1時間半ほどで、全3話の構成。もはや「映画3本分」くらいのテンションで楽しめる。まずは第1話が2023年9月22日(金)にPrime Videoで独占配信され、以降毎週金曜日に新エピソードが配信される。映画『ジョン・ウィック:コンセクエンス』と同時に観て、殺し屋たちの世界観にどっぷりと浸りたい。
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映画『バレリーナ』

映画シリーズ3作目『ジョン・ウィック パラベラム』(2019)にチラリと登場した、バレリーナを主人公とする映画。家族を殺し屋に奪われた若い女性が、復讐のため殺し屋へと変貌していく物語になるという。
注目したいポイントは二つで、まずはかなり自由度の高い作品になりそうだということ。というのも本作、元々は『ジョン・ウィック』とは関係のない独自のアクション映画として脚本が執筆されていたところ、これを『ジョン・ウィック』の世界に取り入れようとプロデューサーが思い立ったという経緯がある。
先に紹介したスピンオフドラマ「ザ・コンチネンタル」は前日譚だが、この『バレリーナ』は3作目『パラベラム』と4作目『コンセクエンス』の中間の物語になるらしい。そのため、キアヌ・リーブスのジョン・ウィックや、故ランス・レディックのシャロンもカメオ登場を果たすという。撮影はレディックの生前に済まされている。
カメオ登場とは、どれくらいの出演時間になるか?プロデューサーのエリカ・リーによると、キアヌは1週間ほど撮影したといい、レディックは1日だけ。支配人ウィンストン役のイアン・マクシェーンには、さらに出番があるという。
映画シリーズの監督チャド・スタエルスキはあくまでプロデューサーとして手助けを行ったのみで、メガホンを取ったのは『ダイ・ハード4.0』(2007)や『アンダーワールド』シリーズのレン・ワイズマン。スタエルスキは基本的にスピンオフは他の人に任せたい方針なのだ。ユニバース化についてもそこまで拘らず、そんなことよりも純粋にいい作品を作る方が大切なのだと、THE RIVERに語ってくれている。

そしてもう一つのポイントは、主演アナ・デ・アルマスの存在。『ブレードランナー 2049』(2017)のジョイ役でブレイクしたアルマスは、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021)『グレイマン』(2022)で立て続けにアクション作品に抜擢されている。一方、『ブロンド』(2022)『ゴーステッド Ghosted』(2023)は批評家から良い評価が得られず、新たな評判作を求めているところ。
既に撮影を終えた『バレリーナ』でアルマスは、全編にわたって激しいアクションに挑戦し、アザだらけの満身創痍になりながらキツいシーンをこなしたという。また、キアヌに投げ飛ばされるようなシーンも行ったと明かしているから、ジョン・ウィックと対決、または共闘する場面もあるようだ。2024年6月7日に米公開予定。日本公開時期も気になるところ。
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『ジョン・ウィック』アニメ化?
チャド・スタエルスキ監督が来日時にTHE RIVERに語ったところによると、なんと監督とキアヌとの間で『ジョン・ウィック』アニメ化の構想が語られているのだという。二人がどれほど本気なのか、今はどういう状況なのかはわからないが、少なくとも監督は「取り組んでいる」と教えてくれた。

『ジョン・ウィック』の世界観とアニメの相性がとても良さそうであることは誰もが納得できるところであるが、実際にスタエルスキとキアヌはアニメへの縁も深い。スタエルスキは『コンセクエンス』に登場した女性キャラクター、アキラの名を、大好きなアニメ『AKIRA』から拝借したと認めているし、キアヌも『AKIRA』や『攻殻機動隊』の大ファン。自ら共同執筆するコミック「BRZRKR(原題)」はアニメ化の企画もあるし、キャリアを振り返れば『アニマトリックス』(2003)や『スキャナー・ダークリー』(2006)もある。
もしも実現すれば、日本通のふたりのこと、日本のプロダクションにアニメ製作を依頼するかもしれない。そうなれば、また日本との素敵な交流が生まれることになりそうだ。
ソフィアのスピンオフ?

『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019)に登場した元殺し屋のソフィア(ハル・ベリー)のスピンオフが製作される可能性も伝えられている。
ハル・ベリーが演じたソフィアは、キアヌ・リーブス演じる主人公ジョン・ウィックとかつて“血の誓印”を交わした元殺し屋の女性。困ったジョン・ウィックに義理を果たしたソフィアだったが、キャラクターにまつわる謎は多い。4作目『コンセクエンス』には登場しないままだった。

演じたベリーは「ソフィアの単独映画はありえる」と語っており、またスタエルスキ監督の方も実際に複数回話し合ったことを認めている。監督は「スピンオフ」という呼称を嫌い、「サテライト・プロジェクト」と捉えているようだ。もしも実現すれば、やはりスタエルスキは信頼できる別のフィルムメーカーに監督の座を譲るのだろう。
ちなみにベリーにとって、この企画の成就は悲願。『007/ダイ・アナザー・デイ』(2002)で演じたスパイ兼ボンドガールのジンクスを主人公としたスピンオフ映画が進行しながら、土壇場になってスタジオによって撤回されたという苦い過去があるからだ。