『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』監督、『Call of Duty』『バイオハザード』などが映画製作に与えた影響とは ─ 「ビデオゲームは人生の一部」

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のキャリー・ジョージ・フクナガ監督が、自身の映画製作にビデオゲームが与えた影響を語った。
ダニエル・クレイグ演じるジェームズ・ボンドの最終作となった『ノー・タイム・トゥ・ダイ』で、鮮やかなガンアクションやカーチェイスなど、“これぞボンド映画”というべき演出を見せつけたフクナガ監督は、過去に「TRUE DETECTIVE」シーズン1(2014)や『ビースト・オブ・ノー・ネーション』(2015)「マニアック」(2018)などさまざまなジャンルを手がけてきた人物。米IGNでは「ビデオゲームは人生の一部」と言い切り、その影響を率直に明かした。
「ビデオゲームのサウンドデザインが、いかに映画に影響を与え直しているか。そこが非常に面白いところです。たとえばマシンガンの動く音にせよ、『Call of Duty』の金属のガチャガチャ音が、映画の効果音にどう混ざり込み、どう活きているかということ。
そのことは『闇の列車、光の旅』(2009)までさかのぼりますが、当時、ミキサー(音響スタッフ)と“この音、ゲームの音と違うよね?”と話したんですよ。つまり、そこにはとても明確な効果があるわけです。もちろん、実際の銃の音が(ゲームとは)違って聞こえることは知っています。しかし、現実のように感じられる映画を作りたい時、実際の音を直接取り入れるのでは効果が出ないこともあります。」
すなわち、ゲームのようなサウンドデザインを取り入れる方が、むしろ観客にはリアルな音として聞こえることもある、ということだ。『ノー・タイム・トゥ・ダイ』の場合も、FPSゲームのような一人称視点に近い、被写体とカメラが著しく接近したアクションシーンが印象的だった。ぜひ、そこで聞こえてくる銃声や格闘音にも耳をじっくりと耳を傾けてほしい。
ちなみにフクナガ監督は、ビデオゲームからの影響がサウンドデザインにとどまらないことを強調。『Half-Life』『バイオハザード』『The Last of Us』という人気シリーズを挙げながら、「(作品の)世界を進み、暗闇の中を行き、スキルを作り上げていく。僕が思うに、テレビや映画とビデオゲームは互いに釣り合っている。すべてが互いに影響を与えあっているんです」とも述べた。
「ゲームをプレイする時間が増えるということは、自分が選択できる世界を過ごす時間が増えるということ。そういうゲームの効果が好きだし、その影響はあります。“彼らはどんなことをしているのか、僕はそれを映画に取り込み直せるのか”と考えるんです。」
フクナガ監督の次回作は、スティーブン・スピルバーグ&トム・ハンクス製作の戦争ドラマ「Masters of the Air(原題)」。その後も、近未来の東京を舞台としたSF映画『Tokyo Ghost(原題)』や、広島への原爆投下を描く歴史映画を控えている。ヘビーな作品も多いが、ビデオゲームの影響がどのような形で表れるのか、今後の演出の変遷にも要注目だ。
Source: IGN