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映画ライター石塚が選ぶ!2016年外国映画ベスト10と本年度総評

今年ももう終わりということで、2016年の映画ベスト10を選出してみた。なお、あくまでライター石塚個人の選出であるのでご了承いただきたい。 

2016年外国映画ベストテン

  1. エブリバディ・ウォンツ・サム!!世界はボクらの手の中に(リチャード・リンクレイター監督)
  2. ヘイトフル・エイト(クエンティン・タランティーノ監督)
  3. ヒップスター(デスティン・ダニエル・クレットン監督)
  4. ザ・ウォーク(ロバート・ゼメキス監督)
  5. タナーホール(フランチェスカ・グレゴリーニ監督)
  6. マネー・ショート 華麗なる大逆転(アダム・マッケイ監督)
  7. チリの闘い3部作(パトリシオ・グスマン監督)
  8. ロブスター(ヨルゴス・ランティモス監督)
  9. ホース・マネー(ペドロ・コスタ監督)
  10. 二ツ星の料理人(ジョン・ウェルズ監督)

ベスト男優

イーサン・ホーク(ブルーに生まれついて

ベスト女優

メリッサ・マッカーシー(SPY/スパイ)

「マンダロリアン シーズン3」「アソーカ」解説

外国映画ワースト

WE ARE YOUR FRIENDS ウィー・アー・ユア・フレンズ(マックス・ジョセフ監督)

総評

外国映画不作の一年だった。それは『マッドマックス 怒りのデスロード』のような収束点がなかったからでも、「日本映画が外国映画を圧倒した」などという世迷言のせいでもない。原因はハリウッド大作の均一化がますます推し進められたことにある。

逆に1位『エブリバディ・ウォンツ・サム!!世界はボクらの手の中に』は百人が観て百人が一位に挙げるであろうから選定を無個性なものにしかねないと思い躊躇ったが、それでも自分の心に嘘はつけなかった。本作を「古きよきアメリカ」だとか「80年代リバイバル」だとか「『バッド・チューニング』の後日談」だとか見る向きは完全に的を外れている。リチャード・リンクレイターは純然たる映画作法にのっとって映画にしか存在し得ないアメリカを築き上げた。よって、本作が比較されるべきはむしろ、遠くにありてアメリカを思う初期ヴィム・ヴェンダースのような感覚だ。

タランティーノ最新作『ヘイトフル・エイト』にも同様のことが言える。『ジャンゴ』で軽さに振れかけたショットが復活しているのが心強い。『ヒップスター』と『タナーホール』はさらなる拡大公開を願ってやまない。『チリの闘い』は被写体の美しさを純粋に捉えていることに心を打たれる。

『ブルーに生まれついて』、『二ツ星の料理人』、『サウスポー』、『ブルックリン』の四作は自分にとっては同じアティチュードを感じさせる映画だ。歴史的名作など目指さず、スタッフ全員が同じ方向を見て丁寧に仕事をする、その積み重ねが映画なのだと再認識させてくれた。そういう意味では最初から傑作を撮ろうとして撮られ、想定どおりの傑作に落ち着いた『シング・ストリート 未来へのうた』には丁寧さ以上に無骨さが目立ってしまう。四本のうち、最も「普通さ」を批判されかねない『二ツ星の料理人』をベストテンに入れることであえて映画の「普通さ」を擁護したい。

来年も変革や斬新など望まず、普通の映画を普通に楽しみたい。それすら叶えられない現状にやきもきさせられた一年だった。

なお、旧作を含めればカナザワ映画祭で見た『ロッキー・ホラー・ショー』のパフォーマンス付上映、クリスピン・グローヴァー監督『It Is Fine! Everything Is Fine』、リバイバル特集があったエリック・ロメール『緑の光線』などが圧倒的であった。

Eyecatch Image:http://lindenlink.com/2016/04/07/old-school-experience-everybody-wants/
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Writer

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石塚 就一就一 石塚

京都在住、農業兼映画ライター。他、映画芸術誌、SPOTTED701誌などで執筆経験アリ。京都で映画のイベントに関わりつつ、執筆業と京野菜作りに勤しんでいます。

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