2022年(第94回)アカデミー賞 受賞結果、『コーダ あいのうた』が配信作として初の作品賞に輝く ─ ウィル・スミスが初の主演男優賞、『DUNE』が最多受賞

2022年3月28日(日本時間)、第94回アカデミー賞授賞式が開催された。本年度では様々な快挙が見られたので、受賞結果とあわせて一部紹介したい。
作品賞に輝いたのは、サンダンス映画祭・観客賞に輝き、世界中に感動をもたらした映画『コーダ あいのうた』(2021)。『エール!』(2014)をハリウッドリメイクした本作では、耳が不自由な家族の中で唯一の健聴者であり、歌うことを夢みる少女の姿が描かれる。作品賞のほかには、シアン・ヘダーが脚色賞、トロイ・コッツァーが助演男優賞にて受賞を果たし、ノミネートされていた全ての部門を制した形となった。
ろう者一家の父親役のトロイ・コッツァーは、男性ろう者として同映画賞で受賞した初めての俳優だ。ちなみに同作で彼の妻役を演じたマーリー・マトリンは、『愛は静けさの中に』(1986)で同映画賞・主演女優賞に輝いた経歴の持ち主である。また、サンダンス映画祭での激しい争奪戦の末、Appleが映画祭史上最高額で獲得した同作は、米国では、Apple TV+より配信となった映画だ。つまり配信作品としては、NetflixやAmazonより先に同映画賞・作品賞に輝いたということになる。まさに歴史的快挙を成し遂げた一作だ。
最多候補入りを果たしていた『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021)は、ジェーン・カンピオンが監督賞を受賞。『ピアノ・レッスン』(1993)ぶりとなるノミネートで初の受賞となり、女性の監督賞受賞は、『ハート・ロッカー』(2008)のキャスリン・ビグロー、『ノマドランド』(2020)のクロエ・ジャオに続き3人目の快挙だ。
そして主演男優賞には、『ドリームプラン』(2021)のウィル・スミス。プロテニスプレーヤーのビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹を、ゼロからテニスのワールドチャンピオンに育て上げた父親役を演じた。『ALI アリ』(2001)『幸せのちから』(2006)に続き3度目の候補入りにして初の受賞となった。
6部門で最多受賞作品となったのは、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による大作映画『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)。ハンス・ジマーが作曲賞を受賞したほか、撮影賞・編集賞・美術賞・音響賞・視覚効果賞にも輝いた。
なお、日本映画として初の作品賞にもノミネートされていた『ドライブ・マイ・カー』(2021)は、国際長編映画賞にて受賞を果たした。同部門における日本映画の受賞は、滝田洋二郎監督による『おくりびと』(2008)以来となる。
そのほかの受賞結果は以下の通り。
※受賞は★印。
2022年(第94回)アカデミー賞 ノミネート作品一覧
作品賞
- 『ベルファスト』
- 『コーダ あいのうた』★
- 『ドント・ルック・アップ』
- 『ドライブ・マイ・カー』
- 『DUNE/デューン 砂の惑星』
- 『ドリームプラン』
- 『リコリス・ピザ』
- 『ナイトメア・アリー』
- 『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
- 『ウエスト・サイド・ストーリー』
主演女優賞
- ジェシカ・チャステイン『タミー・フェイの瞳』★
- オリヴィア・コールマン『ロスト・ドーター』
- ペネロペ・クルス『Parallel Mothers(英題)』
- ニコール・キッドマン『愛すべき夫妻の秘密』
- クリステン・スチュワート『スペンサー ダイアナの決意』
主演男優賞
- ハビエル・バルデム『愛すべき夫妻の秘密』
- ベネディクト・カンバーバッチ『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
- アンドリュー・ガーフィールド『tick, tick… BOOM!:チック、チック…ブーン!』
- ウィル・スミス『ドリームプラン』★
- デンゼル・ワシントン『マクベス』
助演女優賞
- ジェシー・バックリー『ロスト・ドーター』
- アリアナ・デボーズ『ウエスト・サイド・ストーリー』★
- ジュディ・デンチ『ベルファスト』
- キルスティン・ダンスト『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
- アーンジャニュー・エリス『ドリームプラン』
助演男優賞
- キアラン・ハインズ『ベルファスト』
- トロイ・コッツァー『コーダ あいのうた』★
- ジェシー・プレモンス『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
- J・K・シモンズ『愛すべき夫妻の秘密』
- コディ・スミット=マクフィー『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
監督賞
- ポール・トーマス・アンダーソン『リコリス・ピザ』
- ケネス・ブラナー『ベルファスト』
- ジェーン・カンピオン『パワー・オブ・ザ・ドッグ』★
- スティーブン・スピルバーグ『ウエスト・サイド・ストーリー』
- 濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』
脚本賞
- ケネス・ブラナー『ベルファスト』★
- アダム・マッケイ&デヴィッド・シロタ『ドント・ルック・アップ』
- ポール・トーマス・アンダーソン『リコリス・ピザ』
- ザック・ベイリン『ドリームプラン』
- ヨアキム・トリアー&エスキル・フォクト『わたしは最悪。』
脚色賞
- シアン・ヘダー『コーダ あいのうた』★
- 濱口竜介&大江崇允『ドライブ・マイ・カー』
- ドゥニ・ヴィルヌーヴ&エリック・ロス&ジョン・スペイツ『DUNE/デューン 砂の惑星』
- マギー・ギレンホール『ロスト・ドーター』
- ジェーン・カンピオン『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
撮影賞
- グリーグ・フレイザー『DUNE/デューン 砂の惑星』★
- ダン・ローストセン『ナイトメア・アリー』
- アリ・ウェグナー『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
- ブリュノ・デルボネル『マクベス』
- ヤヌス・カミンスキー『ウエスト・サイド・ストーリー』
美術賞
- 『DUNE/デューン 砂の惑星』★
- 『ナイトメア・アリー』
- 『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
- 『マクベス』
- 『ウエスト・サイド・ストーリー』
衣裳デザイン賞
- 『クルエラ』★
- 『シラノ』
- 『DUNE/デューン 砂の惑星』
- 『ナイトメア・アリー』
- 『ウエスト・サイド・ストーリー』
メイクアップ&ヘアスタイリング賞
- 『タミー・フェイの瞳』★
- 『ハウス・オブ・グッチ』
- 『星の王子ニューヨークへ行く2』
- 『クルエラ』
- 『DUNE/デューン 砂の惑星』
作曲賞
- ニコラス・ブリテル『ドント・ルック・アップ』
- ハンス・ジマー『DUNE/デューン 砂の惑星』★
- ジョニー・グリーンウッド『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
- ジェルメーヌ・フランコ『ミラベルと魔法だらけの家』
- アルベルト・イグレシアス『Parallel Mothers(英題)』
歌曲賞
- 「Be Alive」from『ドリームプラン』
- 「Dos Oruguitas」from『ミラベルと魔法だらけの家』
- 「Down to Joy」from『ベルファスト』
- 「No Time to Die」from『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』★
- 「Somehow You Do」from『Four Good Days(原題)』
編集賞
- 『ドント・ルック・アップ』
- 『DUNE/デューン 砂の惑星』★
- 『ドリームプラン』
- 『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
- 『tick, tick… BOOM!:チック、チック…ブーン!』
音響賞
- 『ベルファスト』
- 『DUNE/デューン 砂の惑星』★
- 『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
- 『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
- 『ウエスト・サイト・ストーリー』
視覚効果賞
- 『DUNE/デューン 砂の惑星』★
- 『フリー・ガイ』
- 『シャン・チー/テン・リングスの伝説』
- 『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
- 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
長編アニメーション賞
- 『ミラベルと魔法だらけの家』★
- 『FLEE フリー』
- 『あの夏のルカ』
- 『ミッチェル家とマシンの反乱』
- 『ラーヤと龍の王国』
国際長編映画賞
- 『ドライブ・マイ・カー』(日本)★
- 『FLEE フリー』(デンマーク)
- 『The Hand of God』(イタリア)
- 『ブータン 山の教室』(ブータン)
- 『わたしは最悪。』(ノルウェー)
長編ドキュメンタリー賞
- 『Ascension(原題)』
- 『Attica(原題)』
- 『FLEE フリー』
- 『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』★
- 『燃え上がる記者たち』
短編ドキュメンタリー賞
- 『オーディブル: 鼓動を響かせて』
- 『私の帰る場所』
- 『The Queen of Basketball(原題)』★
- 『ベナジルに捧げる3つの歌』
- 『When We Were Bullies(原題)』
短編実写映画賞
- 『Ala Kachuu – Take and Run(原題)』
- 『The Dress』
- 『The Long Goodbye(原題)』★
- 『On my Mind(原題)』
- 『Please Hold(原題)』
短編アニメーション賞
- 『Affairs of the Art(原題)』
- 『Bestia(原題)』
- 『ボクシングバレー』
- 『ことりのロビン』
- 『The Windshield Wiper(原題)』★