クリストファー・ノーランが『ウォッチメン』再評価、「時代を先取りしていた」「アベンジャーズ後に公開されていればよかった」

現代映画の巨匠クリストファー・ノーランは『ダークナイト』トリロジー以来スーパーヒーロー映画には一定の距離を置いているが、ザック・スナイダーによる2009年のDC映画『ウォッチメン』は高く評価しているようだ。
「私は、『ウォッチメン』は時代を先取りしていたと、ずっと信じていました」と、ノーランは米The Hollywood Reporterがスナイダーを特集した企画にメールで寄せている。「スーパーヒーロー・チームという概念を見事に覆した映画は、未だかつて存在しませんでした。もし『アベンジャーズ』後に公開されていたら、とても魅力的だったと思います」。
『ウォッチメン』はアラン・ムーアらによる伝説的なグラフィック・ノベルを原作にした映画。アメリカ史にウォッチメンと呼ばれるヒーローチームが実在し、歴史の様々な重要場面に彼らが介入していたという世界を描く。しかし、このヒーローチームにも不正や汚職があり、「誰が見張りを見張るのか?」というテーマが掲げられる。
確かに『ウォッチメン』は、10〜15年ほど先をいく映画だったかもしれない。この映画の公開当時である2009年といえばちょうどマーベル・シネマティック・ユニバースが立ち上がった直後で、『アイアンマン』(2008)や『インクレディブル・ハルク』(2008)が公開されていた。また、サム・ライミ版『スパイダーマン』シリーズが2007年に終了した後であり、『X-MEN』オリジナル3部作も2006年に締め括られていたタイミングだ。
当時の観客はアクション満載の勧善懲悪物語を期待したかもしれないが、『ウォッチメン』はもっと複雑で、そしてダークだ。興収も伸び悩み、批評家からの評価もあまりパッとしなかった。
ただしノーランの言うように、『ウォッチメン』はポスト・アベンジャーズ的なテーマがある。疑惑のヒーローを描くのも「ザ・ボーイズ」(2019-)でお馴染みとなり、現在であればもっと受け入れられるのではないか。もしも「スーパーヒーロー映画疲れ」が叫ばれる今、『ウォッチメン』が初めて実写映画化されていたとしたら、きっと強烈なアンチテーゼになっていただろう。
ちなみに「ウォッチメン」は2019年に米HBOによって実写ドラマ化されているが、どちらかというとスーパーヒーロー物語の枠組みを人種問題に適用したストーリーとなっており、原作コミックやスナイダーの映画版とはまた別の趣旨になっていた印象だ。
Source:The Hollywood Reporter