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トム・ヒドルストン「ロキは救われた」 ― 『マイティ・ソー』から『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を振り返る

マイティ・ソー バトルロイヤル
© Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータ イメージ

映画『マイティ・ソー』『アベンジャーズ』シリーズでロキ役を演じてきたトム・ヒドルストンが、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)におけるロキの物語を総括した。
『マイティ・ソー』(2011)で登場して以来、『ブラックパンサー』(2018)に至るまで「MCU最高のヴィラン」という評価をほぼ独占してきたロキというキャラクターを、演じるトムはどのように考えてきたのだろうか。

注意

この記事には、映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のネタバレが含まれています。

トム・ヒドルストンが振り返る「ロキの物語」

『マイティ・ソー』でクリス・ヘムズワース演じる兄ソーや、アンソニー・ホプキンス演じる父親オーディンへの複雑な思いを示したロキは、『アベンジャーズ』(2012)でコミカルな要素を持つ悪役として活躍し、『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(2013)や『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)では、シリアスな内面とトリックスターとしての役割を再び強調した。ところが家族をめぐる物語が終結を迎えるや、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)の冒頭において、ロキはサノスによって命を奪われてしまう。サノスはロキの死体に向けて、「今度こそ生き返るまい」という言葉を投げかける……。

ロキというキャラクター個人に目を向けてみれば、その物語はあまりにも悲しい。家族からの愛情や自身のアイデンティティを求めつつ、同時に誰を信じずに他者を欺いて生きてきた人物が、ようやく本望を遂げた矢先に殺されてしまうのだ。しかし演じるトムは「ロキは救われた」と言い切る。

「大切なのは、彼は救われたんだということです。ロキという人物はずいぶん長い間傷ついてきましたから、僕はそのことにすごく感動しました。1作目(『マイティ・ソー』)で衝撃的な出来事があってから、彼の心は非常に脆く、非常に孤独だったと思います。自分が(オーディンの)養子だったこと、それどころか、父親が自分を見捨てたことを知ったんですから。そこで彼は、自分は見捨てられたんだ、孤独なんだという思いを内面化しました。そういう思いが激しいものに、強い怒りに変わって、彼はヴィランになったんです。」

マイティ・ソー バトルロイヤル
『マイティ・ソー バトルロイヤル』より © Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータ イメージ

こうした出来事を経て、ロキは『アベンジャーズ』で地球侵略に乗り出し、『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』ではさらなる悲劇を目の当たりにする。しかしトムは、この時のロキについて「自分自身を認識できていない」と解説した。

「(『アベンジャーズ』で)ロキは地球にやってきて侵略を試みる…あらゆる意味でヴィランになるわけです。彼は憎しみと怒りに突き動かされていて、その後(『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』で)母親を失ってもなお、ある意味では自分自身を認識できていません。
そして『マイティ・ソー バトルロイヤル』の冒頭で父親を失う時、彼は息子の一人だと呼ばれます。オーディンはロキを含めて“息子たち”と呼びますからね。そして姉ヘラによる混沌がもたらされ、ソーとロキは力を合わせなければならなくなる。ソーとロキは本当に通じ合うんです。(『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』では)すべてが一周して、ロキは自分をオーディンの息子だと呼びます。自分はそういう存在なのだと心から理解し、兄を守ることを前にして、父親による愛情の強さを感じるんですよ。だから、僕は非常に感動したんです。」

これまでトムは、公の場でロキというキャラクターに関する自身の解釈をきちんと言葉にしてきた。時には「(ロキが求めているのは)自分の心だと思います。ロキは自分自身を認めていないし、嫌っている」語り「本物の悪ではないと思います」とも述べてきたのである。“人間以上に人間らしい”神の姿を描き出しつつ、コミカルかつユニークなキャラクターとしての使命も同時に全うしてきた演技には、徹底して知性的な役柄へのアプローチがあったのだ。

ちなみにイベントでは、トムが一人の少年から「ロキは本当に死んじゃったんですか?」という剛速球の質問を受ける場面もあった。『アベンジャーズ/エンドゲーム(邦題未定、原題:Avengers: Endgame)』に関わるからか、あるいは質問したのがあまりに純粋な少年だったからか、トムはその真相を明らかにしていない。

Sources: Ace Comic Con, Comicbook.com

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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