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『マダム・ウェブ』『クレイヴン・ザ・ハンター』は独立した作品に ─ 『スパイダーマン』ユニバースから解放された新戦略

マダム・ウェブ
(C) & TM 2024 MARVEL

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)は『デッドプール3(仮題)』、DC映画は『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ(原題:Joker: Folie à Deux)』。2巨大スーパーヒーロー・ユニバースの“一時休止期間”とも言うべき2024年、両者が劇場公開を予定しているのは、ユニバースとの関連性が低いこの2本のみだ。

そんな中、ソニー・ピクチャーズは独自の戦略でマーベル映画の3本連続公開に臨む。特徴は、同社が手がける『スパイダーマン:スパイダーバース』シリーズに見られるようなユニバース&マルチバース構想ではなく、それぞれ独立したトーン&ストーリーの作品にしていること。その皮切りは、2024年2月23日に公開される『マダム・ウェブ』だ。

マダム・ウェブ
(C) & TM 2024 MARVEL

『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)の製作時、ストーリー・コンサルタントとしてソニー・ピクチャーズと協働した経験をもつジェフ・ゴメス氏は、米Varietyにて「(ソニーには)映画同士のつながりを強調することにためらいがあるのかもしれません」と話す。事実、ソニーによるマーベル映画群の先駆けとなった『ヴェノム』シリーズは独立した物語で、トム・ホランド主演『スパイダーマン』シリーズとの関連性はイースターエッグにとどまった(ジャレッド・レト主演の『モービウス』(2022)は例外だが、こちらは今後どうなるかわからない)。

ともあれ『マダム・ウェブ』と、これに続く『クレイヴン・ザ・ハンター』(夏公開)はともに独立したストーリーで、マーベル映画に詳しくない観客にも親しみやすい作品となりそうだ。それぞれ、<未来予知>の能力を手に入れた救急救命士キャシー・ウェブことマダム・ウェブ(ダコタ・ジョンソン)と、アーロン・テイラー=ジョンソン演じるクレイヴン・ザ・ハンターを初めて映画という形で紹介する作品になるからだ。

しかも興味深いのはジャンル設定で、『マダム・ウェブ』は“マーベル映画初の本格ミステリー・サスペンス”と銘打たれているほか、『クレイヴン・ザ・ハンター』はVarietyによると「ギャング映画」だという。監督に起用されたのは犯罪映画を得意とするJ・C・チャンダーで、しかもソニー製作のマーベル映画としては初めてのR指定だ。ユニバース構想から解放されることで、むしろジャンルや作風に幅が生まれているようにも見える。

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Varietyが注目するのは、一連の作品がMCUやDC映画に比べて低コストで製作されていることだ。大作スーパーヒーロー映画の製作費があっさりと2億ドルに達しやすい傾向に対し、『マダム・ウェブ』は1億ドル未満、『クレイヴン・ザ・ハンター』は1億ドル強(既報では1億3,000万ドル)、そして11月8日に米国公開予定の『ヴェノム3(仮題)』も前作『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(2021)の1億1,000万ドルから微増にとどまるという。

MCUとDC映画の“一時休止期間”に、ソニー製作のマーベル映画はいったいどのように受け入れられ、次なる展開を仕掛けてゆくことになるか。今後は『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(2023)の続編映画『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』のほか、ドナルド・グローバー主演によるヒプノ・ハスラーの単独映画(タイトル未定)も控えている。

Source: Variety

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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